“成功した”Blog「Naver」が、SNSに移行したワケ
40万人ものユーザーを集めたBlogサービス「Naverブログ」が6月2日、SNS「CURURU」に丸ごと移行した。収益モデルに課題が残るSNSに今あえて参入するのはなぜか、NHN Japanに理由を聞いた。
開始初日から40万ユーザーを抱えるソーシャルネットワーキングサービス(SNS)が誕生する――かもしれない。NHN Japanが運営するユーザー数約43万人のBlogサイト「Naverブログ」が終了し、6月2日、Blog機能を包含したSNS「CURURU」としてリニューアルオープンした。Naverブログユーザーは、IDの再取得など“引っ越し作業”を行えば、BlogコンテンツをそのままCURURUに移行できる。
CURURUは、Naverブログのユーザーベースと、同社がオンラインゲームやアバターでつちかってきたデジタルコンテンツ販売のノウハウ、人と人とのつながりが生む購買欲求をビジネスのベースに、収益性の高いSNSを目指す。
「成功した」Naverブログをやめる理由
Naverブログは昨年6月にスタート。無料で容量無制限という大盤振る舞いが人気を呼んだほか、同社のゲームポータル「ハンゲーム」と同じIDで利用できるため、ゲーム仲間に近況を知らせるツールとしても広く使われてきた。
ユーザー数は国内Blogでも上位。アクティブ率も高いといい、「サービスとしては成功した」とCURURU事業部長の田代克行さんは話す。しかしBlogからの収入はほぼゼロ。利用は無料で広告もなく、収入源はハンゲームと共有している数十円〜数百円のアバターアイテムだけだった。
「もともと、検索サービスを中心にしたユーザーロイヤリティの高いコミュニティを作り、収益につなげるつもりだった」(田代事業部長)。「Naver検索」が人気の韓国では、コミュニティをベースにしたQ&Aサービス「知識iN」で検索精度をアップ。Blogでユーザー数や訪問頻度を高め、収益面でも成功したという。
国内でも同じ流れを作ろうと、2000年に「Naver検索」を開始し、昨年1月にQ&Aサイト「知識plus」をスタート。同6月にはBlogにも参入し、検索を中心にしたコミュニティ構築を試みた。
しかし、Yahoo!JAPANとGoogleの2強にほぼ独占されている国内検索市場でNaver検索が存在感を示すのは「あまり言いたくないが、難しかった」(田代事業部長)。同社は今年1月いっぱいで検索から撤退し、「知識plus」は6月からハンゲームのドメインに移行。Blogサービスの今後も模索してきた。
Blogは競合がひしめいており、単体で収益をあげるのは難しい。他社サービスの多くは、容量拡張時のユーザー課金を収入源にしているが、Naverブログは容量無制限が売り。課金するわけにもいかない。
検討の結果「これまでになかった、新しいコミュニケーションサービス」(田代事業部長)に打って出ることに。「既存のコミュニケーションサービスのいいところを集めて」CURURUが生まれた。
同社がSNSではなく「CCS」――コミュニケーションケアサービス――と呼ぶCURURUは、「BlogとSNS、両方の使い方ができる唯一のコミュニティサービス」(田代事業部長)だ。
「外から見える」SNS
CURURUの最大の特徴は、日記や掲示板などコンテンツを外部に公開可能な点。記事ごとに「完全公開」「友人のみの公開」「完全非公開」といった公開レベルを設定できる。「完全公開ならBlog的に利用でき、ネット上だけのバーチャルな自分を表現可能。友人のみの公開なら、SNS的に使い、リアルな自分を表現できる」(田代事業部長)。
会員以外にも日記やコミュニティを見せることで、宣伝効果も期待できる。招待不要で参加でき、登録すれば誰でも使える一方、友人リンクのないユーザーには機能制限をかけることで、友人と積極的につながってもらう仕組みにした。
ユーザートップページには「クルホーム」と呼ばれる部屋を表示。家具や壁紙、建物などのアイテムで部屋中を飾れる。当初は全アイテム無料だが、9月1日から、数十円から数百円の有料アイテムも販売する。ハンゲームのアバターで培ったデジタルコンテンツ作成・販売ノウハウがここで生きる。
将来はECサイトと連携し、友人同士でプレゼントやカードを贈れるようにする予定。ウイッシュリスト機能も備え、欲しいものがもらえるよう配慮する。
コミュニティも自由に作成できる。「友達同士で話が盛り上がれば、『みんなで何かやろう』『食事でも行こうか』となるのが常」(田代事業部長)。コミュニティからレストランやパーティ会場を予約できる機能を装備する計画。CURURU経由で予約が入れば一定の手数料をもらうといったビジネスモデルを検討する。
国内SNSの先駆けである「mixi」や「GREE」が主な収入源にしているバナー広告は「今のところ導入予定はないが、ユーザーが増えれば検討する」(田代事業部長)。
まずは、Naverブログの43万ユーザー全員に、CURURUに移行してもらうのが課題だ。ユーザーが集まった時点で順次ECをスタートし、ビジネスに弾みをつける。「できれば今年中にもECを始めたい」(田代事業部長)。
「mixi」「GREE」の成功を受けて昨年から次々に誕生しているSNSだが、「UUME」「FriendMap」など収益モデルを確立できないまま終了したサービスも出始め、淘汰が始まっている。
コンテンツ販売とECを核に据えたCURURUは、いまだ課題が残るSNSの収益源に1つの道筋をつけてくれるかもしれない。
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