News 2003年5月30日 09:52 PM 更新

第一人者、Feiner教授が示唆した「ウェアラブルの未来」(2/3)


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 筆者自身、まだウェアラブルを実践しているわけではないのだが、この問いかけには、思うところがないわけでもない。つまり、筆者ならば、Windowsの画面を見るのだ、と思うのだ。

 いつも見ているものとかけ離れたアノテーション情報(各種の付加情報)なんて、必要でないことのほうが多いかもしれない。いつも見ている画面、具体的に言うならばGoogleがいつでも視野に入っているのであれば、当面はそれが一番重要な気がするのだ。

 もちろん、常時Windowsの画面を見ている、というのでは、あまりにも進歩がないのかもしれない。それでも、いつも見ているものを見ることができるのであれば、そこには改良の余地もあるし、見たいものを準備しておくこともできる。

 まったく未知の場所を歩くのなら、新しいアノテーション情報がタイムリーに表示されることに意味があるかもしれない。だが、それはせいぜい最初の1回だけしか必要とされない。それ以外のたいていの場合は、自分のもっている「いつもの画面」のほうが、リアルに感じられる。

 そう、筆者だったら、Windowsの画面を見るだろう。

 とはいえ、Feiner教授の講演が刺激的だったのは確かである。改めて「ウェアラブルでなにをしたいのか?」という原点を考え直させられたという点でも、たいへん面白かった。

状況に応じた情報を提供するドキュメントを見たい

 Feiner教授はこの点について、さらに話をこう続けた。

 同教授によれば、ウェアラブルで見たいものは、「状況に応じたドキュメント」なのだという。

 確かに、そのようなドキュメントが整備され、街中で必要に応じた情報が手に入るようになれば、大多数の人は、そのような拡張された情報を手に入れるようになるのかもしれない。

 例えば、小田急電鉄が2003年2月17日から開始した「小田急グーパス」は、サービス開始から50日で、利用者が1万人に達したという。

 このグーパスは、事前に登録した定期券利用者に、自動改札機を通過したときに情報メールを送信するサービスである。送信するコンテンツは会員の年齢や性別、乗降駅などに基づいてカスタマイズされ、通勤通学の往復にあわせて、1日に4回送られてくる。

 おそらく、ウェアラブルサービスの最先端といえる仕組みが、このグーパスであって、こうした「状況に応じたサービス」は、今後さらに伸びていくだろう。

 しかし、それが整備されるまでの間、人々が見るのは、Windowsの画面であり、あるいはニュース程度なのではなかろうか。

最終的に重要なのは「見せ方」である

 Feiner教授の研究は、豊富な情報を常時見るようになった時を想定して進んでいる。これは、少なくとも数年後を見据えた未来研究と言えるだろう。

 ウェアラブルといえば、まだハードウェアの話が先行しているのが日本の実情だ。実際に大規模にやってみて、その成果を考えたから、「見せ方が重要だ」などというところまで具体的な話ができるわけである。そう、ウェアラブルで豊富なその場の状況に応じた情報が手に入るようになったとき、重要なのは「見せ方」なのである。

 単にその場の空間に文字を出せばよい、などというものではなく、必要なときに必要な情報をうまくセグメントして、レイアウトして配置してやる必要がある。そうでなければ、文字が重なったり、不要な情報が多すぎて、見えにくくなってしまうためだ。

 さらに、その情報は、視野の中のものの大きさによって、例えば近くの情報は大きく、遠くの情報は小さく、見えにくい近くの情報には、引き出し線を使って表示するなどという加工を行うという。

 文字情報が単なる“文字”だけでなく、書体やサイズを持つことによって、表現力が大きく増すことはよく知られていることだ。Feiner教授の研究では、まさにそこに到達しているわけだ。

 この先行具合はすごい。確かにハードウェアの話をしているだけでは、周回遅れのようなものなのかもしれない。

 しかしFeiner教授話はこれだけでは終わらなかった。

[美崎薫, ITmedia]

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