News 2003年3月26日 11:00 PM 更新

三洋、世界最高出力の高出力青紫半導体レーザーを開発

三洋電機は26日、世界最高出力の青紫半導体レーザーを開発したと発表した。これによって次世代光ディスクの多層記録が可能になるという

 三洋電機は3月26日、世界最高出力を実現した高出力青紫半導体レーザーを発表した。

 今回開発された青紫半導体レーザーでは従来パルス出力50ミリワット(連続出力35ミリワット)だったレーザー出力を、倍のパルス出力100ミリワット(連続出力50ミリワット)まで高めている。発振波長はBlu-ray Discでも定められている405ナノメートル。三洋電機では、この高出力半導体レーザーによって、次世代光ディスクシステムで予定されている多層メディアの内部記録層へ、記録が可能になるとしている。



レーザー光出力の違い。上は従来の5ミリワットレーザー。下は新開発の50ミリワットレーザー。同じ距離から照射しているが50ミリワットのほうがレーザー光が太く見える(ビーム径が太いわけではないので注意)

 三洋電機は青紫レーザーの高出力を図るために、動作電流の低減、レーザー光の安定化、レーザーチップを構成するGaN(窒化ガリウム)基板の高品質結晶成長による信頼性の向上、といった3項目を改善した。


高出力化実現のために低電流化、レーザー光の安定化、高品質結晶成長の3項目の改善が図られた

 動作電流の低減のためには、レーザーの発光効率を向上させ、レーザーの通り道である導波路におけるレーザー光吸収を低減しなければならない。レーザー光は発光層内部で電子と正孔が結合して発生するが、従来は発光層に存在する内部電界の影響で電子と正孔が結合が難しかった。

 今回、発光層内部の電解を相殺し、電子と正孔を結合しやすくすることで、従来よりも多くのレーザー光の発生が可能になった。ただし、内部電界を相殺させる具体的な方法については「詳しく述べることはできない」(三洋電機)。

 導波路における光吸収とは、レーザー光を反射させるためにへき界面で屈折率を変化させると起きる現象。屈折率を最適化してレーザー光の損失を減らしている。


低電流化を実現するために、レーザー光の発光効率向上を導波路損失の低減を図っている。具体的には内部電界を相殺し、へき界面の屈折率の最適化を行っているが、具体的な方法については企業秘密だそうだ

レーザー光の安定化でも、へき界面における屈折率の最適化が貢献しており、安定してレーザー光を反射することでビーム形状を一定にできている。このおかげで、低ノイズで、安定したレーザー光の出力が可能になり、100ミリワットの出力が実現できた。


レーザー光のビーム形状を安定することで、ノイズを抑え、キンクによる出力低下を避けられる。また、高品質のGaN基板を作成するために、界面制御を行うことで平坦化した結晶生成を可能にした

 ドライブメーカーへのサンプル出荷は2003年第3四半期から開始。メーカーの評価が良ければ2003年第4四半期から量産を開始する予定だ。

 ただサンプル出荷時の単体価格は約20万円とかなり高額で、「量産段階ではもっと安価にしないと製品化は難しい」。このため量産時の価格については「現段階ではなんともいえない」と、三洋電機では話している。

 また、今回100ミリワットという高出力を実現したが、これでもまだ等倍までの対応。より高速な記録のためにはより高出力が求められるが、そのためにはより新しい方法が必要になるという。

 ただ、こうした課題があるとはいえ、青紫半導体レーザーでネックだった出力で。多層記録が可能レベルの高出力製品が開発されたことの意味は決して小さくない。次世代光ディスクの大容量化に道を開くものとして、十分評価できるだろう。

関連リンク
▼ 三洋電機
▼ ニュースリリース

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[長浜和也, ITmedia]

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