“日本の技術”で創るLenovoブランド
「IBM時代と変わらない」――こう伝えてきたLenovoのブランド戦略が第2段階に入った。ThinkPadを生んだ日本の大和研究所にスポットを当て、技術力をアピール。IBMの名に頼らないLenovoブランド構築を進めていく。
中国のLenovo GroupがIBMのPC事業を買収してから1年半経った。ブランド力ではIBMに劣るLenovoは、事業譲渡を受けた後も「IBM時代と変わらない」ことをアピールしてブランド力の維持と向上に努めてきた。この秋からは、LenovoのPCを支える日本の技術力を前面に押し出し、IBMブランドに頼らないブランド構築を進めていく。
「Lenovoブランドはマーケティングの第1段階が終了し、第2段階に入っている」――ワールドワイドでマーケティングを担当するディーパック・アドバニ副社長は語る。第1段階としてこれまで、IBMのブランド力を活用し、「Lenovo PCの質は、IBM時代と変わらない」と伝えてきた。製品にはLenovoではなくIBMのロゴを張り、ThinkPadなど既存のブランドをPRした。
第2段階に入った今は、IBMブランド依存を離れたLenovoブランド構築に力を入れる。「Lenovo 3000」などLenovoの名が入ったシリーズも新展開。ThinkPad秋モデルにはLenovoロゴを付けた。液晶ディスプレイのブランドもIBMからLenovoに変更した。
「第1段階では、『Lenovoは、IBMが信用しているブランドだから信用できる』と思ってもらうことが狙いだった。だが今後は、Lenovoブランドへの信頼を自力で勝ち取っていかなくてはならない」
Lenovoブランドを支えるキーに位置づけているのが、PCを開発している大和事業所(神奈川県大和市)の技術力だ。「大和のエンジニアにスポットを当て、日本がエンジニアリングしたPC――“ベストエンジニアPC”を訴えていく。技術力を重視する日本のユーザーには、特に納得してもらえるだろう」。今後はさまざまな媒体で、大和の技術力を訴求していく方針だ。
YouTubeにも注目
同社はスポーツイベントと連動したマーケティングにも積極的だ。トリノ五輪ではオフィシャルスポンサーとしてThinkPadを提供。同機が過酷な環境下に耐えられることを実証した。今年は全米バスケットボール協会(NBA)ともマーケティング契約を締結。PCを提供するとともに、試合の分析ツールも開発する(関連記事参照)。
「選手の高いパフォーマンスが見られるスポーツは、ブランドイメージを上げるのに効果的。米国はバスケット、インドではクリケットなど、地域によって異なるスポーツでプロモーションする。PCを提供することで、マシンのクオリティも訴求できる」
YouTubeやMySpace、ブログなど、コミュニティーを活用した口コミ広告にも注目している。口コミを活用した動画広告も展開。LenovoのPCが床に落ちそうになった瞬間、PCからブースターが出て浮き上がったり、コーヒーがこぼれそうになった瞬間PCがシールドを張ったりする、というユニークな動画を公開し、予想をはるかに超えるアクセスを集めたという。動画はユーザーの手によってYouTubeにも転載され、そこでも多くの視聴者を集めた。
「Webに参加する人数が増え、コミュニケーションやマーケティングが変わってきている。ネットには国境がない。ある国で始めたマーケティングが他の国に波及する可能性もあり、世界のLenovoスタッフが知恵を絞っている」
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