News 2003年1月24日 06:58 PM 更新

目指すは“メインフレーム級の高性能Linuxサーバ”――富士通・Intel提携

富士通と米Intelが、ミッションクリティカル分野向けのLinux対応IAサーバ開発で協業すると発表。同日行われた会見では、協業で開発する高性能Linux-IAサーバについて両社幹部が語った

 富士通と米Intelは1月24日、基幹業務システムなどミッションクリティカル分野向けのLinux対応IAサーバ開発で協業すると発表。同日都内で行われた記者会見で、Intel上席副社長兼エンタープライズプラットフォーム事業部長のMichael Fister氏と、富士通副社長の杉田忠靖氏が、両社協業で開発が進められる高性能Linuxサーバについて語った。


Intel上席副社長兼エンタープライズプラットフォーム事業部長のMichael Fister氏(左)と、富士通副社長兼CTOの杉田忠靖氏(右)

 富士通は昨年10月23日、Linuxを核にした事業戦略を発表。同社エンタープライズシステム事業本部内にLinux関連組織を設置し、現在は300人規模で活動を行っている。今回の協業は、このLinuxビジネス戦略に基づくもの。

 富士通の杉田氏は「昨年10月の発表では、Linux事業戦略の具体的な取り組みとして、Linuxの拡張性/信頼性向上とそれを支える新サーバの開発・提供を掲げていた。今回の協業はこれを具現化するもの。10月の事業戦略発表時点から、Intelと話し合いを行ってきた」と語る。


富士通副社長兼CTOの杉田忠靖氏

 富士通は今回の協業により、業界標準の汎用Intelプロセッサを搭載し、LinuxとWindowsが稼働する富士通製サーバを開発。特に、メインフレームに匹敵する高性能Linux-IAサーバを基幹業務システムにまで浸透させることで、メインフレームやUNIXサーバのリプレースを図る構えだ。

 杉田氏はLinuxサーバの優位性について「Linuxは特定のITベンダーに依存せず、インターネット上のオープンソースコミュニティで連続的に機能強化されている。全世界で1万人以上もの技術者がこのオープンソースに参加し、きわめてスピーディな技術革新が行われている」と語り、Linuxのソフトウェアとしての高い成長性に期待を寄せる。

 「調査会社によると、全世界のLinuxサーバの市場は年率27%増の成長をみせ、2006年には7800億円市場へと拡大すると予測されている。だが、われわれの予測はさらに大きく、2006年には1兆円規模なるとみている。最近では米国の大手金融機関で1万本に近いLinux購入があった事例もあり、日本でもオープンソースを活用したシステムへ期待が高まっている」(杉田氏)。

 富士通は今回の協業に基づき、2004年末までにXeon DP/MPを搭載した新サーバを開発。また2005年末までに次世代Itaniumを搭載した大規模マルチプロセッサシステムを開発し、それぞれ市場に投入する。

 記者会見では、Intel社長兼COOのPaul Otellini氏がビデオで登場し、今回の協業に対するメッセージを次のように述べた。


ビデオで登場したIntel社長兼COOのPaul Otellini氏

 「今回の協業により、ItaniumやXeonといった業界標準のIntelプロセッサが、富士通製メインフレーム級サーバで初めて採用される。富士通は、基幹業務のプラットフォーム/ソリューションで多くのノウハウを持つ。そしてわれわれは、高性能でコストパフォーマンスの高い製品群を、業界標準に基づいて提供できる。この両社の協業により、基幹業務での新しいコンピューティングを提供できる。協業の範囲は、システムのハードウェア技術からソフトウェア開発まで及ぶ。富士通のアプリケーションをItaniumやXeonのアーキテクチャに対してコーティングし、堅牢性のあるソリューションを提供する」(Otellini氏)。

 Intel上席副社長兼エンタープライズプラットフォーム事業部長のMichael Fister氏からは、同社が予定しているエンタープライズ市場向けプロセッサのロードマップが示された。


エンタープライズ市場向けプロセッサのロードマップ

 「32ビットアーキテクチャのXeonでは、2003年にコードネーム“Nocona”と呼ばれる新プロセッサを投入。64ビットでは昨年夏にItanium 2を販売したが、2003年夏には“Madison”を投入し、同年後半には省電力の“Deerfield”を用意している。そして2005年に投入する“Montecito”は、1つのシリコンに2つのプロセッサを搭載する予定。このようなプロセッサロードマップによって、メインフレーム級の高性能サーバを実現する」(Fister氏)。


Intel上席副社長兼エンタープライズプラットフォーム事業部長のMichael Fister氏

 さらにFister氏は、Itanium 2やXeonなどインテルアーキテクチャと、RISCとのパフォーマンスの違いをベンチマーク表で比較。あらゆる条件でのパフォーマンスにおいて、インテルアーキテクチャが30−50%以上の優位性があることを強調した。


RISCとのパフォーマンスの違いをベンチマーク表で比較

 「富士通はLinuxサーバをメインフレーム、UNIXサーバに次ぐ第三の高性能サーバ製品群として位置付け、ユーザーニーズに最適なプラットフォームとソリューションを提供していく。これら3つのプラットフォームの中でも、Linuxは成長分野として期待している。今後はLinux対応アプリケーションもどんどん増えてくるだろう。Linuxサーバ事業の目標としては、2006年までに1000億円規模にしていきたい」(杉田氏)。

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[西坂真人, ITmedia]

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