News 2003年10月3日 01:12 PM 更新

第3世代に入った東芝「RD-Style」――開発者が語るそのポイント(3/3)


前のページ

 片岡氏は、それを「今回、DV入力端子を搭載したことで『付けないって言ってたじゃないか』という声があるかもしれませんが、僕自身は、『やらない』と言っていた訳ではありません。この現状で付けるとあまりメリットがないという主旨でした」と前置きした上で、「レコーダーとして、より本質的な部分を優先して開発したかったから」と説明する。

 「DV入力端子を搭載すると専用回路や端子を足すことでコストアップになるばかりか、その分、評価や開発に手間がかかります。さらに、要らないところを全部削って編集を行った場合にシーン境界が全部不連続になります。特にDVD-Rに焼いてしまうと、プレーヤーの性能によっては、編集した場面のたびに、最悪では絵が1秒ぐらいガクガクと止まってしまうことがあるんです」

 「他社が付けているから端子を付ければイイじゃないかという考え方もあるかもしれません。しかし、それは、要らない人にとってコストアップになるし、逆にビデオカメラの映像を編集したい人にとっては、意図していないのにシーンがガクガクしちゃいますよという二つの意味が裏側にありました。言い訳ではなく、あまり実用的じゃないのにコストアップしてまで付けるものではないと考えていたんです。それだったら、もっと録画に本質的に必要な機能を先に開発して、大きなコストアップをしないで搭載可能な時期にきたらやろうと思っていました」(片岡氏)

 この説明からも分かるように今回DV入力端子が装備されたのは、コストアップもそれほど大きくなく、実用に供する機能を提供できる“時期”になったからに他ならない。その理由は、二つある。まず、新RDエンジンにより、そんなにコストアップすることなくDV入力端子を設けられたことが一点。もう一点は、フレーム精度のシームレスレート変換ダビングという機能を前作から搭載し、準備ができていたことだ。

 「例えば、(DVカメラから入力するときは)一番高画質な9.2Mbpsで録っておいて、その後、編集作業を行い、そして、レート変換ダビングで最適な値に落します。こうすることによって容量的にもコンパクトになりつつ、必要なシーンがシームレスにフレーム単位で作成できます。結果的に意図するものが、きれいにつながって、それで初めて(DV入力端子)載せる意味が現実的になりました。だから今回、搭載に踏み切ったんです。もちろん、載せるからには、ボタン一つでの連動機能や日付/シーン切れ目自動チャプター分割も搭載しています」

マニア期待の「RD-X4」はどうなるのか?

 「今回のRDエンジンを搭載したことで、(やりたいことの)やっと7分の4がきちっとできたと思います。ようやくそういう世代に入りましたね。ソフトウェアもかなり熟成してきたので、ぜひRDエンジンを他社さんとかにOEM供給してみたいです。どこか、採用してくれるところがあると、うれしいのですが……」

 今回のRD-XS41の出来映えに、こう感慨深げな片岡氏。同氏は7分の4と言うが、外野からみると、すでに十分過ぎるほどの機能を搭載したように思える。これだけよくできたソフトウェアなら、確かにOEM供給への期待もかかる。どこかのメーカーが採用してみてくれると、ユーザー的にはうれしい限りではないだろうか。

 また、最近では、RD-Styleシリーズのあまりの高機能さに上級者向けと思われてしまうきらいもあるようだ。同氏は、その点を気にしている様子で「RD-Styleシリーズは、万人向けにできている」と異論を唱える。

 「RD-Styleシリーズは、確かにマニア受けする機能も確かにあります。しかし、初心者から上級者までをカバーできるよう、できるだけの工夫をしている。使ってもらえば分かりますが、初心者でも使える手になじむような“奥の深さ”を持っているんです。きっと自分の必要な機能がそこにあるはずです」

 また、次の“7分の5”がどうなるのかについても興味深いが、それ以上にマニア層のユーザーの間で話題になっているのが、フラッグシップモデルに与えられている「X型番」の製品のリリースだ。

 X型番は、以前のインタービューでも開発者自らが、「思い入れのある型番」と語っており、RD-XS41が発売されたということは、当然、現状のRD-X3をリニューアルした「RD-X4」発売にも期待がかかる。

 その点について伺ったところ片岡氏は、「RD-X4がすでに話題になっているようですが、現在は、RD-XS41がやっとでたところなので、まだ、先のことは考えていません」としながらも、個人的な考えを語ってくれた。

 「僕らは、商品を技術のカタマリでつくっているわけではありません。ユーザーニーズを実現するために作っています。僕は、やっぱり、ミッドレンジがあって、その上と下があってと、最低でもその3つがなければだめだと思います。3つあることが最低線で、上だけでもないし、真ん中と下だけでもない。(その点から言えば)上はやっぱり要りますよね。でも当面はRD-XS41がお勧めです」(片岡氏)



関連記事
▼ 東芝、24倍速ダビング対応マルチドライブ機「RD-XS41」発表
東芝が、高速ダビング対応DVDマルチドライブ搭載のHDD&DVDビデオレコーダー「RD-XS41」を発表。RD-XS31の先進機能を継承し、ドライブの高速化やソフトウェア機能のブラッシュアップなど使い勝手を大幅に向上した。ブラックボディの“キャプテンハーロックモデル”も限定販売される。

▼ 東芝がRD-Styleにマルチドライブを搭載した理由――開発者インタビュー
東芝は6月16日、HDD内蔵DVDレコーダー「RD-XS31」を発表した。搭載したのはDVD-RAM、-Rのほか、DVD-RWにも対応したマルチドライブだ。なぜそうした選択になったのか、東芝RD-Styleの顔ともいえる片岡秀夫氏に、その狙いや今後の戦略について聞いた。

▼ 東芝HDD&DVDレコーダ開発者に聞く(前編)――フラッグシップモデル「X3」は何が違うのか
ビデオレコーダに新しい形を提案、大ヒットしている東芝の「RD-Styleシリーズ」にフラッグシップモデルが追加された。ちょっと見では従来モデルとあまり変わらないこの製品。しかし、細部には開発者のこだわりが散りばめられていた

▼ 東芝HDD&DVDレコーダ開発者に聞く(後編)――次の製品はどんなものになる?
東芝のRD-Styleシリーズがユーザーの間で人気を得ている理由の1つは、「次はどんな進化を……」と“期待”させてくれることだ。後編では、次なる進化の方向性について話を聞いた

▼ 「HDDにDVDが付いているんです」――東芝開発者が語るデジタルレコーダの正しい進化論
最近人気の“HDD内蔵DVDレコーダ”。だが、指名買いが9割というこの分野のヒット商品、東芝の「RD-Styleシリーズ」開発者によると、この捉え方は違うのだそうだ。新製品「RD-XS40」をベースに、デジタルレコーダがユーザーに受け入れられるためのポイントを語ってもらった

[北川達也, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページ | 3/3 | 最初のページ