News 2003年2月19日 07:55 PM 更新

“3球連続ストレート”はうまくいった?――Intel Barrett氏基調講演(1/2)

Intel CEOのCraig Barrett氏は、今回のIDF基調講演でもストレートの真っ向勝負にいった。ピンチになっても変化球に逃げないその態度は賞賛に値するが、果たして、業界関係者たちを鼓舞することに成功しただろうか

 IntelCEOのCraig Barrett氏は、至極真っ当な演説をする人物である。エグゼクティブとしての仕事に慣れていなかった当時から、Barrett氏は常に真正面から正しい戦略を語ってきた。それは巨大企業Intelのトップに登り詰めてからも変わらない。しかし、彼は剛速球は得意なようだが、難しい場面を切り抜けるための変化球は投げ慣れていない……。

 はて? どこかで同じような書き出しの記事を書いたことがあった。そう、今年はじめの「International CES」で、同じくBarrett氏の基調講演に関して同様のコメントをしたことがある。

 あれから1カ月ほどしか経過していないのだから、Barrett氏自身が変わらないのも当然。「Intel Developer Forum Spring 2003」の基調講演で披露されたのも、IT・通信業界の景気が悪くなってから、Barrett氏が繰り返し唱えてきた主張の集大成と言えるものだった。


Craig Barrett氏

 まず、景気には常に波があり、悪い時の次には必ず良い時が来ること。Barrett氏によると2005〜2006年にはIT景気が復活するという。

 「全世界のGDPの1%がIT投資に向けられている。チャンスはまだまだあるんだ」。Barrett氏は会場に集まった開発者(実際にはワールドワイドから集まった600人以上に上るプレスのほうがより目立ったが)を鼓舞するように言う。

 「サポートされなくなったOSを搭載する性能の低い古いPCが、市場には数多く存在する。潜在的な買い換え需要は少なくない。われわれが挑戦しなければならないのは、その潜在的な買い換え市場に火をつけることだ。それは技術革新を続けることで達成できる」(Barrett氏)。


IT投資の予測グラフ

 その上で、悪い話は多いものの、インターネットユーザーの総人口は増え続けているとし、日本や韓国におけるブロードバンドアクセスの普及や、ロシアの鉄道会社が進めるインターネット接続環境の整備、国民一人当たりのネットカフェ軒数が世界一のヨルダンなどといった、景気回復の裏付けとなる“状況証拠”を並べてみせた。

 Intel自身も、将来に向けた投資を怠らない。中でも熱心なのが、コンピューティング技術とコミュニケーション技術の融合である。先週発表された“Manitoba”こと「PXA800F」(XScale、ベースバンド、フラッシュを融合した高性能な携帯電話向けチップ)は、その成果の1つと言えるかもしれない(2月13日の記事)。

 またIntelは光信号の位相を半導体を用いて自在に変化させ、パルス信号を作り出すモジュールを披露した。これを使い、半導体を用いて光デジタル信号を自在に作り出せる。Intelはすでに最新の高速CMOSプロセスにシリコンゲルマニウムの技術を融合させることに成功しているため、将来的には半導体レーザーとチューナ回路に加え、シリコンゲルマニウムを使ったフォトディテクタ、CMOSロジック回路、メモリなどを、ワンチップに融合した製品も作ることが可能になる。


光信号の位相シフトで振幅を調整する機構の模式図


将来、光通信モジュールは1チップに統合される

 これらは前回までのIDFで、Intelが“ムーアの法則の拡張適用”として話していたもの。つまり、CMOSロジックだけでなく、通信分野の技術もシリコンの上に載せ、ムーアの法則に従って急速なコストダウンと性能向上を図っていくという文脈に沿ったものだ。

 また半導体製造プロセスの研究開発が順調に進んでいることもアピールした。

[本田雅一, ITmedia]

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