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Winny事件はソフト開発者を萎縮させる?

Winny事件を考えるパネル討論会で、「Winny開発者の逮捕は、警察が思っていた以上にソフト開発者の行動を縛るのではないか」と懸念。Winny関連論文の査読も処罰の対象になるのでは、と心配する研究者もいるという。

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 Winny事件はソフト開発者を萎縮させることにならないか――。東京電機大学で6月28日に開かれたWinny事件を考えるワークショップ。パネル討論会で、司会役の佐々木良一・東京電機大学工学部教授はそう懸念する。

 「ある研究者は、Winny環境下のトラフィックを解析した論文の査読も、処罰の対象にならないかと心配している」と例を挙げ、警察が思っていた以上に開発者の行動を縛るのではないかと予想する。

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パネリストの瀬川典久岩手県立大学講師は、P2Pビジネスで海外に遅れを取らないよう、Winnyを使ったビジネスのアイデアを出し合い議論する必要があると話す。「例えば、個人用HDDのデータをノード間で分散バックアップするモデルが成立するのではないか」

 佐々木教授は、今回の事件が国際的な競争力に悪影響を及ぼす可能性もあると考える。「日本のソフト輸出額は、輸入額より2けた少ない。国内ソフト産業がさらに縮小する恐れがあるのではないか」。Winny開発者弁護団の壇俊光弁護士も「法的問題を心配して弁護士などに相談するようになると、ソフト開発は遅れてしまうだろう」と見る。

 日本IBMの丸山宏氏によると、国内ソフト産業は海外への業務移管が進み、下請けが多層化して末端開発者が低賃金で働かされるなどの問題が出てきている。Winnyはソフトウェアとしては優れているとし、「Winnyに限らず、SoftEtherのようなソフトがどんどん出てきて日本のソフト産業を盛り上げてほしい」と話す。

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ある参加者は「学生は平気でWebから論文をコピー&ペーストして提出するような状況だ」と話し、P2Pユーザー側の著作権に対する意識の低さを問題に挙げる

 イージス法律事務所の落合洋司弁護士は、まずどこからどこまでがほう助罪に当たるのか、線引きを明確にする必要があると指摘した。

 「ほう助罪の成立条件はゆるく、『犯罪を助けているかもしれない』という程度の認識でも成立する。アップロードしたユーザーを正犯、開発者をほう助者と捉えるなら、ネットワークでファイル中継にかかわったユーザーもほう助者になる」。佐々木教授も「線が引かれず、無条件に後ろに下がるようではよろしくない」と懸念する。

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