News:アンカーデスク | 2003年11月28日 06:00 PM 更新 |
よく電気ポットや加湿器などには、磁石でくっついてすぐに外れるACコードが付いているが、テンポラリ的に繋いだ電源コードに引っかかって本体も人間も転ばないというような工夫は必要だ。またいろんな事情があるにしろ、「これはアメリカ製ですか」と思わせる巨大なACアダプタはないだろう。こんなものが床に転がってた日にゃ、万事不注意な筆者は2日に1度はこれを足の小指でしこたまけっ飛ばして、ぬおおおうと悶絶する自信がある。
これはバッテリーの使用時間を短縮しても、内蔵したほうが良かっただろう。前にも述べたように、家庭用途で臨時UPS代わりに使うような用途であれば、10分〜15分も動けばいいのではないか。30分というビミョーに中途半端な時間動くよりも、もっとバッテリーの位置付けを明確にすれば済むことであるようにも思える。
もう一つ指摘しておきたいのは、あまりにも片づけることに執着しすぎたせいか、コネクタ類がほとんど背面にあるのはちょっと使いづらいだろう。頻繁に付け外しするマウス用USBポート、TVアンテナ端子、ヘッドフォン端子などは、背面にあるよりも横にあったほうが便利だ。
反対に先日出たVAIO Vは、コネクタ類は横にある。だがこのマシンは、常時設置しておくスタイルのマシンなので、横にあるよりは目立たない背面にコネクタ類があるほうがいい。設計やコストダウンの都合などいろいろあるのだろうが、コネクタの位置に関しては、ちょっとコンセプトとちぐはぐな部分を感じる。
さらに言えば、ネットワークやUSB、アンテナケーブルみたいなものを、毎回毎回使うたびに繋ぐのはかなり面倒だ。これはノートPCのポートリプリケータ的発想で、それらをまとめるボックスみたいなのがあって、マルチコネクタで本体と一括取り外しみたいな機構もあると良かっただろう。
VAIO Pは女性がターゲットになっている。当然この企画には、女性も参加したことだろう。だがいま一歩生活感というか、言葉は悪いが、所帯じみたような部分での便利さが足りない。そこが、白物家電をやったことがないSONYの弱点でもあると言えるだろう。
所詮男のソフトウェア
PCに家電スタイルを持ち込んだことで、VAIO Pは「メス」的である。だがそこで惜しいのは、「開いたらただのVAIO」に過ぎない、というところだ。
これはソニーだけではいかんともしがたい部分なのであるが、Windowsの構造も含め、アプリケーションの見せ方などは、まったく「男用」なのではないだろうか。筆者は残念ながら女性だったことがないので、ここからは想像にしか過ぎないが、例えばファイルやディレクトリ構造のあり方、アプリケーションの操作法・表示方法など、女性にとって理解しやすいものであるのかは疑問だ。
ものを覚える方法や、空間認識能力などの面で、男女の差は意外に大きいものだ。仕事にも、男にむいたものと女に向いたものがある。男の仕事をこなす道具と女の仕事をこなす道具は、違って当たり前だ。小さいとか軽いとか花柄が付いてれば女性用、ということにはならないのである。
たとえばレガシーなVHSで、あなたの母親がいつまでも予約録画ができるようにならないのは、男が考えた段取りをそのままおしつけたからできなかったわけで、決してあなたのお母さんが悪いわけではないのである。このあたりに関して筆者は思うところがあってもう少し詳しく述べたいところだが、ここまでもうずいぶん書いてしまったので、また次の機会にしよう。
今後シュリンクしていくPC市場で、活路として女性をターゲットにするのは、マーケティングとして正しい。一般的に現在のPCユーザーの男女比は、8:2もしくは7:3と言われている。もし女性用のパソコンという存在が認知されれば、単純計算では現状の2割3割の売り上げ増が見込めることになる。
そしてそこに求められるのは、「メス」的な造りだ。VAIO Pはそのあたりをかなりうまくやっている。残念ながら外見はメスで中身はオスという、ニューハーフになってしまってはいるが。だがそういったことに気づかせてくれたという意味で、VAIO Pは新しいデスクトップPCのあり方を示唆する重要なマイルストーンとなるかもしれない。
小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
[小寺信良, ITmedia]
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