News | 2003年11月6日 05:01 PM 更新 |
「DVDソフトのバックアップができる」とうたう「DVDコピーソフト」に対し、国内でもDVDソフトメーカー側が法的措置をとる可能性が高まっている。本来プロテクトによりコピーができないはずのDVD。これを複製可能なソフトが簡単に入手できる事態に危機感を募らせているためだ。
「技術的な仕組みがどうあれ容認できない」
「現在販売・配布されているDVDコピーソフトの中には違法と判断できる仕組みのものが存在しており、法律的検討を進めている」──大手DVDソフトメーカーや映画会社などで構成する社団法人の日本映像ソフト協会(JVA)は11月4日、角川歴彦会長(角川書店社長)名でDVDコピーソフトに対する見解を公開。コピーソフトメーカーなどに何らかの法的措置をとる方針を明らかにした。
著作権法と不正競争防止法により、あるメディアにコピープロテクトが施されていることを知りながら、意図的にこれを回避してコピーした場合は違法になる。JVAは広く販売・配布されているソフトの中にこれに触れるものがあるとして問題視。「技術的な仕組みがどのようなものであれ、到底容認できない」と強い態度で臨む方針を明らかにしている。
“灰色無罪”なDVDコピーソフト市場
「高速ダビング」「2層DVDを2枚にコピー」──記録型DVDドライブの本格的な普及が始まった今年になって、ソフトメーカー各社からDVDコピーソフトの新製品が相次いで登場した。
ただし市販DVDの大半にはコピープロテクト「CSS(Content Scrambling System)」が施されており、原則としてPCでデジタルコピーをすることはできない。ソフトのパッケージやメーカーのWebサイトなどでは「CSSプロテクトが施されたDVDソフトはコピーできない」と一様に明示されている。
こうした製品の中には、CSSを解除しなくてもDVDの内容をコピーできるよう、DVDの映像をキャプチャーすることでPCのHDDに保存する仕組みの製品もある。だが、ある手順を踏めばCSSを解除してDVDをコピーできる“グレー”な製品が存在するのも確かだ。
今年2月には、プロジーグループが発売した製品に「CSS解除コード『DeCSS』が含まれているのでは」との指摘が相次ぎ、同社が「CSSが施されているDVDであるか否かを判別して警告する機能はついているが、CSS解除機能は搭載していない」と釈明する騒ぎもあった(関連記事を参照)。
市販DVDのコピーについて、「CloneDVD」を販売するエッジは「DVDが紛失したり破損した場合に備えてバックアップを取るという権利はあると認識している。CSSプロテクト外しは違法だが、個人利用目的で非CSSのDVDを複製することは違法ではない」との見解だ(関連記事を参照)。
ただ、あるソフトメーカー関係者は「CSSがかかっていないDVDは少ない上、例えば個人が撮影した映像で作ったDVDをコピーする、といったニーズはほとんどない」と打ち明け、CSSプロテクト済みDVDの複製がソフトの主用途であることを暗に認める。
動き出したDVDソフトメーカー
日本映像ソフト協会は「市販DVDが低価格なのはコピー不可能という前提があるから。コピーできてしまうならばビジネスモデルが崩壊し、低価格な供給ができなくなり、消費者の利益に反する」と警告する。DVDソフト市場の成長がピークを迎えるにはまだ数年はかかると見られ、DVDソフトメーカー側は成長中の市場のただ中で“カジュアルコピーにまみれた音楽CDの二の舞”を強く恐れている。
米国では「DeCSS」訴訟をはじめ、DVDコピーソフトメーカーの321 Studioに対しハリウッドがデジタルミレニアム著作権法(DMCA)違反に当たるとして提訴するなど(関連記事を参照)、DVDコピーの動きに強硬に対応してきた。
こうした米国の動きを受け、国内でも何らかの動きがあるものと見られていた。JVAは「DVDコピーソフトの中にはコピーを可能にする仕組みが明らかでないものがあり、鋭意調査の上で対応方針を慎重に検討する」と表明。「技術的な仕組みがどのようなものであれ容認できない」という態度を明らかにしていることから、CSSを解除しないイノセントなコピーソフトでも将来は何らかの対応を迫られる可能性もある。
[小林伸也, ITmedia]
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