News | 2003年5月26日 10:58 PM 更新 |
iVDRコンソーシアムは5月26日、リムーバブルHDDの次世代規格「iVDR」の新ラインアップとして、シリアルATAインタフェース対応規格の正式採用を発表。同日都内で行われた「iVDRコンソーシアムセミナー」で、新規格を含めたiVDRの最新情報と今後の展開が語られた。シリアルATAインタフェース対応の新規格は、今年1月に米国で行われた「2003 International CES」で参考出展されていたものだ。
iVDR(Information Versatile Disk for Removable usage)は、 小型・軽量で持ち運びができ、AV機器からPCまで幅広い用途に対応可能なリムーバブルタイプの大容量メディア規格。三洋電機や日立製作所などエレクトロニクスメーカー8社が、昨年3月にiVDRの標準化を目指すコンソーシアムを設立。2.5インチHDDを使用し、専用50ピンコネクタを採用したパラレルATAインタフェース対応のiVDRハードウェア仕様を提案していた(別記事を参照)。
近年、データ転送の高速性やケーブルの扱いやすさなどから「シリアルATA」が次世代HDDインタフェース規格として注目されており、今年に入ってからは従来のパラレルATAからの移行も始まっている。今回のiVDR新規格は、このような最近のHDD市場動向に合わせたもの。
さらに、シリアルATA対応が今後のHDD業界標準になるとの見通しから、パラレルタイプと同じ2.5インチHDDを使ったシリアルATA対応の新規格の名称を「iVDR」とし、従来のパラレルATA対応タイプは「iVDR parallel」に名称を変更した。また、1.8インチHDDを採用して大きさを半分以下にした「iVDR mini」も新しくラインアップに加えた。
iVDRのハードウェア仕様は以下の通り。
iVDR parallel | iVDR | iVDR mini | |
サイズ(幅×奥行き×高さ)ミリ | 80×130×12.7 | 80×110×12.7 | 80×67×10 |
HDD | 2.5インチ | 2.5インチ | 1.8インチ |
耐衝撃性 | 900G以上を確保すること(非動作時) | ||
コネクタ仕様 | iVDR専用50ピン | シリアルATA準拠iVDR用22ピン | |
耐久性 | 抜き差し回数1万回 | ||
コマンド | ATA標準+セキュア拡張(オプション) |
3規格ともに、非動作時にテーブルから落としたショックに耐える耐衝撃性(900G以上)を確保。iVDRとiVDR miniは横幅とコネクタ部を共通化することで互換性を確保している。iVDR parallelとiVDRは本体の大きさは同じながらコネクタ形状やピン数が違うため、互換性はない。iVDR parallelは、昨年3月の発表から現在までメディアや対応製品は登場していない。性能/コスト面や将来的な継続性からも、今回のシリアルATA対応タイプが、iVDRの標準規格になっていく見込みだ。
iVDRコンソーシアム代表の日置敏昭氏(三洋電機デジタルシステム技術開発センター)は、「今年末からスタートする地上デジタルなど、放送のデジタル化が今後本格的になる。また、ADSLやFTTHなどブロードバンドの普及で、放送とネットワークの融合が始まる。従来は機器によってメディアが異なってきたが、iVDRでは情報家電向けで新市場が見込める1‐2.5インチクラスで、メディア規格の標準化を目指す。そしてiVDRによって、HDDビジネスモデルの転換を図りたい」と語る。
従来のHDDは、高密度化など新技術を投入してディスク容量をアップすることで、製品コストを維持してきた。これは、従来のHDD用途が、本体価格の中で一定の価格を確保できるPC内蔵型が主流だったからだ。だが近年は、PC需要の低迷からPC用HDDも頭打ちとなり、かわってHDDレコーダやホームサーバ、車載AV機器など、AV・情報家電向け市場が注目され始めている。
「容量アップでコストを維持する従来のビジネスモデルは、PC分野ではよかったが、コスト意識が高いAV・情報家電分野では成り立たない。iVDRでは、新技術で大容量化を目指す従来のHDD方式は残しつつ、一方で、容量を一定に保ってコスト低減を目指すという2本立てを行っていく。PCとAV機器で共通に利用できる大容量リムーバブルHDDが普及することで、量産効果による大幅なコストダウンが見込めるほか、リムーバブルの特徴を生かした新しいHDD応用商品の展開も期待できる」(日置氏)。
現在、iVDRコンソーシアムは、家電/PC/PC周辺機器/HDDメーカーなど、30社が集結。次世代大容量データプラットフォームの標準化を目指して、標準規格の策定作業と、iVDRの普及・啓蒙活動を行っている。30社にはSeagateやMaxtorなど海外メーカーも何社か参加しているものの、8割以上は国内メーカーで占められており、また国内組でも松下電器やソニーといった家電大手は会員に名を連ねていない。「今後は海外メーカーや国内家電大手などにも、積極的に参加を呼びかけていきたい」(日置氏)。
iVDRコンソーシアムでは、機器審査基準やコネクタ共通化のルール策定を今年7月までに行い、TV録画用アプリケーションフォーマットの策定を今年12月をめどに行う予末定。また今回、コンテンツ保護セキュリティ規格や1インチHDDを使った超小型iVDRの基本技術仕様を今年12月までに策定することも明らかにした。
「1インチHDDを使った新iVDRは『iVDR micro』という名称になる予定。本体サイズ、容量、コネクタ仕様などは、今後のiVDRコンソーシアム各部会で検討していく方針」(日置氏)。
気になるメディアコストは?
昨年3月の発表以来目立った活動や製品発表もなく、過去浮かんでは消えていったさまざまなリムーバブルHDD規格同様の運命をたどるかと思われていたiVDRだが、水面下では普及に向けた地道な活動を続けていたようだ。既存のATAインタフェース規格を発展させたiVDRは、「ドライブの開発自体はそれほど難しいものではない」(アイオー・データ・機器)という。
今回のセミナーでも、ハードメーカー各社から、さまざまなiVDR端末試作機が参考出展された。
さて、気になるのはiVDRメディアの価格。iVDRに限ったことではないが、メディアの新規格が普及するにあたって大きなウェイトを占めるのは、やはりメディアのコストだ。特に、映像記録用メディアとしてAV・情報家電向けへの普及を目指すのなら、なおさらだ。
「メディアのコストはメーカーが決めることで、コンソーシアムで定めていくものではない。だが、3年前にHDDメーカーへコスト試算を求めたことがある。その時にわれわれは『大容量のための新技術は必要ないので、とにかく安いHDDが欲しい。100Gバイトで5000円を切ることができるのはいつか』と要求したところ、『5年後には可能でしょう』とのことだった。今の3.5インチと同じぐらいの普及が条件だが、いずれにしても技術的には2年後に100Gバイト5000円というメディア価格が可能となる」(日置氏)。
[西坂真人, ITmedia]
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