News 2003年7月22日 10:52 PM 更新

LindowsOS日本語版は「特定企業の市場独占に挑戦する」

「ユーザーに自由と平等と信頼を」のスローガンを掲げたLindowsOS 日本語版の発表会。「Microsoftと戦う」と勇ましいメッセージが飛び出す一方で、「企業、自治体、教育市場のクライアントOSの選択肢の一部として」と控えめな発言も聞こえてきた。

 エッジはかねてより開発を表明していたLindowsOS 4.0 日本語版の製品発表会を7月22日に開催した。会場には同社社長兼CEOの堀江貴文氏とともに、米国からLindows.comのCEO、マイケル・ロバートソン氏も駆けつけ、LindowsOSのメリットと「Microsoftと戦うわけ」について「熱く」語った。


エッジ社長兼CEOの堀江貴文氏とLindows.com CEOのマイケル・ロバートソン氏

 LindowsOS 4.0日本語版は、コンシューマー向けパッケージが8月29日から出荷を開始する。販売形態は店頭によるパッケージ販売とPCベンダーへのプリインストール。Webサイトからのダウンロード販売については「現在検討中」としている。

 販売されるパッケージはOS単体の「LindowsOS 4.0 日本語版」(6800円)と、インストールプログラム「Click-N-Run」(実用アプリのダウンロードライセンス込み)が組み込まれた「LindowsOS 4.0 日本語版 Plus」(1万4800円)の2種類。また「Click-N-Run」の単体パッケージ(9800円)も販売される。

 単体バージョンのLindowsOSにはLinuxカーネルやXFree86、GUI以外に、Webブラウザやメーラー、日本語変換ソフトが収録される。WebブラウザはMozillaの日本語版Wazillaが、日本語変換ソフトにはATOK for LindowsOSが用意されている。ATOKはLindowsOS 4.0日本語版専用に開発したもの。


LindowsOS 4.0 日本語版に標準収録のWebブラウザ「Wazilla」とメーラー

 OSに標準収録されていない実用ソフトについては、Click-N-Runを使いWebサイトからダウンロードして使うようになる。通常ダウンロードしたソフトのインストールには、ダウンロード→解凍→イントーラの起動と複数の手順を経て行われるが、Click-N-Runはダウンロードからインストールまで数ステップのクリック作業で行ってしまうのが特徴だ。


LindowsOSデスクトップの左下には、Windowsのようにスタートボタンやランチャーボタンが用意されている。真ん中に見える丸い緑のアイコンがClick-N-Run起動ボタンになる

 Click-N-Runでダウンロードできるソフトは、英語版をはじめとして1800製品以上。これからも日本語ソフトなどが追加される予定。Microsoft OfficeのWordやExcelのファイルを読み込めるソフトとして「Star Suite」や、Outlookライクのメーラー「Sylpheed」も用意されている。エッジが国内販売、開発権をもっているEudoraはLindows版を現在開発中。ただし、提供開始の時期は未定になっている。

 購入時に入手できるClick-N-Runのライセンスは1年間のダウンロード権利を保障するもの。ライセンスが切れたら、Click-N-Runの単体パッケージを購入して再度1年間有効のライセンスを取得する必要がある。

 Click-N-Runの単体パッケージについて、エッジは「LindowsOSの単体バージョンを購入したユーザー向けの製品で、ほかのディストリビュータが販売しているLinuxでの利用は想定していない。ほかのLinuxでも動作をする可能性はあるが、エッジでは動作検証は一切行っておらず、サポートも行わない」としている。

 今回の発表会で、堀江氏もロバートソン氏も口をそろえて主張していたのが「特定企業の独占状態はソフトウェア、PC、インターネットの正常な発展を阻害し、ユーザーには何のメリットもない」

 堀江氏が「車で例えるなら、みんながみんなカローラに乗っている状態」と言えば、ロバートソン氏も「ハードウェアの価格は1年で20%ずつ下がっていくのに対し、競争のないソフトウェアは価格がほとんど下がらない。これは市場を独占しているMicrosoftのせいだ」とアピールする。

 クライアントOSの市場にLindowsOSが参入することで、ユーザーは選択の自由を手に入れ、市場に競争が生まれることでソフトウェアの価格が下がる。そして、このことがPCやインターネットの健全な発展を促すようになる。というのが彼らが「Microsoftに戦いを挑む」理由らしい。

 エッジは、1年間でOS市場のシェア5%確保を目標として掲げている。発表会ではMCJなどのLindowsOS PCが展示されていたが、国内大手PCベンダーに関しては「現在交渉を行っているが、まだいい返事をもらえていない。ホワイトボックス系PCからまずは広めていく」(堀江氏)


発表会で展示されていたMCJのキューブPC。動作しているのはLindowsOS 対応のビデオキャプチャーソフト。追っかけ再生も可能で「LindowsOSをインストールしたビデオデッキPCが実現」(エッジ プロダクトマネージャー 板井清司氏)

 もともと、LindowsOSは「Windowsアプリが動作するLinux」という特徴をアピールしていたが、今回発表されたLindowsOS 4.0 日本語版ではその機能はなくなっている。この点について、ロバートソン氏は「Win32プログラムの動作をアピールする方針はLindows 3.0から変更した。それは、Linuxを取り巻く状況が変化して、クライアント用のソフトが充実してきたため、Win32プログラムとの互換性が以前ほど重要ではなくなってきたため」と説明した。

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[長浜和也, ITmedia]

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