News 2003年1月14日 09:55 AM 更新

ソニー安藤社長、Microsoftとの「微妙な関係」を語る(2/2)


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 「Media Center Editionに限らず、ホームネットワークでコンシューマーに提供しようとしているバリューは、どのベンダーも同じ。Microsoft以外にも、Paul Allen氏が投資しているグループなど、いろいろなベンダーが取り組んでいる。しかし、AV家電に参入すると、単にAV機能があるだけではユーザーの満足を得られない」と話す。

 AV家電として、絵作りや使い勝手などを追求すれば、ノウハウの差は歴然としている。出来合いのPC用AVコンポーネントを組み合わせても、AV機器としては使い物にならない。そうした部分を突き詰めずして、PCシアターなどと言ってほしくはない――というわけだ。

 「ユーザーはわれわれが想像しているよりも、ずっと肥えた目で見ている、きっと良いものが選ばれるはず。きちんとしたロードマップやコンセプトを示さなければならないし、ちょっと新しい分野に顔を出したからといって良いものにはならない」(安藤氏)。

 Microsoftの「Windows Media 9 Series」や次世代WindowsのLonghornを、「(パソコンとしてのVAIOを持つ)われわれにとっても重要な製品」とした安藤氏だが、ホームネットワークに関するあらゆる分野の技術がWindowsベースになることに関しては「Microsoftに限らず、1社だけに支配される世界はつまらないものだ。PDAで、携帯電話で、そしてゲームで、1社独占への反作用が起きている」(安藤氏)と一蹴する。

Microsoftはソニーの聖域に触れてしまった

 昨年、大々的に市場へと投入されたTablet PC。しかし、その提供ベンダーの中にソニーはいない。当初からMicrosoftはソニーへと強いアプローチをかけていたというが、真相はどうなのだろうか?

 「われわれと話を進める際、Gates氏は“ソニーが採用しない製品や技術は、コンシューマ市場で意味を持たない”とまで言われ、いつも熱烈にアプローチをされる。しかし、TabletPCはわれわれの本業である製品構築の領域に入り込んでくるものだ。私は彼らが、ここまで製品に近い領域まで入ってくるのは間違っていると思う。ライセンス料の高さといった事情もあるが、ソニーという企業体の聖域に踏み込まれたのが、(不採用の)原因だ」(安藤氏)と話す。

 しかし安藤氏がMicrosoftに対して、そうした印象を抱いたのは、TabletPCが最初ではない。マルチメディアやインターネットに対応できるPDA「PocketPC」がそれだ。

 「PocketPCに関しては、本来ソニーがやりたいことをソニー以上にうまく製品にされてしまった。われわれとしては耐えられないような現実だったが、最新のCLIEでやっと追いつくことができた。私はPocketPCが嫌いなわけではない。Windowsとの連携が最も重要なら、われわれもPocketPCを使っただろう。そこでの抵抗感はない。しかし実際には、従来のPC連携を中心にしたPDAとは全く異なるフロンティアがあると思う。詳細はここでは言わないが、PDAには現市場よりもずっと大きな可能性がある」(安藤氏)。

 逆にバイオノートブックカンパニーで開発中のVAIO E.Q.では「(PCの技術トレンドをリードする)Gates氏の聖域にソニーが入り込んでしまったかもしれないねぇ。PCの新しい方向への進化を誘導することは、彼らにとって守らなければならない聖域なのかもしれない」。安藤氏はすれ違いながら、時折重なるMicrosoftとの関係について、淡々とした口調で語った。

ブロードバンドホームネットワークの時代、日本は主役になれる

 一方、ブロードバンド時代と言われる今後の10年について、安藤氏は今後、かつて製造業で世界を席巻した時のように、日本が主役へと登り詰めることが可能と見る。

 日本ではコンシューマー向けのブロードバンドアクセスが、非常に安くなり市場の基礎的要件が整ってきているが、米国は通信会社のビジネス形態の違いなどもあり、そこまでのコスト低下が進んでいない。安藤氏は「アメリカは少し遅れているようだね」と話す。

 「逆に韓国はブロードバンドの普及で先行したため、PCベースでブロードバンドインターネットの普及が進んでしまった。その結果、あのPS2ですら苦戦している」と話し、各国でのブロードバンドインフラの状況により、ビジネスの状況が変化する。

 光アクセスの急速な普及が予想される日本では、PC以外のデバイスがネットワーク対応になっていく時代の流れともマッチして、新しいアプリケーションを生み、世界へと普及していくとの考えを示した。これはインフラ環境の違いもあるが、ハードウェアとソフトウェアが融合するブロード時代の製品やサービスは、日本企業が得意とする分野だからだという。

 「なぜなら米国のように水平分業が進みすぎると、それぞれの会社は専門分野に集中し過ぎるからだ」(安藤氏)。

 各社が専門分野に集中し過ぎるとビジネス全体が見えにくくなり、標準化などのプロセスに依存し過ぎるようになるため、複数分野の融合から生まれるホームネットワーク対応製品などで、魅力ある商品の提案が行いにくくなる。

 先日発表された家電向けLinuxの開発に関する提携に関しても「日本がもう一度日本がビジネスの主役となっていくためには、そういうソフトウェアとハードウェアの融合をやっていこうという他日本企業へのメッセージ。日本の景気は確かに悪いが、日本もまだまだ捨てたものじゃない」。安藤氏は語気を強めながら、日本企業にとって有利な市場を形成するための協力を呼びかけた。



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[本田雅一, ITmedia]

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