News 2003年9月16日 01:44 PM 更新

パーツベンダーに聞く2003年後半の次の一手その5
サードパーティチップセットを積極的に展開するASUSTeK

マザーボードベンダーインタビューのトリはASUSTeK。台湾のマザーボード最高責任者はAthlon 64の本格始動の予想から、PCI-Express搭載マザーの見通しなどを明らかにしてくれた。

 インタビューの当日に行われた記者発表会で、ASUSTeKのJoe Hsieh氏(MB Business Unit Sales & Marketing Division Vice President)は「ASUSTeKの今年前半のビジネスは非常に好調だった。とくに、この7〜8月期においては、競合の第2位、3位の合計よりも多く販売している」と述べている。

 多くの台湾ベンダーが厳しいビジネスを展開している中で、ASUSTeKが好調だった原因は何か?

 「これまで、ASUSTeKのマザーボードは主にハイエンドとミドルエンドに向けて作られていた。しかし、今年はエントリーレベルにむけた製品が加わったおかげで、あらゆるレンジのユーザーにASUSTeKの製品を選択してもらえるようになった」(Hsieh氏)

 ここにでてくる「エントリーレベルの市場に向けた製品」が、「X-Series」であることはASUSTeKの製品に注目してきているユーザーならすぐに思いつくだろう。それまでのASUSTeKフリークの一部からは「あれはASUSTeKの製品ではない」と辛口の評価を受けたこともあるこのシリーズ。ASUSTeKの内部ではこのような評価が出ることも予測していたという。

 「でも、これらの製品はパワーユーザーに向けて開発したのではなく、それまでPCを自作したことがないユーザーに使ってもらうために市場に送り出したもの。新しい市場を作り出すのが目的でパワーユーザーに評価してもらうための製品ではない」(Hsieh氏)

 現在、ASUSTeKのマザーボード販売数の中でX-Seriesが占める割合は30%。ラインアップされている製品数が少ないことを考えると、Hsieh氏の言うとおり、好調だった今年前半のビジネスに大きく貢献していると言えるだろう。

 ほかのベンダーから「ユーザーの反応は意外と冷静だった」と言われている、インテルが送り出したFSB 800MHz対応プラットフォームについては、「たしかにCPUが本格的に出荷されるまでは低調だったが、CPUの供給が伸びてくると、それに伴ってマザーボードの売り上げも伸びてきた」(Hsieh氏)「日本の市場ではIntel 875P、865シリーズの動きは活発だった」(Andrew Tsui氏 ASUSTeK 東京事務所所長 日本営業統括担当)と、こちらも好調に展開したと評価しているようだ。

 今年後半のマザーボード展開についてASUSTeKは、SiSやVIAのチップセット「SiS655FX」「VIA PT800」を搭載したマザーボードをイベントで展示している。

 今回一連のマザーボードベンダーに対する取材では、一様にSiSとVIAに対する評価が厳しかったのと対照的に、Hsieh氏は、彼らを高く評価しているようだ。

 「インテルがノースブリッジのスペックやパフォーマンスで優位性を示すのに対して、VIAやSiSはサウスブリッジに注力し、いち早く最新のインタフェース規格をサポートすることで差別化を図っている」

 しかし、日本市場を担当するTsui氏は、サウスブリッジを優先するサードパーティのチップセットが、日本のユーザーに、あまり高く評価されていない事実を認識している。「日本のユーザーは周辺機器よりもCPUやメモリのスペックを重視する傾向がある。そのような市場では、サウスブリッジで最新のインタフェースをサポートしても、多くのユーザーに選択してもらえない」

 ASUSTeKはSiS 655FX搭載マザーとPT800搭載マザーをすでに用意しているが、それぞれのチップセットについて「VIAのチップセットが日本で評価されるのは難しいかもしれない。SiS 655FXもコストとスペックのバランスが優れているので期待はできるが、多くのユーザーはSiSのチップセットをビデオ内蔵の統合型チップセットとして評価している。だから、SiS 655FXよりもSiS660シリーズのほうが受け入れられるだろうか。」(Tsui氏)

 そのASUSTeKが今年後半に期待をかけるチップセットがATIの「RADEON 9100 IGP」だ。「スペック、コスト、3Dを含めたビデオパフォーマンス。これらすべてが、高い能力を求める日本のユーザーの好みと一致している」(Tsui氏)

 さらに、ASUSTeKはPCI-ExpressをサポートするVIAとSiSのチップセットをマザーボードに実装して11月にも市場に投入する予定でいる。ただし、PCI-Expressに関しては「11月に投入するが、今年中は対応デバイスもグラフィックカードと無線LANアダプタ程度なので、まだ普及するには至らないだろう」(Hsieh氏)と慎重な見方をしている。「本格的に立ち上がるのは、インテルが参入する来年の第2四半期ごろになる」(Hsieh氏)

 また、先日のASUSTeKイベントで「2004年中は、PCI-Expressと既存のPCIが混在するようになる」とHsieh氏は述べているが、具体的な実装については「グラフィックPCI-Expressと汎用PCI-Expressがそれぞれ一つずつ。あとはPCIが空いたところに並ぶようになる」(Hsieh氏)。

 以上のように、インテルプラットフォームでは、サードパーティ製チップセット搭載マザーを積極的に展開していくASUSTeKだが、AMDプラットフォームの大きな変革ともいえる「Athlon 64」に対してはどのような展開を考えているのだろうか。

 今のところ、ASUSTeKはK8T800搭載マザーボードを発表しているが、もう一つのAthlon 64対応チップセットであるnForce3搭載マザーは「当然投入する予定になっているが、現在NVIDIAの開発スケジュールが遅れている影響で、もう少し時間がかかる見込みだ。それでも11月には発売できると考えている」(Hsieh氏)

 これまでも多くのマザーボードベンダーが、供給量や32ビット環境でのセールスポイントに悩んでいた。はたしてASUSTeKはこのCPUに対して「Athlon 64対応のマザーは当然市場に供給していく。Athlon 64に対する評価はベンダーが下すのではなく市場が決めるものだ。ユーザーがAthlon 64のコストパフォーマンスを評価するならば、市場に受け入れられるようになるだろう」(Hsieh氏)と述べ、ASUSTeK自身の評価ははっきりと示さない。

 ただ、「Athlon 64のメリットは安価なCPUで64ビット命令コードに対応できること。しかし、OSもアプリケーションも64ビットに対応していない現時点では評価のしようがない」(Tsui氏)と、ほかのベンダーと同じように、ASUSTeKも対応に苦慮している一面をのぞかせてくれた。

 「ASUSTeKとしては、今年いっぱいは模様眺め。マザーボードの供給量も抑え気味になるだろう。本格的に始動するのは64ビット対応OSが登場してから。来年第1四半期からになるのではないだろうか」(Hsieh氏)

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[長浜和也, ITmedia]

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