News 2003年3月26日 10:00 PM 更新

「HighMAT」vs「MPV」の規格戦争はありえない?

松下電器産業が、Microsoftと共同開発したデジタルデータ管理システム「HighMAT」技術のプレス向け説明会を開催。日韓米欧の7社が先日発表した競合規格「MPV」についても言及した

 松下電器産業は3月26日、同社と米Microsoftが共同開発したデジタルデータ管理システム「HighMAT(High Performance Media Access Technology)」技術のプレス向け説明会を開催した。

 HighMATは、PCとAV家電とのデジタルメディア相互利用にあたって、多様なデジタルデータを簡単に扱う統一環境を目指した論理フォーマット規格。先週、待望のHighMAT対応AV機器が松下電器から発表されるなど、いよいよ普及に向けた動きが始まった。

 松下電器産業パナソニックAVCネットワークス社AVテクノロジーセンターの水上俊彦氏は、「従来、別々に扱われたオーディオ/ビデオなどのさまざまなフォーマットが、HighMATによって同じPCアプリケーションで編集したり、同じAV機器で再生できるなど統一的に扱えるようにした。また、CDに記録された大量のデータから、自分の希望するコンテンツを簡単に検索できる手段を提供。PCだけでなく、AV機器でも再生できるようにすることで、PC−AV機器間でコンテンツが同じように使えることを目指した」と、HighMAT規格のコンセプトを説明する。


HighMAT規格のコンセプト

 HighMATは、機能や対象製品によって3つのレベルに分けられる。

 オーディオ再生のみを対象にしたのがレベル1。オーディオデータの圧縮フォーマットとして、WMAとMP3の2種類をサポートしている。ミニコンポやポータブルCDなど映像を含まないオーディオ製品が対象となり、対象機器にはHighMATのロゴの下にAUDIOの文字が入ったマークが付けられる。


HighMATレベル1に対応したMDステレオシステム「SC-PM77MD」

 レベル2は、レベル1にデジカメなどで撮影した静止画の再生機能を含めたもの。静止画の圧縮フォーマットはJPEG1のみで、DVDプレーヤーやDVDミニコンなどが対象となる。対象機器にはHighMATのロゴの下に「AUDIO・IMAGE」の文字が入る。


HighMATレベル2に対応したDVD/CDプレーヤー「DVD-S75」

 レベル3は、レベル2に加えて動画再生機能を加えたもの。動画の圧縮フォーマットは、WMVとMPEG-4をサポートする。「レベル3の商品は、現在検討中。近いうちに紹介できるだろう」(水上氏)。


音楽/映像/静止画像が混在したHighMAT CD作成ソフトも開発中

 PCアプリケーションとしては、Microsoftの「Windows Media Player 9 Series(Windows XP版)」とビデオ編集ソフト「Windows Movie Maker 2(Windows XP版)」が、標準でHighMATをサポートしている。

 マイクロソフト ニューメディア&デジタルデバイス本部マーケティング部の河野万邦氏は「音楽データをHighMAT対応にするためにWindows Media Player 9 Seriesを、映像データのHighMAT化にはWindows Movie Maker 2をそれぞれ用意した。また、静止画像のHighMAT記録や、音楽/映像/静止画像が混在したHighMAT CDを作成できる“Shell Burn Wizard(仮称)”というCDライティングソフトを現在開発中。CD作成の際にメニュー構造のスクリプトが自動生成され、HighMAT対応のAV家電で再生できる」と説明する。

 Shell Burn Wizardの詳細な機能やリリース時期、提供方法などはまだ未定とのこと。「ただし、松下電器が対応機器(HighMATレベル3製品)を出すタイミングまでには、リリースできるようにしたい」(河野氏)。


HighMAT対応商品とPCアプリケーションの導入ロードマップ

 さらに今年5−6月には、CD/DVDライティングソフトメーカー大手のBHAとアプリックスが、HighMAT対応のPCアプリケーションを発売する予定だ。

「HighMAT」vs「MPV」の規格戦争勃発?

 両社が業界標準規格としてHighMATを掲げるなか、先日、PCとAV家電とでデジタルメディアの相互利用を推進する別の規格が立ち上がった。米Hewlett-Packardやソニーなど日韓米欧7社が3月11日に発表した「MPV」(MultiPhoto/Video)がそれだ。

 MPVは、PCでCD/DVDに記録した画像を家電で容易に再生できるようにするという規格の狙いや、コンテンツ内容のメニューを作成して記録する点など、HighMAT規格と重なる部分が多い。7社の中にはソニーが名を連ねていることから「また、“松下vsソニー”の規格戦争が始まるのだろうか」といった懸念の声も上がっている。

 「MPVは、もともとフォトラボ向けに作られたMultiPlayがベースになっており、基本的な考え方が違っている。さまざまなメーカーのフォトCDを1つのアプリケーションで簡単に扱えますというのが、MPVの元の考え。もともとが業務向けの規格なので、民生機器では処理が重すぎる問題もある。フォトラボのワークステーションや高性能PCなど処理能力が高い機器をベースにしたMPVと、100円ぐらいのマイコンでハンドリングできるHighMATとは、基本的には別の目的で作られた規格と認識している」(水上氏)。

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[西坂真人, ITmedia]

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