News | 2003年10月23日 09:23 PM 更新 |
ネット専業銀行のイーバンク銀行は10月22日、都内ホテルで同社の経営の現状と今後の見通しについて発表した。筆頭株主となったエッジの無料ISPなどとの相乗効果で口座数拡大を図り、今年度第4四半期の黒字化と早期の株式上場を狙う。
イーバンク銀行の預金量は今年に入り急増。昨年3月末時点で23億6600万円だったのが、今年9月末の時点では892億5900万円に。うち8割以上となる約750億円は、今年3月に開始した定期預金口座の残高。1年で0.5%、3年で0.7%の高金利から人気を集め、預金量拡大に貢献した。
日本信販と提携して6月から取り扱いを始めたキャッシュカード一体型クレジットカード「イーバンクカード」の発行数も、9月末までで6万8000枚と好調に推移。来年3月までに21万枚の発行を目指し、戦略を検討中だ。
ただ口座数は伸び悩む。個人口座数は10月現在で約61万件、法人口座数は約2800件と、開業当初に掲げていた「2002年度末に150万」を大幅に下回っている。開業初年度の2001年度には36億円の赤字、2002年度も42億円の赤字と2年連続で赤字を計上した。
現在、決済手数料収入は売り上げの4分の1を占める程度で、半分は運用益で得ている。このほど新しい収益の柱としてファイナンシャルアドバイザリー(FA)業務に参入。銀行出身の人材が多い強みを生かした。口座数拡大に加え新事業の強化で早期黒字化につなげたい考えだ。
エッジとの提携で業務を拡大
同行は、10月16日付けの第三者割り当て増資によりエッジを筆頭株主に迎えた。エッジとの提携による相乗効果で、口座数の拡大とトランザクション数アップを見込む。
説明会で同社の松尾泰一社長は「IT業界の最先端を行くエッジのスピードと成長力をイーバンクの経営に取り入れることで、高成長かつ信頼性ある銀行という新たな業態を確立していく。集客力のあるエッジの無料ISP“livedoor”などを通じて、近いうちに口座開設数を100万突破を目指したい」と業務拡大に意欲を見せた。
エッジの堀江貴文社長は「ブロードバンド普及率が15%を超え、インターネットビジネスが本格化する土壌は整った」と指摘。エッジは無料ISP「livedoor」やECサイト「アスキーストア」、LinuxベースのPC用OS「LindowsOS」など事業拡大をハイペースで進め、「「ビジネスの基本となる“ヒト・モノ・カネ”のうちの“ヒト・モノ”は押さえた」(堀江社長)。イーバンクへの増資で「金融面での強化を図り、“カネ”も押さえる」のがねらいだ。
「ケータイを財布代わりに」はどうなる?
「少額決済に特化したネット専業銀行」をうたっていたイーバンクは、メールアドレスを使って簡単に送金ができるサービス「メルマネ」を提供してきた。「ケータイを財布代わりに」は設立当初からの目標だ。
携帯電話を使った決済では、NTTドコモとソニーが、非接触ICカード技術「FeliCa」を端末に内蔵させて、電子マネーとして利用できるサービスを検討中(関連記事を参照)。松尾社長は「メルマネのシステムは小容量なので、FeliCaのICチップに載せられる。メルマネを利用してイーバンク口座とFeliCa間で入出金するシステムが構築可能だ」とチャンス到来と見ている。
[岡田有花, ITmedia]
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.