News | 2003年4月14日 11:29 PM 更新 |
先週のTop10では、ディスプレイの専門展示会「EDEX2003」関連の記事が2本ランクイン。会場でも、次世代ディスプレイとして期待される有機EL(OLED)に注目が集まっていた。
三洋電機とEastman Kodakの合弁会社「エスケイディスプレイ」では、今年2月から有機ELの商用出荷を開始している。だが、本格量産が始まった現場では、試験生産レベルでは分からなかった問題が次々と露呈しているようだ。
コダックで有機EL開発を担当する伊藤昌弘氏は「有機ELで数多くのパテントを有するわれわれは“材料のプロ”、有機ELの開発には欠かせない低温ポリシリコンTFTで高い生産技術を有する三洋電機は“TFTのプロ”という自負があった。だが、実際に量産していくと、予想もしなかったさまざまな問題が表れ、“やはり有機ELはまったく新しいデバイスなんだ”ということを実感した」と語る。
現場では、問題が発生するたびに生産ラインを止めたり動かしたりを繰り返して、まさに“手探り状態”での操業が続いているという。「量産しながら、研究開発も同時に行っているようなものだ」(伊藤氏)。
現在エスケイディスプレイでは、月産10万枚(2インチ換算)体制で有機ELが量産されているという。歩留まりやタクトタイムの詳細は公表されていないが、生産効率面では、まだまだ液晶ディスプレイに追いつくレベルではなさそうだ。
このような生産体制の中で“ようやく”出来上がった貴重な有機ELが、Kodakのデジカメ「LS633」に搭載されている。その価格は399ドル。実売はもう少し安くなるとのことなので、デジカメの性能だけ見てもお買い得感が高い。
筆者:「有機EL市場立ち上げのために、やはり“採算度外視”だったんですか」
コダック:「“戦略価格”と表現してください」
[西坂真人, ITmedia]
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