News:アンカーデスク | 2003年5月26日 03:26 PM 更新 |
おそらくCG18を知らなければ、L985EXの色に関して何ら不満を感じなかったことだろう。そう思うと、ちょっと得をしたような、損をしたような、妙な気分だが、とにかくCG18の自然な色再現には驚かされた。
キャリブレートをしなくとも、デフォルト状態でも何ら不満はない(もちろんディスプレイの色は経年変化により変わるため、キャリブレートの重要性が下がるわけではないが)。
こうした素性の良さの上に、キャリブレーションに対応するための専用ソフトウェアが付属する。液晶ディスプレイ、特にデジタル接続の場合、キャリブレートは通常のアナログCRTディスプレイとは異なるアプローチが必要となる。
なぜなら現在のDVI 1.0仕様ではディスプレイに送信する色情報がRGB各8ビットの深度しかないからだ。このため、PC上のソフトウェアでグラフィックカードの出力に対してキャリブレートをかけると、ビット落ちが発生してしまう。
キャリブレーション対応の液晶ディスプレイではこの問題を回避するため、グラフィックカードからの出力を調整するのではなく、PCからディスプレイに対してRGB各色のゲイン、カットオフ、ガンマなどを微調整する信号を送り、ディスプレイ内部で最終の色調整を行う。
CG18に付属するColorNavigatorというソフトウェアを用いると、上記の操作を非常に簡単に行える。ターゲットとする色温度やガンマを指定するだけで、あとは測定器と通信し、自動的に調整、カラーマネジメント対応アプリケーション用のICCプロファイルを出力する。
測定器は、スペクトラム分光方式で正確な色度測定を行えるGretagMacbeth社の「Eye-One」(アイワン)に対応。アイワンシリーズは先日モデルチェンジし、ディスプレイのみに対応する低価格のアイワンモニタがなくなり、より低価格な測定器をバンドルするアイワンディスプレイに製品ラインナップが切り替わってしまった(アイワンディスプレイにはスペクトラム分光ではなく、カラーフィルタ分光の測定器が付属する)。しかしアイワンの代理店である恒陽社によると、ColorEdgeシリーズのユーザー向けにはアイワンモニターを継続提供するそうだ。
アイワンの新シリーズについては上位モデルの測定器が刷新された上、ソフトウェア面でのアップデートも多く、室内の周辺光を加味したカラーマッチングにも対応するとのこと。こちらについても、非常に興味深いため、一般向けカラープリンタと組み合わせた場合の効果などを含めて、別途機会があれば記事にしたい。
さて、キャリブレートの効果だが、元々の特性が非常に揃っているためか、トーンカーブに関しては改善されたようには感じない。しかし、添付されているICCプロファイルやsRGBエミュレーション(これらの精度も十分に高い)に比べると、さらに写真がより写真らしく見えるように思う。
残念ながら、わが家には出力機(プリンタ)のキャリブレートを行う環境がないのだが、「エプソン純正のICCプロファイル+PM-4000PX」の組み合わせで評価してみたところ、F980(+キャリブレータ)の時よりも良好な結果を得ることができた。
何をもってゴールとするか、そろそろ決め時か
僕にとって幸せなことに、本当ならば自宅評価できなかっただろういくつかの製品を仕事場で比べることができた。そろそろ、どの製品をもってゴール、すなわち現在のCRTの置き換えとするかを決めなければならないだろう。
大まかな結論を言えば、通常、それほどカラーマッチングや自然画の細かな色再現にうるさく言わない人は20万円以下の製品で十分だ。予算と好みで選べばいい。
僕の個人的なおすすめはThinkVisionだが、細かな調整機能やデジタルの2系統接続が必要ならば、RDT201Hがいいだろう。後者は自宅評価しなかったが、取材した時に細かな話をうかがったり、見慣れた画像を表示してもらったりしてもらった。その結果から見て、ひとクラス上の製品にも匹敵する実力があると思う。
ただ僕個人としては、L985EXが良いと思う。元々、ナナオ製のディスプレイを使っていた僕には、この機種が一番違和感なく使えそうだからだ。ColorEdgeシリーズはもちろんすばらしいのだが、アイワンモニタの追加購入も考えると、予算から大きく外れてしまう。
正直、比べなければ、もう少しスッキリと選べていたかもしれない。L985EXは動画を表示した時、ごくたまに残像感を感じることがあるが(多少、反応速度が遅いためだろう)、仕事や趣味でPCを使う上で、画質的な不満はなかった。
他には販売店にお願いして、シャープのLL-T2020をDVIに接続してもらったことがあるが、これもL985EXに匹敵するほど良い製品だった。LL-T2020は価格的にもこなれ始めているので、高品質の大型UXGA液晶ディスプレイを探している人は併せて考えるといい。L985EXよりも鮮やかでメリハリのある絵だと思う。マッチングや自然さよりも、見た目のきれいさを重視するならば、L985EXよりもLL-T2020の方が良いかもしれない。
今度こそは本当にCRTがなくなるだろう。前回よりもグレードを一段引き上げたこともあり、CRTに対する未練は頭の中からほとんど消え失せた。
[本田雅一, ITmedia]
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