News:アンカーデスク 2003年2月18日 08:42 PM 更新

CentrinoとPrescottは市場の期待に応えられるか?

PCの今年を占うIDFが米国時間の18日からスタート。いよいよ登場するCentrinoやPrescottの具体的な普及戦略が1つの焦点になりそうだ
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 Intelの開発者向け会議「Intel Developer Forum Spring 2003」がまもなく始まる。IDFはPCおよびネットワークの技術カンファレンスだが、一方で世界中からIT関連のプレスが集まることもあり、Intelがこれから1年を見通しての所信表明を行う場でもある。つまり、18日からの4日間は、今年いっぱいのPC業界を占う上で重要な要素を含んでいるかもしれないのだ。

 昨年のIDF Springでは2003年に展開する予定の製品に焦点を当て、プロモーションを行った。だが、それはある意味、2003年までPC業界の景気上昇がないことを意味していた。Microsoftに期待できない今、Intelから市場を刺激する目玉となる製品やコンセプトの提案がなければ、PC市場の大幅な拡大(あるいは市場規模の維持)は望めないからだ。そして予想されたとおり、昨年のPC市場は沈滞ムードで推移した。

 では今年のIDF Springはどうなるのか?

 Intelは昨年、2003年に登場する新モバイルプロセッサ(Pentium-M)とそのプラットフォーム技術(Centrino)でノートPC市場に大きな刺激を与えると話した。また90ナノメートルプロセスで製造される新しいPentium 4(Prescott)と、それをサポートするプラットフォーム技術がデスクトップPCの可能性を大きく広げるとも話してきた。Prescottでは、Centrinoと同様の“プラットフォームも含めた営業戦略”をデスクトップの分野でも適用するとの噂もある。

 ご存知のように、Centrinoは先月、ブランド名が発表され、来月の半ばには製品発表が行われる見込みとなっている。モバイルPentium IIIと同等のサーマルデザインを踏襲しつつ、大幅なパフォーマンスアップが期待でき、バッテリ消費やワイヤレス技術の統合などが注目されているCentrinoは、本当にPCを携帯しながら利用するという市場を作り出そうとしている。

 しかしCentrinoにはいくつかの懸念も示されている。その最たるものは、パフォーマンスはアップしているものの、動作クロック周波数がモバイルPentium 4よりも低くなること。クロック周波数を目安にパフォーマンスに見当を付けているコンシューマーに対し、クロック周波数が低くてもハイパフォーマンスであることを、簡潔に説明する必要があるのだ。

 地元の新聞には、IntelモバイルプラットフォームグループでマーケティングディレクターをつとめるDonald McDonald氏が、Centrinoの売り込み方をどのようにしていくかで悩んでいるという記事が掲載されていた。

 本来ならばワイヤレスとモビリティをキーワードに押し切る予定だったのだろうが、Centrino戦略の重要な柱の一つであったデュアルバンドサポートのIntel PRO/Wirelessチップがスリップし、今年後半の登場になってしまったため、すでに昨年のうちから目算が外れてきている。

 今回のIDFでは、難しいスタートを控えるCentrino戦略の行方が1つのテーマとなるだろう。

 また今年年末商戦の目玉として用意されるPrescottと、そのハードウェアプラットフォームにより、どのようなデスクトップPCが提案されるのかも注目だ。低コスト機や自作機へのシフトが進むデスクトップPCが、Prescottプラットフォームで息を吹き返すことができるかどうか。

 一方、展示会場では昨年のIDF Springで初めて公開された日立の水冷システムが、ノートPC以外の市場をターゲットにしたシステムとして登場する。日立はブレードサーバ向けの水冷システムを展示する見込み。冷却液の流路をウォータカプラでつなぐことで、ホットスワップが可能なラックマウントのブレードサーバ冷却システムだという。ユーザーはトラブル発生時、システムをストップさせることなく水冷のブレードモジュールを交換できる。関係者によると、ブレードサーバに水冷システムを用いることで、ハンドリングできる熱は2倍になるという。

 またデスクトップPC向けの水冷システムも参考展示するようだ。試作システムは最大でも28デシベルという静粛性を達成しているという(通常、空冷のPentium 4のデスクトップシステムの騒音は40デシベルを超える)。日立ではPC以外にも、燃料電池の冷却などにも、同様の技術を応用していく。

 無線LAN関係の展示も期待されるところだ。別記事を参照してほしいが、2002年にワールドワイドのマーケットでメルコを抜いてトップシェアを獲得したLinksysは、IEEE802.11a/b/gに対応するデュアルバンド、トリプルスタンダードの高機能アクセスポイントや、MP3/WMA、デジタルカメラ画像を再生できるワイヤレス端末を展示。日本ではメルコが2.4GHz帯製品を戦略の中心に据えることを表明しているが、Linksysはデュアルバンド、トリプルスタンダードを今後の主力製品としてプロモートしていく。

 IDF Spring 2003は明日、米国時間18日の午後からCraig Barrett氏の基調講演でスタートする。



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[本田雅一, ITmedia]

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