News 2003年3月13日 07:27 PM 更新

Centrino搭載ノート、各社の製品コンセプト
はじめにデザインありき――「バイオノートZ1、VAIO U101」(2/2)


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 自社開発したユーティリティソフト「Performance Balancer」で「処理速度」(液晶パネルの)「明るさ」(バッテリの)「スタミナ」(ファンの)「静かさ」の4つの属性を設定し、例えば「静かさ」優先モードならば、ファンの回転数を抑え、かつ回転数ができるだけ一定であるように、CPU温度を監視し、高温になってきたらSpeedStep3の機能を生かしてクロックを下げる、といった制御を動的に行っている。

VAIOシリーズとのスペック的不整合

 ただ、ホームユースのメインマシンという視点から見ると、Z1にはいくつかのウィークポイントも見えてくる。

 まずは搭載ビデオチップ。ほかの同クラスノートPCでは、MOBILITY RADEON 9000やGeForce4 Go 420など、本格的な3D描画をサポートする外付けビデオチップが主流になっているが、Z1は旧来のMOBILITY RADEONだ。

 これについて藤田氏は、「メインマシンではゲームユースは少ないのではないか。Z1はあくまでも実用マシン。MOBILITY RADEONの上位チップになると、実装面積、消費電力の点で非常に負担が増える」と、携帯性を優先させたための選択と説明している。

 もう1つは、Centrinoブランドで指定されている「Intel PRO/Wireless 2100」を搭載したことで、無線LANのサポートがIEEE 802.11bのみになったことだ。ソニーはバイオのホームAVネットワークのインフラとして、IEEE 802.11aをすでに普及させている。

 これについてもソニーの回答は「携帯性の優先」である。ホットスポットなどでの利便性を考えるとIEEE 802.11bという選択になり、インテルが強力に推進していくCentrinoブランドの普及度がユーザーにとって選択の指標になると考えている。

 Z1のプロモーションでも同様で、「Centrinoブランドの浸透度、認識度の高さによって、まずはユーザーがノートPCの世界に入ってくるのが先決。優れたパフォーマンスは実際体験して理解してもらう」(戸辺氏)というのが、Z1のプロモーションストーリーになる。

やはり気になるモバイルCeleron/600A MHz

 一方、U101で最も気になるのが「モバイルCeleron/600A MHz」なるCPU。インテルのロードマップにもリリースにも出てこない(はず)のCPU。ソニーが頑なに「違うんですよ」といっても、WCPUIDではProcessorに「Banias」と表示されてしまうし、搭載チップセットはIntel 855PM。

 いかにもPentium Mらしいが、L2キャッシュは半分の512Mバイト。クロックはPentium MのSpeedStep3で最小ステップである600MHz固定。素直に考えると「Pentium MのSpeedStep3非実装、キャッシュ半分バージョン」であり、かつてのモバイルPentium IIIとモバイルCeleronの関係によく似ている。


U101開発チーム。左からソニー バイオノートブックコンピュータカンパニー野口進佑氏(バイオシンクロナイザー開発担当)、同 望月敏弘氏(アーキテクチャ担当)、同 宮下尚也氏(ハードウェア設計担当)、山下美希氏(コンセプト企画)


WCPUIDをU101で実行。ご覧のとおりBaniasの文字が

 とはいえ、ソニーが「黙秘」している以上、何を言ってもただの推測でしかない。しかし、それならば、せっかく用意されているULV Pentium M/900MHzはなぜ選択されなかったのだろうか。

 「U101では前機種と比べてパフォーマンスと価格は絶対維持、バッテリ駆動時間の向上は必須条件となっていた。コスト、パフォーマンス、バッテリ駆動時間のバランスを考えると、SpeedStep3のメリットはそれほど優先されない。パフォーマンスも3Dアプリを使わなければそれほど必要としない。となると、クロック固定、L2キャッシュ半分のモバイルCeleron/600A MHzでも我々が考えている十分なパフォーマンスを発揮できる」というのが、山下氏の答えだった。

インタフェースレイアウトで操作性大幅改善

 このように実装パーツによる性能向上に目が行きがちだが、実はそれ以上にきょう体、キーボード、ユーザーインタフェースといったデザインによるユーザビリティの向上にも力が注がれている。

 VAIO Uの登場当初からのコンセプトである「モバイルグリップ・スタイル」という立った状態での使い勝手も大幅に改良された。

 一番の変更がキーボード上部左右に設けられたマルチコントローラとその間に配置された液晶輝度設定ボタンの構成だ。両手でマルチコントローラを持っていれば、ポインティングデバイス操作、サムフレーズボタン(これも左手から右手位置に変更)に加えて、カーソルキーも右手位置に移設されたので、文字入力以外のほとんどの操作は、これらのデバイスを持ったまま可能になる。


キーボード上部に設けられた各種ボタンがユーザビリティの向上に大きく貢献している。右ボタンでサムフレーズ、表示ズーム、表示方向ローテーションの切り替え、カーソルキー、ポインティングデバイスをカバー、左ボタンでクリック、サブクリック、スクロールホイールをカバーする

 液晶パネルも従来の6.8インチから7.1インチへとアップしただけでなく、マルチコントローラに設置されたズームインボタンによる表示サイズの変更、ローテーションボタンによる立て表示への変更がワンアクションで行える。

 また、外での利用を想定して微透過液晶パネルを採用している。この輝度設定も前述の影響輝度設定ボタンによってワンアクションで実行できる。


快晴の直射日光で見る微透過状態の液晶パネル。視認性に問題なし


ズームオンにした状態


液晶表示を90度回転させて縦長表示にした状態。この状態では「電子ブックのように使えますよ」(山下氏)

 細かいところでは、PCカードスロットの位置をノートPCでは常識の左側面手前から、モバイルグリップ・スタイルでも使いやすいように左側面の「奥」に変更、キー配列を通常キーボードに合わせるなど、細かいながらも使い勝手の向上には大きく作用する改変も数多く行われている。


モバイルグリップ・スタイルでは手がきょう体手前にかかってしまう。そのため「PCカードスロットを奥に移して手にかからないようにした」(宮下氏)

 発売時期の関係で、内部に実装された技術については今回は掲載できなかった。これは機会を改めて紹介する予定だが、ただいずれにせよ、目的がはっきりしている分、ユーザーの利便性を向上させる搭載パーツの選定とレイアウトが明確に施されていた。これがU101設計デザインの大きな特徴と言えるだろう。



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[長浜和也, ITmedia]

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