News:アンカーデスク | 2003年6月6日 11:58 PM 更新 |
ちなみに、IntelのPentium 4などで採用されているFC-PGA2には、同社がIHS(Integrated Heat Spreader)と呼ぶヒートスプレッダーが搭載されており、チップの熱をすばやく広い面積に拡散するよう工夫されている。
典型的なCPUのパッケージでは、チップの発熱がヒートスプレッダーを熱伝導で伝わっていき、熱を広い面積に拡散する。そして、それがヒートシンクを伝わっていく過程で冷却ファンで放熱していく。
それ以外にも、パッケージの接続端子などからソケットを通じ、プリント基板へも熱は拡散していく。その熱は、わずかながら周囲の空気を伝わって放熱されていく。こうした熱の通り道による放熱量とチップの発熱量が等しくなったとき、CPUは熱的に平衡状態となる。
平衡状態になれば、チップの温度上昇がその温度で止まり、チップは正常に動作し続けることができるわけだ。
ただし、放熱量はPCの筐体内温度とチップの周囲に置かれた他のチップによる放熱との干渉で決まる。プリント基板を熱伝導で伝わる熱量などが関係するからだ。いずれにしても、筐体内の温度は重要な要素なので、換気に気をつけて温度上昇を常に許容範囲内に抑える必要がある。
なお、ヒートシンクへの埃の付着による放熱効果の低下は、思わぬトラブルの原因となるので注意したい。ユーザーとしては、設置場所を含む埃対策と、PCの温度上昇に常に細心の注意を払う以外に避ける方法はない。チップの温度上昇は確実にPCの寿命を短くするからだ。
省エネを基本設計に取り込んだシステム
CPUの発熱を抑えるために最も安易な方法は、単純に動作クロックを下げることだ。つまり、クロックあたりの命令実行効率を上げればよい。とはいえ、それでは市場が許してくれない。
実際の性能がいくら高くても、クロック周波数の高さだけで商品価値が決まるため、クロック周波数の低いCPUは売れないからだ。
そこで、次善の策として有効なのが、チップの動作電源電圧を下げることだ。電源電圧は、少しでも下げれば2乗で効くので実効性が高い。それでも足りないモバイル向けCPUではバッテリー駆動時間を延ばすために、クロック周波数も下げている。
もちろん、これらはSpeedStep(Intel)やPowerNow!(AMD)といった、CPU単体の省エネ対策の一環として実装されてきた。もっと進んだ考え方で、CPUのアーキテクチャーそのものにメスを入れ、省エネに真っ向から対決したのがTransmeta社のCrusoeだ。
以前に比べ、最近あまりニュースが聞けなくて残念だが、CrusoeのLongRunという仕組みは、性能と省エネを両立させるために非常に斬新な考え方を導入した点で評価に値する(関連記事)。これは実行するコードによって、CPUのアイドリングを推定し、クロック周波数とCPUの電源電圧を下げるという仕組みだ。
ユーザーによる入力操作待ちなど、対話的な用途なら、実質的な性能ダウンをあまり感じさせずに劇的な省エネを実現できる。ただ、サーバなど多数のユーザに対して常にサービスを提供し続ける用途では、LongRunの効果はあまり期待できないかもしれない。
とはいえ、Crusoeの起こした衝撃は大きく、CPUの基本設計に省エネのためのメカニズムを盛り込むというアイデアは、Intelの最近のPentium Mのような形で今後も進化していくだろう。そこにあるのは、消費電力あたりの性能値という考え方だ。
しかし、CPUの省エネが進んでも、抜本的な対策には正直なところまだほど遠い。
なにせ、CPUの消費電力はシステム全体の消費電力の10〜15%に過ぎないからだ。つまり、CPUが消費する電力による発熱は、熱密度的にはCPUの高速化を阻む重大な問題ではあるが、CPU以外の部分が発する熱は、もっと大きい。
実際問題として、CPU以外の部品にとってもまた、熱の問題は重大になっているのだ。
熱は部品寿命にも影響する に続く
[宇野俊夫, ITmedia]
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