News 2003年12月9日 09:55 PM 更新

高級オーディオの“あの音”を普及価格帯に――Analogが新DSP

Analog Devicesが、AV機器向けDSP「SHARC」シリーズの第三世代製品を発表。コストパフォーマンスを高めた新DSPによって、これまでプロ向けAV機器や高級オーディオでしか聴けなかったサウンドが、普及価格製品で再現できるようになるという。

 Analog Devicesは12月9日、AV機器向けDSP「SHARC」シリーズの第三世代製品「ADSP-21266」「ADSP-21267」「ADSP-21364」「ADSP-21365」の4製品を発表。同日都内で新DSPファミリーの製品説明会を行った。


AV機器向けDSP「SHARC」シリーズの第三世代製品

 1992年に開発されたSHARC DSPは、2個の大容量オンチップ・デュアル・ポートSRAMブロックと高性能I/Oプロセッサーを組み合わせた独自のメモリ・アーキテクチャを内蔵し、高速演算のための帯域幅を常に確保。最高で毎秒5GOPS(50億回演算)という高性能製品までラインアップしているオーディオ信号処理向けに最適化した32/40ビット浮動小数点演算デバイスだ。

 そのオーディオ処理機能が認められ、AVレシーバー(AVアンプ)など高級オーディオやレコーディングスタジオコンソールなどプロユース向け、高級車用オーディオシステム向けなどでSHARC DSPが“業界標準”となっている。

 AV機器向けプロセッサとしてのSHARCの優位性は、2チャンネル同時処理が可能なSIMDアーキテクチャや32ビット処理による高音質、オーディオ向けに最適化されたRAM/ROMなどがある。さらに、Dolby ProLogic IIxやDTS96/24 Ver.2.3、SRS CircleSurround IIなど最新のデコーダ機能をサポートしており、市場ニーズに合った製品を迅速に開発できるという点も評価されている。

 さまざまなオーディオデコーダ機能の中でも注目は、「32ビットDSPでは業界初」(同社)というWindows Media Audio 9 Professional(WMA9 Pro)のサポートだ。今年10月に発表されたパイオニアの高級AVアンプ「VSA-AX10Ai-N」は、SHARC DSPを搭載することで業界で初めてWMA9 Proに対応した。


業界初のWMA9 Pro対応機・パイオニア「VSA-AX10Ai-N」はSHARC DSPを搭載

 そのほか、DENON、ケンウッド、ソニー、ヤマハ、BOSEなどオーディオメーカー各社が、AVレシーバーやハイエンド向けサラウンドアンプなどにSHARC DSPを採用している。

 「SHARC DSPシリーズは、今までオーディオ高級機の市場で大きなシェアを持ち、プロ向けのミキサーやビデオ編集機など業務用オーディオでも高い支持を得ている。だが、32ビット浮動小数点のSHARCアーキテクチャーは、そのシステム構造からチップサイズのコンパクト化が難しく、システムのコスト高に結びついていた」(同社)

 今回発表された第三世代SHARC DSPでは、最大300MHzのコア動作をサポートし、大容量のオンチップメモリを搭載。Dolby ProLogic IIxやWMA 9 Proなど最新コーデックを含む各種オーディオデコーダフォーマット(PCM、Dolby Digital、同EX、DTS Discrete6.1、同96/24、同Neo:6、MPEG-2、同AAC、SRS CircleSurround IIなど)に対応し、これらオーディオアルゴリズムは7.1chオーディオ、バス/ディレイマネジメント、192kHzサンプリングレート処理が可能となる。

ADSP-21267ADSP-21266ADSP-21365ADSP-21364
ターゲットコンシューマオーディオ向け左同(エントリー)左同(中上級機)プロオーディオ向け
Performance150MHz、300MMACs150/200MHz、300/400MMACs300MHz、600MMACs300MHz、600MMACs
On Chip RAM1Mビット2Mビット3Mビット3Mビット
On Chip ROM3Mビット4Mビット4Mビット4Mビット
OEM価格(1万個受注時)9.95ドル14.95ドル19.95ドル24.95ドル
サンプル出荷2004年Q12003年12月9日2004年Q12004年Q2

 「チップサイズのコンパクト化と機能の統合化を積極的に進めたたことで、性能が第一世代に比べて7〜8倍になったにもかかわらず、価格は半分以下にダウン。199〜999ドルといった普及価格帯の製品に採用できるプロセッサとなった。これにより、今後大きな成長が見込まれるDVDやデジタル放送市場に対応していく。来年初頭には、低価格のWMA 9 Pro対応製品や、普及価格帯でサラウンドシステム搭載のカーAVシステムが登場するだろう」(同社)。

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[西坂真人, ITmedia]

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