News 2003年8月7日 10:30 PM 更新

SRA 最新PostGreSQLをベースにした「PoerGres on Linux」「PowerGres Plus」を発表

ここにきて大企業や官公庁などの「エンタープライズデファクトスタンダード」で、オープンソースシステムの需要が高まっている。「ユーザー数を確保するため」Windows版を先行させたSRAもようやくLinuxで動くPowerGresを投入した。

 SRAは8月7日、データベース管理ソフト「PowerGres on Linux」とその上位バージョンの「PowerGres Plus」を発表した。価格はPowerGres on Linuxが本体4万8000円(年間サポート付きで8万円)、PowerGres Plusが7万8000円(年間サポート付きで15万円)。

 本体製品出荷は9月1日からの予定。2003年の売上目標は1億円、2005年には20億円の売り上げ達成を目指している。

 PowerGresは、フリーのオープンソースデータベース管理システム「PostgreSQL」をベースに、GUIの管理ツールやSRAによる検証作業、サポートサービスメニューをパッケージにして販売するもの。すでに、Windows版が4月より販売されており、「こちらは非常に好調なビジネスとなっている」(SRA 米津正義氏 ネットワーク&サービスカンパニープレジデント兼ネットワーク&サービスカンパニー戦略推進室長)。

 Windows版は同時セッション数50ユーザー、データ容量が数Gバイトと、小規模データベースがターゲットであったが、on Linuxは同時セッション数を100程度、データ規模は数十Gバイト、Plusでは同時セッション数150、データ規模数テラバイトと、より大規模なシステムでも扱えるようになっている。

 SRAは、Linux版の登場でオープンソース対応製品のラインアップを充実させることになる。この背景について米津氏は、「官公庁がシステムのOSとしてLinuxを採用したり、PostgreSQLを始めとするオープンソースベースのデータベース管理システムが普及するなど、エンタープライズの市場でもオープンソースのニーズが高まってきている」と説明する。

 オープンソースを使うメリットとして、SRAは「コスト」「安定性」「信頼性」をアピールしている。フリーであるが故の「コスト削減」は当然として、ソースコードを多くの“PostgerSQLコミュニティ”が共有することで、迅速なバグフィックスやセキュリティーホールの早期発見が行える「安定性」、ソースコードを始めとする情報開示によって、製品のすべてがユーザーに分かることで得られる「信頼性」をSRAはアピールする。


オープンソースの信頼性とは情報開示による「Informed consent」によって得られるもの。「すべてを隠して信頼しろというのは無理な話だ」

 一方で、ユーザーはオープンソースに「開発ツールの不足」「サポートや運用教育」「保証」の要素で不安を感じているとSRAは述べている。

 「開発ツールの不足は最近になってUNIXツールの移植や、PHPツールの普及で改善されている。サポートや運用教育についてもLinuxのディストリビュータが力をいれている。最後の保証というところで、SRAがFAQ対応やバグ対応などを製品にパッケージすることで、“製造者責任”に近いレベルを実現する」(米津氏)

 PowerGres on LinuxはPostgreSQLの最新バージョン7.3.4を採用し、SRAが独自に開発したGUIのWebベース管理ツールを同梱している。PostgreSQLにもフリーのデータベース管理ツールが存在したが、SRAのツールでは新たにデータベース監視機能が組み込まれ、レコードのロックや、更新、挿入などSQLコマンドの実行状況をモニターできる。

 PowerGres Plusは、大規模データベースの運用に耐えられるように、ストレージマネージャーを富士通が開発した、より高性能の「ESM for PostgreSQL」に入れ替えている。このほか、PostgreSQLでは、バックアップ処理実行時点までしか対応できなかった障害復旧処理を、最新のSQL実行時点まで復旧してしまうなど、新規機能も追加されている。


PostreSQLではバックアップコマンドを発行した時点まで復旧可能になっているが、PowerGresはUPDATE、INSERT、DELETEなどデータを操作するSQLコマンドが実行されるたびにWayPointが設定されるため、障害が発生しても最新のSQLコマンド実行状態にデータベースを復旧できる


Plusで追加された「VACUUMレス」機能。通常、SQLでUPDATEコマンドが実行された場合、更新される前のレコードもそのままデータベースに残存し、VACUUMコマンドによって、不要なレコードを削除している。Plusでは、UPDATEコマンド実行に不要レコードの削除を行ってしまう

 PowerGres on LinuxもPowerGres Plusも製品スペックはベースになっているPostGreSQL7.3.4とほぼ同じ。最大テーブルサイズが、Plusで16テラバイトと制限がかけられているが、これは、富士通製のESM for PowergreSQLの仕様によるもの。ただし、実際の運用に関しては「on Linuxは数十Gバイトクラス、Plusでテラバイトクラスをターゲットにしているので、とくに問題になることはないだろう」とSRAは説明している。

 on LinuxもPlusも動作環境としてサポートするのはx86の32ビットCPU。当然、Itanium 2、Opteron、またはこれから登場するAthlon 64(コスト的コンセプトから考えると、妥当性は高い)といった64ビットコンピューティングへの対応を期待したいところだが、「当面は32ビットをターゲットにしていく」

 on Linux、Plusはこれまで販売してきたon Windowsよりも大規模なシステムでの運用が可能になっているが、それにあわせて、ビジネスも大企業、官公庁などをターゲットに展開する予定になっている。

 そのため、SRAは富士通などと協業して営業、マーケティング活動を行っていく。製品発表会には、パートナーである富士通から橋本光廣氏(ソフトウェア事業本部ミドルウェアプラットホーム事業部事業部長)が出席し「オープンソースのメリットと、これまで培ってきた富士通の実用技術を融合させて、ミドルウェアの開発を進めていく」と、オープンソースにも注力していく富士通の姿勢を明らかにした。


Plusで組み込まれた富士通開発のストレージマネージャ。このモジュールの拡張によって信頼性と性能を向上させている

 今回の発表会ではon Windowsのマイナーバージョンアップ「PowerGres on Windows V1.1」も同時に発表された(価格はon Linuxと同じ)。こちらは、新たにWindows 2000 ServerとWindows 2003 Serverへ対応。一方で同時セッション数最大50ユーザーの制限は「技術的な制約のため」従来のままとなっている。

関連記事
▼ 特集:第1回 PostgreSQLで学ぶSQLデータベースの操作
▼ SRA、オープンソースデータベース「PostgreSQL」最新版の日本語ドキュメントを無償公開
▼ SRA、オープンソースデータベース「PostgreSQL7.2」のリリースを発表
▼ ターボリナックスがSRAの傘下へ

関連リンク
▼ SRA

[長浜和也, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.