News 2003年4月14日 11:29 PM 更新

News Weekly Access Top10(2003年4月6日−2003年4月12日)
“有機EL”――量産現場の裏話

有機ELの生産現場では、問題が発生するたびに生産ラインを止めたり動かしたりを繰り返すなど、まさに“手探り状態”での操業が続いているという

News Weekly Top10 4月6日〜4月12日
1位 大量不正コピーの恐れ? 新Windows Serverのプロダクトキー流出
2位 戦争は、GPSの測位精度を変えるか?
3位 Office 2003――6つ(あるいはそれ以上!)の版のどれを選ぶか
4位 量産まで秒読み――本格普及が見えてきた「有機ELディスプレイ」
5位 Acrobat新版発表、PDF変換をさらに容易に
6位 RIAAに訴えられた学生使用の検索ソフトとは?
7位 簡易版も登場、新Acrobatが目指す「PDFによる標準化」
8位 今になってアイ・オーがMacに力を入れる“事情”
9位 “監視の国”で生き残るためには
10位 “付加価値”の国内メーカー vs “大きさ/安さ”の韓国勢――LCD市場の“今”が見える「EDEX2003」

Weekly Top10 先週のTop10では、ディスプレイの専門展示会「EDEX2003」関連の記事が2本ランクイン。会場でも、次世代ディスプレイとして期待される有機EL(OLED)に注目が集まっていた。

 三洋電機とEastman Kodakの合弁会社「エスケイディスプレイ」では、今年2月から有機ELの商用出荷を開始している。だが、本格量産が始まった現場では、試験生産レベルでは分からなかった問題が次々と露呈しているようだ。

 コダックで有機EL開発を担当する伊藤昌弘氏は「有機ELで数多くのパテントを有するわれわれは“材料のプロ”、有機ELの開発には欠かせない低温ポリシリコンTFTで高い生産技術を有する三洋電機は“TFTのプロ”という自負があった。だが、実際に量産していくと、予想もしなかったさまざまな問題が表れ、“やはり有機ELはまったく新しいデバイスなんだ”ということを実感した」と語る。

 現場では、問題が発生するたびに生産ラインを止めたり動かしたりを繰り返して、まさに“手探り状態”での操業が続いているという。「量産しながら、研究開発も同時に行っているようなものだ」(伊藤氏)。

 現在エスケイディスプレイでは、月産10万枚(2インチ換算)体制で有機ELが量産されているという。歩留まりやタクトタイムの詳細は公表されていないが、生産効率面では、まだまだ液晶ディスプレイに追いつくレベルではなさそうだ。

 このような生産体制の中で“ようやく”出来上がった貴重な有機ELが、Kodakのデジカメ「LS633」に搭載されている。その価格は399ドル。実売はもう少し安くなるとのことなので、デジカメの性能だけ見てもお買い得感が高い。

 筆者:「有機EL市場立ち上げのために、やはり“採算度外視”だったんですか」

 コダック:「“戦略価格”と表現してください」

[西坂真人, ITmedia]

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