News:ニュース速報 | 2003年2月20日 08:15 PM 更新 |
Pentium-Mはクロック当たりの命令実行数を重視している。クロック周波数で速度を稼ぐPentium 4とは大きく異なるコンセプトを持っているわけだ。このため、クロック周波数を目安にすると、パフォーマンスを大きく見誤ることになる。
Centrinoのパフォーマンスと消費電力
Anand Chandrasekher氏の基調講演の中では、1.6GHzのPentium-Mが2.4GHzのモバイルPentium 4-Mよりも、明らかに処理時間が短くて済むというデモが行われた。下の写真は、この2つにモバイルPentium III-M/1.2GHzを加え、消費電力を比較したグラフ。Pentium-Mが最も速く処理を終え、アイドル状態に戻っていることがわかるはずだ。この結果を信用するならば、モバイルPentium 4-MとモバイルPentium III-Mの速度差よりも、モバイルPentium 4-MとPentium-Mの速度差の方が大きく見える。
さらにアイドル時と動作時の消費電力を見ると、Pentium-Mのアイドル時の消費電力がモバイルPentium III-Mよりも低いことがわかるはずだ。しかも、動作時の消費電力は、モバイルPentium III-Mとほぼ同じで、モバイルPentium 4-Mよりも小さい。つまり、Pentium-Mは非動作時にもっとも電力を節約し、モバイルPentium III-Mと同等の消費電力でモバイルPentium 4-Mよりも高いパフォーマンスを示す。
パフォーマンスが高いということは、同じアプリケーションをより短時間で実行できることを意味する。つまり電力を消費している時間が短いのだ。したがって、アプリケーションを完了するのに必要な消費電力は、他アーキテクチャよりもずっと少なくて済む。
この結果、別記事でもお伝えしたように、14.1インチ液晶ディスプレイを搭載するPentium-M/1.6GHzのノートPCでも、48ワット・時の6セルバッテリ搭載で5時間の長時間駆動ができるようになった。モバイルPentium 4-M/2.4GHz搭載機では、その約半分のバッテリ駆動時間しか確保できない。
こうした省電力性は、徹底して命令処理効率を向上させ、無駄な動作をしないようにアーキテクチャ上の工夫を行ったことに加え、徹底して“使わない回路は電源を切る”工夫を行ったことで達成した。例えば、Pentium-Mには1Mバイトの2次キャッシュメモリが搭載されているが、キャッシュメモリのブロックは細かな単位で区分けされ、アクセスに必要な部分だけがフルスピードで動作。他の部分はクロックゲーティングにより止められる。
ただしバッテリ駆動時間の延長はプロセッサ単体だけでは達成できない。Pentium-Mの開発チームを率いたIntel副社長兼イスラエルデザインセンター ジェネラルマネージャーのMooly Eden氏は、プロセッサ自身の性能とともに、i855MチップセットのMCH(Memory Contoroler Hub)の省電力性の高さも、アピールしていた。
Pentium-Mのシステムバスは基本的にPentium 4と同じ(クロックは400MHz)だが、利用状況に応じてクロックを引き下げる機能が855Mとの組み合わせで働く。また、グラフィック機能内蔵のi855GMチップセットで使われているグラフィックコアは、プロセッサと同様のクロックゲーティング技術で、利用していない部分を使わない、効率の良いコアに改良されているという。
最初の90ナノメートルはDothanに
Eden氏はまた、90ナノメートルプロセスを最初に利用する製品が、現行Pentium-M(Banias)の後継となるDothanになるとIDFのブリーフィングでコメントした。実際にはデスクトップ向けの次期Pentium 4、Prescottとほぼ同時期の登場になると思われるが、このコメントからするとわずかながらDothanの方が早い出荷になるようだ。
DothanはBaniasよりも低消費電力かつ高性能で、2GHzを超えるクロック周波数を達成すると言われている。加えてEden氏は「Dothanは新しいプロセスで製造されるBaniasだが、よりパフォーマンスをアップさせるためにアーキテクチャを改良している。その結果、DothanのIPC(クロック当たりの処理命令数)はBaniasよりも改善される。具体的な内容はまだ話してはいけないことになっているが…」ともコメントした。
なお、DothanはBaniasと完全にピンコンパチブルで、チップセットにi855GM(Montara-GM)を用いた場合は、Banias機とDothan機で全く同じインストールイメージが利用できることをIntel側で保証する。これは企業向けプラットフォームに対して、最低6ヶ月間は同じインストールイメージを共用可能な互換性の高いシステムプラットフォームの提供を保証する「Granite Peak」というプログラムに基づくものである。
無線LANユーザーには、PRO/Wirelessチップが802.11b以外のスタンダードにいつ対応できるかも気になるところだ。802.11aに関しては、当初からサポートされるはずが、チップのバグで今年後半まで出荷が延期され、802.11bのみのサポートとなった経緯がある。IntelモバイルマーケティンググループマネージャのDonald McDonald氏によると「年内には802.11gもサポートすることを約束する」とのこと。ただし、具体的な投入のタイミングについては言及しなかった。
もちろん、Intelのモバイル市場に対する投資はこれだけ、というわけではない。基調講演でChandrasekher氏は、Intelが投資している燃料電池技術のベンチャー企業、PolyFuelが開発したPC向け燃料電池を紹介。現在は最大で50時間しか駆動できないが、近い将来にはより小型で無補給150時間の稼働が実現できるとしている。
また、2004年のノートPC技術についても触れた。まず低消費電力にフォーカスした新しい低温ポリシリコン液晶パネルを用いれば、14.1インチでも3ワットに消費電力を抑えられる。加えて1.8インチハードディスク、周辺光に応じて動的にバックライトを調整する技術、スーパーキャパシタの内蔵などで、バッテリ持続時間は14.1インチクラスで6セル6時間を超えることが可能とした。
これら2004年のノートPC/デスクトップPCの技術コンセプト、トレンドに関しては別記事として詳細をまとめることにする。
[本田雅一, ITmedia]
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