News:アンカーデスク 2003年4月14日 10:02 PM 更新

CRTが(やっと)わが家から無くなる日(3/3)


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 例えば、AU5131DTはかなり派手な発色。パッと見の色はきれいだが、ギトギトとして今ひとつ落ち着きがない。トーンカーブも明暗を強調する感じだ。デフォルト設定の問題のようで、コントラストや明度の調整でかなり落ち着くが、CRTから乗り換えた場合の違和感は大きい。なお、本機は低価格ながらガンマカーブの設定をユーザーが変更できるようになっているため、ある程度はトーンカーブを調整できる。また、マッチング度は今ひとつだが、sRGBをエミュレートするカラーモードも備えている。

 LCD-AD201GSは、逆にかなりあっさりとした色調。最初は色の濃度が浅いとも感じられるが、コントラストをそこそこに、中間調をガンマカーブで持ち上げているようだ。輝度設定を少し抑えてやると、目への刺激も少なく、CRTからの乗り換え時にも違和感を感じないだろう。デフォルト状態で使うならば、なかなか良いセッティングになっている。ただしAU5131DTのように、ガンマカーブを調整する機能はない。

 意外に悪くないと感じたのは、もっとも安い店では10万円を切るAU4831D Gだ。この製品は大型のUXGA対応機としては異例なほど安い半面、画面周辺に若干の輝度ムラがあること、額縁部とパネルの隙間からバックライトの光が漏れる部分があること、デザイン面での洗練度が低いなどの弱点もある。またDVI接続時の設定はほとんど行えない。

 しかし、DVI接続時のデフォルト画質は、CRTの雰囲気に非常に近い。もし、DVIでの接続が前提で、かつ細かな調整機能を必要としていないならば、本機はかなりのお買い得品だ。

 ただしAU4831D Gをアナログ接続で使う場合は、接続するビデオカードの側に高いクオリティのものを用意した方がいい。MatroxのPerhelia 512、カノープスのSPECTRA X21といった、アナログ品質の比較的良いと言われるビデオカードに接続したものの、UXGAにおいて完全にジッタによる影響を除去しきれずなかった。色味もスッキリせず、DVI接続時とは全く質の異なる画像となる。

長所を把握して選べば良い製品を選択可能

 その点、ThinkVision L200pはアナログ入力時の品質が非常に良く、自動調整だけでピタリと安定した画像を得ることができた。DVI接続時との画質や色の差も少ない。

 さすがにノートPCの出力のように、元々の品質に大きな問題のあるUXGAの信号はきれいに表示できるわけではないが、たいていのデスクトップPC用ビデオカードならば、満足のいく結果を得られるだろう。アナログ接続時の画質は、ThinkVision L200p、AU5131DT、LCD-AD201GSの順に良く、大きく水があいてAU4831D Gが来るといった感じだ。

 さて、そのThinkVision L200pは、今回取り上げた製品の中では最も新しい(半年以上の差がある)こともあり、DVI接続時の色、トーンカーブなども自然で違和感なく、バックライトの輝度ムラもほとんど感じない優秀な製品である。

 ただし、ビジネス用途を想定しているのか、調整機能は豊富ではなく、色調整もRGB独立したバランス調整は可能だが、sRGBモードなどCRTをエミュレートするモードも実装されていない(もっとも、デフォルトの色も、そう大きくCRTから違和感は感じない設定にはなっている。規定値で7200度になっている色温度を6500度に変更すればCRTからの乗り換えで不満はほとんど出ないだろう)。

 なお、いずれの製品にもカラーマネジメントに対応するためのICCプロファイルがあるため、Photoshop 7.0.1との組み合わせで評価してみたが、いずれもキャリブレートされたF980ほどの再現性はなかった。しかし、その中であえて選ぶとするならば、ThinkVision L200pとAU5131DTの2つになるだろうか。

 色の自然さやアナログ入力時の画質までを評価すれば、ThinkVision L200pがもっとも良いとは思う。しかし、一方でAU5131DTにも捨てがたい魅力がある。この製品はDVI-I(アナログとデジタルを両方サポートしたDVI端子)を2系統装備している。つまり、2台同時にDVI-D機器を接続できることになる。DVI切り替え機も市販はされているが、まだ高価(数万円)なことを考えると、AU5131DTの持つ2系統DVI-Iはそれだけでも魅力だ。そもそも、DVIで2系統接続できるならば、アナログ時の画質(これも悪くはないが)は無視してもいいだろう。

 どの製品にも長所と短所があり、しかも長所がそれぞれに異なる。製品の性格を把握して購入するのであれば、どれを選んでも後悔することは少なそうだ。特に色やアナログ画質にこだわらないのであれば、プライスパフォーマンスにおいて決定的な差はない。多少、ThinkVision L200pが抜けている程度だ。

 だが、最終的に僕の中で結論が出たか、と問われれば、残念ながらまだ完全には決まらない部分も残っている。評価した製品たちに納得できない不満点があるからではない。日立の21.3インチ液晶パネルを搭載したナナオのFlex Scan L985EXをまだ評価していないからだ。

 この製品は20万円台後半のプライス設定で、今回紹介した製品たちとは価格帯が全く異なる。だが、これまでにも述べたようにFlex Scan L985EXが、高級CRTを置き換える存在として適切な製品であるならば、PCよりも長いライフタイムサイクルを持つディスプレイというカテゴリにおいて10万円の価格差は正当化できる。

 その点さえ確認できた時点で、長く続いたわが家の21インチCRTディスプレイ生活も終わりを告げることだろう。その日は、それほど遠くなさそうだ。

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[本田雅一, ITmedia]

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