News 2003年3月12日 11:59 PM 更新

“一目で分かる災害情報”に向けて3社が協業

日本SGI、ゼンリン、レスキューナウ・ドット・ネットが、災害に関する各種情報を地図情報と連動させて視覚的に分かりやすくする「レスキュー支援総合情報システム」で協業すると発表した

 日本SGI、ゼンリン、レスキューナウ・ドット・ネットは3月12日、災害救助を支援する総合情報システム「レスキュー支援総合情報システム」を共同で開発すると発表した。

 3社それぞれが有する技術/ソリューション/コンテンツを統合することで、災害に関する各種情報を地図情報と連動させ、視覚的に分かりやすい情報として総合的に表示・活用できる“災害の可視化ソリューション”を目指すという。

 具体的には、日本SGIが製造業でのデザインレビューや科学技術計算処理結果の可視化といった大規模可視化システムにおけるノウハウと実績を生かして、災害状況の情報をリアルタイムに表示/分析するための「災害情報可視化技術」を提供。


SGIの可視化技術をテロ後のマンハッタン南地区の情報解析に活用した例

 またゼンリンは、グループ会社のゼンリンデータコムやジオ研究所と協力して、地図情報やWeb対応地図情報システム、インターネット経由での配信サービス、3次元デジタル地図などを提供する。


「特にジオ技術研究所が開発中の3次元デジタル地図は、実際の災害現場の状況を把握するには重要な役割を担う」(ゼンリン)

 レスキューナウ・ドット・ネットは現在、24時間365日稼動する「レスキューナウ危機管理情報センター (RIC24)」を運営。同センターが収集する危機管理情報を、携帯電話やインターネットなどでリアルタイムに配信している。この危機管理情報と、3社の協業によって新たに収集された情報とを連動させることで、より効果的な情報活用を目指す。

 ゼンリンはこれまで全国の消防/警察の通信指令業務に地図情報データベースシステムを提供。消防/警察本部でデジタル地図情報データベースシステムを導入しているところの9割は、ゼンリンのシステムを使っているという。

 防災を担うこれら公共機関の現状についてゼンリン副社長の林秀美氏は「全国に900以上ある消防本部のうち、何億何十億とかけて地図情報データベースシステムを導入できるところは200にも満たない。残りは昔ながらの無線と紙の地図での指令業務を行っている。このような日本の防災システムの現状をなんとかしなければ、という思いが3社協業に至った大きな理由の1つ」と述べる。

 またレスキューナウ・ドット・ネット代表の市川啓一氏も「全国に3300ある地方自治体のうち、防災に関しての情報システムを導入しているところは100カ所に満たない。ほとんどは、ファックスと無線でまかなっているのが現状。。阪神淡路大震災の教訓が生かされていない。このままでいくと、どこかでまた災害が起きたとき、結局ITの恩恵を受けられないままになる」と、地方自治体レベルでの防災対策の不備を指摘する。

 日本SGI社長兼CEOの和泉法夫氏は「防災情報システムは、国家レベルで大きな予算をかけて導入する例はあっても、お金のない地方自治体レベルではまだまだ不十分。地方自治体が導入できるレベルのローコストで、なおかつ本当に役に立つ防災対策が出来るような情報システムの仕組みを3社で模索していく」と語る。


左から、レスキューナウ・ドット・ネット代表の市川啓一氏、日本SGI社長兼CEOの和泉法夫氏、ゼンリン副社長の林秀美氏

 今回開発するシステムは、従来のマクロ的視点の災害情報に加え、個人の危機管理に役立つミクロ情報も含めた災害に関する情報も扱う。「新システムは災害救助現場の指令センターシステムの役割を担い、刻々と変化する災害現場のリアルタイムな情報を効果的に表示して、被害状況を迅速に把握できる。また集まった情報を蓄積、分析することで災害を未然に防いだり、効果的な対策の準備にも活用できる」(日本SGI)。

 3社は今夏をめどにシステムを作成し、地方自治体や警察/消防など公共機関、一般企業などにアピールしていく構えだ。

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[西坂真人, ITmedia]

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