News:アンカーデスク 2003年12月5日 10:19 PM 更新

っぽいかもしれない
「ハルキゲニア」ロボットを見てきました(2/3)


前のページ


山中さんデザインによるロゴ

 ハルキゲニアというのは、いまから5億4千万年ほど前のカンブリア紀の海にいた生物の名前である。この頃の海には、いまにつながる動物たちの系統とは設計思想からして異なる動物たちが多数生息していた。これらの動物は最初に発見されたカナダの地名をとってバージェス動物群(有名なアノマロカリスやオパビニアもこの例だ)と呼ばれるのだけど、そのなかでももっともみょうちくりんな形(*4)をした生物がハルキゲニアである(*5)。


 今回デモされたHallucigenia 01はプロトタイプであり、5分の1のスケールモデルだ。サイズは次の通り(カッコ内は実車にしたときの数値)。

 サイズ
全長537ミリ(2685ミリ)
全高312−378ミリ、リフティング関節ニュートラル時335ミリ(1560−1890ミリ。同1675ミリ)
全幅311ミリ(1655ミリ)
フロア高さ65−131ミリ(325−655ミリ)

 モデル車両製作は日南による。

 Hallucigenia 01は、4対の脚を持ち、その先にそれぞれ車輪がついたという形をしている。車輪に駆動用のモータがついているのはもちろんだけど、脚の関節にも「ステアリング」「リフティング」「スウィング」の回転軸があり、それぞれにモーターがある。つまり、駆動のものとあわせて、1脚につき4モーター、4対(8本)では、32モーターということになる。そしてそのモーター一つ一つにサブCPUがついており、体内LANによってメインCPU(NECのVR5500ベースのオリジナルCPU「ATOM」。morph3とおなじものだ)につながっている。



 このようにして自由に動く脚によって、地面の状態によらず平面を保った床というのを作り出すことができる。むしろ床を支えるものとして脚があると考えたほうがいいかもしれない。1対の脚でその間の床ができるから、求める車の大きさに合わせてそれをつないでいけばいいのだ。Hallucigenia 01の4対というのは、冗長性が発揮できる最小の数なのだそうだ。

 段差を乗り越えるときには、まず、前の脚が高く上がってから段差の上に下ろされる。これで、段の高さがわかった。あとは、それをもとにして、各脚を折り畳みながら乗り越えていけば床は水平のままだ。段を上り切ったときには脚を縮めた状態になってしまうわけだけど、それはあとから水平を保ったままゆっくり伸ばせばいい。坂を登るときにも、前脚は縮めて後脚は伸ばした形にすることで水平を保てる。


*4 Googleで検索してみると、いくつも画像が見つかる。7対の脚、7対のトゲをもっており、最初に発表されたときにはトゲのほうが下だと思われていたが、その後の研究でそれではさかさまだったことがわかった。Hallucigeniaという名称もhallucination(幻覚)に由来する。
*5 生物の進化というのは、かつて思われていたように、少数の単純な生命がだんだん複雑化・多様化していったというものではなく、いきなり大きな多様性を持ったものが一気に登場し、そのなかから、(多分に運によって)ある系統だけが生き残ったという構図だったらしい。コンピュータの歴史にも似た話だ。

[こばやしゆたか, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページ | 2/3 | 次のページ