News | 2003年6月10日 10:49 PM 更新 |
ホームシアター用プロジェクター、240万円。
オーディオシステム、80万円。
36型モニター、130万円。
コンパクトデジカメ、38万円。
この価格は、決して“0”を1つ多く誤記してしまったわけではない。ソニーが本日発表した新製品群の正式なプライスだ。
ソニーは6月10日、エレクトロニクス製品の新ブランド「QUALIA」(クオリア)を発表した。大量生産を行ってコストや生産性を追求していくという従来のエレクトロニクス製品では難しかった“モノづくりへのこだわり”を重視。ハイクオリティ志向で技術オリエンテッドな高級製品ブランドだ(新製品のスペックは別記事1、2を参照)。
キーワードとなる「QUALIA」は、人間の意識下で感じるさまざまなな質感を表す言葉「Qualia」を語源としている。今回の新ブランドは、「脳とクオリア」などの著書でQualia論を展開するソニーコンピュータサイエンス研究所・茂木健一郎氏の研究テーマが商品コンセプトになっている。
同社会長兼CEOの出井伸之氏は、「ソニーはエレクトロニクス技術とエンタテインメントを融合させてユーザーに提供してきた企業だが、近年は技術革新のスピードが速く、ゆっくり“モノづくり”を行う暇がなくなっていた。ソニーが求める“モノづくり”のコンセプトを探っていた時、“脳と心の間に人間が質感を感じるものがある”と茂木さんが紹介する“QUALIA”に出合った。コモディティ化が進む現在の状況で、技術にこだわったモノづくりを行うためには、企業の情熱が必要。QUALIAという言葉に出会って、全社的な方向性がまとまった」とQUALIAブランドのコンセプトを語る。
同社副社長の高篠静雄氏は新ブランドについて「現在、AV製品のコモディティ化が進んでいる。この流れを、中国生産の安い商品によるデフレが原因とする向きもあるが、無意味な価格競争を繰り広げたわれわれ自身が招いた結果。“QUALIA”のコンセプトは人の心を感動させること。ここで重要なのは“モノづくり”で、質の高い商品が求められている。ソニーの創業精神である“技術の差”、“個人の執念”を商品に盛り込むことで、初めて人を感動させるモノになる」と語る。
2001年5月からスタートしたQUALIAプロジェクトは「感動価値の創造」を目指しており、カンパニーや事業部の枠を超えて行われる全社的な活動となっている。各部門から提案されたさまざまな製品企画を経営幹部で構成される認定委員会が選出し、3桁のナンバーが付与される。
「今回は4製品を発表したが、QUALIAプロジェクトに提案された企画は、これまでに約70にも及ぶ。その中で17の企画が、現在同時進行している、それぞれがたいへん特徴があり、ユーザーに末永く使ってもらえる“ロングライフに耐える商品”を企画した」(高篠氏)
100万円のバイオも?QUALIA PCの可能性
こだわりの“モノづくり”で、値段は高いけど長く使える商品――Bang&Olufsen(B&O)など欧州の高級AV製品に代表されるコンセプトは、本物志向のユーザー層に支持されている。音楽を聴く際のCDをトレーに置くギミックにまでこだわった80万円のスーパーオーディオCDオシステム「QUALIA 007」などは、まさにB&Oのコンセプトそのままだ。
同社はこのQUALIAコンセプトを、あらゆるエレクトロニクス製品で展開していくという。そこで気になるのが、PCへの展開だ。製品サイクルの短いPC製品は、QUALIAコンセプトとは対極をなすものといえる。
「3カ月スパンで商品が変わるPCは、一見するとQUALIAのコンセプトとはかけ離れている。しかし、基本性能だけずっと使えればいいというニーズもある。現在のPCはあらゆるものを盛り込んでいるため、例えばサイズや重さが犠牲になっている。PCとして本当に使う機能を厳選して、長く使ってもらえる商品もありなのでは。PCへの展開も検討している。ただし、現在進行している17製品の中にはPCは入っていない」(高篠氏)。
QUALIA PCには、出井氏も前向きだ。
「QUALIA的なバイオは十分できるはず。PC開発陣にも、3カ月サイクルではなく、いい商品でずっと売れるものを作ったらどうだと常々提案している。IntelのCPUロードマップに合わせるのではなく、もう少しユーザーのためになる製品を作っていかないと、PC産業自体が衰退していき、結局は自分自身の首をしめていくことになる。ソニーが先鞭をつければ、他社も追随する。こだわり商品の競争もまた面白いのでは」(出井氏)。
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[西坂真人, ITmedia]
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