News 2003年3月12日 05:46 PM 更新

日本IBMの「Think Vantage」とは?

ThinkPad開発の基本中の基本になっているという「Think Vantage」。それはいったいどんなものなのだろうか?

 キーボード入力の快適さ、きょう体の堅牢性から、PCカードのスロットの配置、イジェクトボタンギミックまで、日本アイ・ビー・エム(IBM)のThinkPadには、ノートPCを長年開発してきた同社ならではの使い勝手を向上させる、さまざまなノウハウが詰まっている。

 「ユーザーの使い勝手、利便性の向上」は、これまでもThinkPad開発の大きなテーマになっており、そのことは“ThinkPadフリーク”にとって「言わずもがな」の常識であった。だが、こうした特徴は、カタログスペックとしては表現しにくい。その日本IBMが、ようやくこうした見えない部分を「Think Vantage」という名称を付け、明確にアピールし始めている。

 ThinkPadの開発指針はすべてこのThink Vantageに基ずいて決定されていくという。とすれば、個別製品の開発コンセプトを押えるためには、開発ルールの大前提となる「Think Vantage」という概念を知ることが欠かせない。簡単にここでおさらいしておこう。

導入時の4倍になる運用コストを削減せよ

 IBMの調査ではシステムのライフサイクルは「導入決定に2−3か月、運用に3−4年」と運用期間が圧倒的に長く、運用期間に発生するコストは導入時の4倍にもなる。これに加え、使いにくいシステムによって発生する生産性の低下、故障の発生、復旧までのシステム停止は企業の損失につながる。

 Think Vantageでは、この運用時に発生するコストや損失を削減するために、ハードウェア、ソフトウェアで問題点に対処するのを目的としている。その具体的な手法は、徹底したユーザーリサーチによって問題点を抽出し、その問題点を解決するハートウェア、ソフトウェアを製品に採用していく。

 故障発生率を低くするための堅牢なきょう体、入力の効率を上げるための打ちやすいキーボードの採用などは、これまでも実施されてきたことだが、これも今で言うThink Vantageでアピールしている方針に則った設計であったわけだ。


Think Vantageを実現する1つの例。手前に見えるHDDベイの縁に衝撃を吸収してHDD本体を防御する黒いゴムが見える

 不慮のデータ損失、システムファイルの破損には、早急に復活できるソフトウェア「Rapid Restore PC」のインストールで対応。データのセキュリティに関しては、HDDではなくPC本体側にセキュリティチップを実装させて、HDDドライブが盗難されてもデータを保護できる機能を持たせるなど、「Think Vantage」コンセプトの実現を最優先課題として、ThinkPadの設計、デザインは行われている。

 ただし、Think Vantageを標榜するために必要な条件、例えばCentrinoブランドのように、必須ハートウェアというのは特に設けられていない。

 この点がユーザーにとってなおThink Vantageのイメージを捉えにくくしているが、日本IBMによれば、「ユーザーの活用効率を上げるために、問題点を解決するソリューションを実装する」(横井氏)製品は、すべてThink Vantageを標榜できるらしい。

 実際、問題解決のために導入するハードウェア、ソフトウェアの評価は、自社製品以外でも行っている。サードパーティ製品でも効果大と評価されれば、Think Vantageの一環として製品に実装される可能性もあるというわけだ。



関連記事
▼ Centrino搭載ノート、各社の製品コンセプト:Centrinoマシンに与えられた“任務”は?――日本IBM「ThinkPad T40&X31」
日本IBMではThink Vantageという基本コンセプトをまとめ、このコンセプトとそれぞれのThinkPadの目的・任務から製品を設計・開発をしている。では、Centrino搭載機では、どのような任務が与えられ、どのようにそれを実現したのだろうか

▼ Pentium M搭載のThinkpad X31/T40が登場

[長浜和也, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.