「新しい『N』らしさ、確立しつつある」──NEC 矢野社長
「液晶が美しいとほめられた」──NECの矢野社長は、経営方針説明会でN904iを掲げて喜んだ。不振にあえいできた携帯電話端末の名門「N」が復活しつつある。07年度は黒字化が必達の目標だ。
NECの矢野薫社長は7月10日、2007年度の経営方針説明会を開いた。不振に苦しんできたモバイルターミナル(携帯電話端末)事業では、昨年来進めてきたデザインの強化や使い勝手の向上努力が実を結び、「新しい『N』らしさを確立しつつある」と評価。年度を通しての黒字化を必達目標に掲げた。
06年度(07年3月期)の同社連結業績のうち、携帯電話端末とPC(モバイル/パーソナルソリューション)事業の売上高は9650億円だったのに対し、営業損益は335億円の赤字だった。PCは黒字を確保したが、携帯電話は赤字から抜け出せなかった。
「N」の折りたたみ端末はかつての人気商品だったが、「いつの間にかださくなった」「ヒューマンインタフェースの改善が遅れた」(矢野社長)。停滞期の反省から、矢野社長は「とにかく薄くて小さく、使いやすい製品を作れ」と指示してきた。
こうした取り組みの成果として、説明会で矢野社長が手にとって見せたのは、厚さ11.4ミリの超薄型折り畳み端末「N703iμ/704iμ」や、イタリア人デザイナーを起用した「N904i」だ。
N703iμ/704iμでは、約690時間の待ち受け時間という「圧倒的な電池の持ち時間」を達成した技術力も自慢。またHSDPA端末のN904iはワイドVGA(480×854ピクセル)の液晶ディスプレイを採用。矢野社長は「(産業紙のレビューで)液晶の美しさはシャープに勝るとも劣らないと評価され、大変嬉しかった」と笑顔。「商品力の強化はできてきた。新しい『N』らしさを確立しつつある」と手応えを感じている。
黒字化を果たせなかった前年度だが、海外事業のリストラは完了し、下期には損益とんとんになるまでに回復していた。復調の勢いを逃さず、07年度は黒字化を必達目標として掲げる。矢野社長は「担当者は私の指示にきちんと応え、薄くて使いやすい端末ができた。たった1年でここまで来たのだから、これからもっとよくなる」と期待している。
PCやBIGLOBEなどを含むパーソナルソリューション事業は、黒字の定着が目標。固定費削減や生産技術の改善で体質強化を引き続き進める一方、「NECにしかできない、家電メーカーではできないもの」として、ホームサーバなど新しいコンセプトのコンシューマー向け製品を投入していく計画。製品は今秋にも登場する見込みだ。
NECが携帯端末やPCを続けるメリットについて、疑問視する声も市場の一部から定期的に出てくる。だが矢野社長は「普段は通信インフラなど、見えない部分をやっているNECのブランドと言えば、なんといってもPCと携帯電話。ブランド維持のためにも絶対にやめない」と明言。「そのためにも、利益が出るようにいい商品を作る」と気を引き締める。
モバイル/パーソナルソリューション事業の07年度(08年3月期)売上高は、前年度に欧州個人向けPC事業から撤退した影響で、8%減の8900億円を予想。営業利益は60億円の黒字に転換する見通しだ。
中期的にROE10%達成がターゲット
携帯端末とともに「双子の赤字」と呼ばれてきたエレクトロンデバイス(半導体)事業も、07年度は黒字転換が至上命題。IT/NWソリューション事業は、盛り上がってきたNGN(次世代ネットワーク)の波をとらえ、07年度はNGN構築事業の売上高を前年度(900億円)から倍増させるほか、安定収益を生み出すSI事業でさらに利益率の向上を目指す。
07年度の連結業績予想は、売上高が4兆7000億円(前年度比1%増)、営業利益が1300億円(600%増、対売上高比2.8%)、経常利益が800億円(637%増)、純利益が300億円(209%増)。経営指標のターゲットを営業利益率からROE(株主資本利益率)とし、中期的に10%を目指す。
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