まん延する“違法着うた”の実態(3/3 ページ)
違法な無料着うたが、携帯サイト上で流通している。人気楽曲なら探せばどこかに着うたが“落ちて”いる状態。音楽業界も対策に乗り出した。
まず、合法サイトの楽曲ラインアップが十分でないことが挙げられる。レコード会社は人気歌手の一部楽曲しか着うた化していない場合が多く、マイナーなアーティストのファンや、着うた化される見込みのない古い楽曲のファンなどは、違法サイトを頼るか、「チャッカーズ」のような“カバー曲サイト”にリクエストするか、自分で作るしかない。
着うたの検索性の低さも、ユーザーを違法サイトに走らせる原因になっていそうだ。着うた提供サイトは、レコード会社ごとにばらばら。欲しい楽曲にたどりつくまでにいくつものサイトをめぐる羽目になることもある。横断検索サービスもあるが、すべての着うたをカバーしている訳ではない。
違法サイトも、検索性は高くないものの「リクエスト掲示板」で欲しい楽曲をリクエストし、ひたすら待っていれば、検索の手間をかけずに着うたが手に入る可能性がある。
携帯ユーザーの著作権に対する意識も希薄。着うた交換掲示板の書き込みを見ていると、友人同士でCDを貸し借りする感覚で気軽にアップロードしている様子で、違法性を認識しているユーザー自体が少ないように見える。着うたのメインユーザーである中高生には、著作権に関する知識がないユーザーも多いと見られる。日本レコード協会の担当者も「無料着うたを違法と知らずに利用している人も多いだろう。まずは広報・啓発活動から始めたい」と語っている。
音楽業界側で違法サイトを取り締まったり、ユーザーを啓発することももちろん重要だ。だが違法着うたサイトがここまで盛り上がる背景には、「好きな音楽を携帯で楽しみたい」というユーザーの強いニーズと、それに応え切れていない音楽業界との需給のアンバランスがありそうだ。
違法着うた問題を根本的に解決するには、音楽業界側が着うたのラインアップを強化したり、検索性を高めたり、価格を下げるなど、ユーザーの利便性を高める努力をする必要もあるだろう。怪しい広告を大量に閲覧することなく、高音質な着うたが欲しいタイミングで合法・安価に手に入るなら、そちらの方がいいと考えるユーザーは少なくないはずだ。
関連記事
- “違法な音楽配信根絶”で携帯3キャリアと音楽関係権利者6団体が合意
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルは、音楽関係権利者6団体と協力し、携帯向け違法音楽配信に関して、本格的な検討を開始。違法音楽配信の根絶に向けた諸施策、継続的かつ積極的な啓発活動などを、共同で実施していくことで合意した。 - 「着うたで排除勧告」の裏にあるもの (1/2)
着うたが独占されている? 公取委がレコード会社に排除勧告を行った。背景には、着うたと着メロの著作権処理方式の違いや、そもそも音楽の流通経路をどう考えるかという問題がある。 - 着うたで排除勧告、5社中4社が受け入れを拒否
公取委が着うたをめぐり大手レコード会社に排除勧告を行った問題で、東芝EMIをのぞく4社が勧告受け入れを拒否した。 - 着うたでレコード5社に排除勧告
公取委は、大手レコード会社5社に排除勧告を行った。レーベルモバイル以外に着うたを提供する事業者には原盤権を許諾しないことが、独禁法違反とされた。 - 着メロの進化形目指す〜「着うた」の裏側
auの新端末が対応する「着うた」。MP3を使った歌付きのメロディを、着メロのように配信しようというサービスだ。このサービスの裏側には、ほかが真似できない武器を使って、着メロ市場でもプレゼンスを確立しようというレコード会社各社の狙いがある。 - 着メロの著作権料はだれのもの?
現在、着メロの著作権料は、作詞者、作曲者にしか支払われていないのをご存じだろうか。急速に拡大する着メロビジネスだけに、今後は“著作隣接権者”への配分も必要になってきそうだ。 - 定着した? 音楽配信の今後の課題
iTunes Music Storeの開始から10カ月。「音楽配信」という言葉を耳にする機会も増えたが、それは音楽配信の定着を意味しているか。意味するならば、新たな課題も見え始めているのではないだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.