News 2003年9月29日 03:09 PM 更新

MSのeHOME戦略(下)
Media Center PCが目指すもの、目指さないもの(2/3)


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 前述したSmartDisplayが使うRDPプロトコルの機能アップに関しては、Media Center Edition 1.2とは独立した話(他のWindows XPでも当然利用できる)だが、その機能を実現するモジュールが追加され次第、Media Center PCは(能力的には)Windows TV Clientに対するサーバになれる。

 つまり技術的な要素としては、コンテントサーバとなり得る機能は実装される。だが、Media Center PCをコンテントサーバとして位置付けるマーケティングを行うかと言えば、それは“ノー”ということなのだろう。そうであることは、次のようなやり取りからも透けて見えてくる。

ネットワークを通じてWindowsの持つ豊富なメディア機能を提供

 MicrosoftはSmartDisplayやWindows TV Client、あるいはそのほかのWindowsとリモート接続される可能性のあるデバイスに関し、現在は異なるアーキテクチャーとなっているローカルグラフィックスとリモートプロトコルの描画手順を、将来的に統合する計画を持っている。開発者向けにそう話している。

 現在、動画などのメディアストリームに対応していないRDP(SmartDisplayやWindows Terminalで利用しているプロトコル)を拡張する形で、動画や圧縮音声のストリームをRDPと統合することが第1段階。年末までに発表予定の次期SmartDisplayが利用するプロトコルだ。

 さらにMicrosoftは、現行Windowsの描画APIであるGDIの呼び出しをネットワークで透過的に実行する「GDI over TCP/IP」という技術を導入する。これにより、RDPで発生していた一部非互換や機能的な制限がなくなり、Windows上とリモート端末上のグラフィック表示を完全に同一にすることが可能となる。

 GDI over TCP/IPは2DグラフィックのみのAPIだが、Longhornではそれを3Dの領域にまで拡大。Longhornの新しいグラフィックアーキテクチャー、コードネーム“Avalon”では2D/3Dを統合したグラフィック機能を提供する。このAvalonでは同時にネットワーク透過な設計になっているという。つまりリモート端末でも、3Dグラフィックを応用したユーザーインタフェースを提供可能になるわけだ。

 「リモート接続でのユーザーインタフェースを改善しようとしているのは事実です。ハードウェア開発者向けには、そうした話もしたでしょう。リモートプロトコルを細かくモデルチェンジしていく話は本当です。しかし、それは技術的なバックグラウンドでしかない。OSとして機能は実装していきますが、それが即ちMedia Center PCの姿といわけでもないのです。Media Center PCは利用モデル(ユーゼージモデル)を具現化したものであって、技術的背景を製品に転化したものではありませんから」

 リモートプロトコルに注目する理由は、Windowsのユーザーインタフェースが完全にネットワーク透過になれば、PCの持つ機能をPCが存在しない場所でも、あるいはインタラクティブな機能を持たない普通のテレビでも、利用可能になるからだ。

 「確かに、PC以外のアプライアンスには可能性が無限にあります。われわれのビジョンも、家のどこにいても、PCの持つパワーと機能を使えるようにすることです。それはリモート端末だけじゃありません。UPnPデバイスに対するコンテントディレクトリのサービスなどは、PCのような大容量のメモリとパワーがあるデバイスの方が向いています。Media Center PCにおけるユーザー体験が、どこでも、どんなデバイスからでも可能になるでしょう。ただし、それは現在のところビジョンであって製品ではありません」


初代Media Center PC。これからどのように変わっていくのだろうか?

HDTVが必要になる頃には著作権者に対する信頼を築ける

 Media Center PCの将来に目を向けると、HDTVのサポートやコンテンツ保護対策も必要になってくる。PCでHDTVをいつサポートするのかという視点もあるが、むしろHDTV映像のPC上での取り扱いが、どの程度行えるようになるかの方が、ずっと重要だろう。

 今年から始まる地上デジタル放送は、基本的にすべての放送がコピーワンスの制限付きとなる。BSデジタルに関しても、来年の中頃からすべての放送にコピーワンスのフラグを立てる方針だ。

 BSデジタル対応テレビパソコンには、HDTVフォーマットの映像をHDTV解像度で再生できない制限がある――などの例を持ち出すまでもなく、コンテンツ提供者はPCを「違法コピーの温床」と見ている。彼らの信頼を獲得することなしに、デジタル放送時代でMedia Center PCが発展することはできないだろう。日米の事情は多少違うが、中期的解決しなければならない課題であることは変わらない。

 そんな中、WinHECにおいてMicrosoftはHDTVへの対応について言及していた。

[本田雅一, ITmedia]

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