Google、Microsoftを反面教師として欧州に歩み寄り?
人員の増大には慎重という方針を示していたGoogleが、欧州で何千人ものエンジニアを採用する計画を明らかにした。
米検索大手Googleが欧州で何千人ものエンジニアを採用する計画であることが、同社のトップエンジニアの口から明らかになったが、これは一部には、欧州連合(EU)に気に入られるための政治的な動きでもあるという。
これは、GoogleがMicrosoftのわだちを踏むことを避けたがっていると考える一部の専門家による見解だ。Microsoftは幾つかの行動から欧州の怒りを買い、国外のほかのソフトウェア製品との相互運用性の要件を満たさなかったとして、欧州委員会から6億1300万ドルの制裁金の支払いを命じられている。
Googleの欧州地域エンジニアリング部門の新しい責任者に就任したネルソン・マトス氏は9月26日、Financial Times紙に対し、欧州でのGoogleの事業を米国と同レベルまで強化するために、欧州でエンジニアを何千人か採用する意向を明らかにし、各方面に驚きをもたらした。
この発言は、7月に行われた第2四半期決算発表の電話会見で語られた同社のスタンスとは正反対の内容だ。その際には、Google幹部らは、人員の増大を注意深く見守っていく方針を示していた。どうやら、この方針は欧州には当てはまらなかったようだ。Googleは世界に7000人のエンジニアを抱えているが、欧州のエンジニアはそのうち500人にすぎない。Googleは現在1万3700人以上の従業員を擁している。
マトス氏はFinancial Times紙に対し、次のように語っている。「当社は欧州では正しく認識されていない。わたしの印象では、Googleは金もうけのために欧州にやってきた米国の大企業と受け止められているようだ」
またGoogleの広報担当者はeWEEKに対し、公式なコメントとして次のように述べている。「欧州でエンジニアの採用を増やす方針だ。欧州には、優秀な人材が溢れているからだ。そうした優秀なエンジニアに、グローバルなプロジェクトや欧州ユーザー向けのサービスの改善などに取り組んでもらうのを楽しみにしている」
だがあるアナリストによると、マトス氏の発言は、Googleがいかに欧州にすり寄りたがっているかを雄弁に物語っている。調査会社の米comScoreが10月1日に発表したデータによると、Googleのサイトは欧州では、フランスとドイツでインターネットユーザーの70%にまでリーチが拡大している。
「Googleは、単に欧州市場の独占を目論む攻撃的な米国企業とは受け止められたくないのだろう」と米Osterman Researchのアナリスト、マイケル・D・オスターマン氏はeWEEKに語っている。
同氏はMicrosoftが欧州市場で直面している問題点を指摘し、特に欧州裁判所がつい最近、同社に6億1300万ドルの制裁金を科すという2004年の欧州委員会の判断を支持する判決を下した点に言及している。
「GoogleはMicrosoftの難局に乗じ、欧州でもっと“信頼される企業”となることを目指しているのだろう。Microsoftはこれまでに幾つか大きな間違いを犯しており、Googleはそこから教訓を学んだのだろう」とオスターマン氏。
Googleに対しては、ユーザーの検索データを何カ月間も保存する方法をめぐり、しばしばプライバシーをめぐる懸念が指摘されていることを考えると、同氏が「信頼される企業」という言葉を選んだのは興味深いところだ。
英Ovum Researchのアナリスト、デビッド・ブラッドショー氏はeWEEKに対し、英国ではプライバシーをめぐる懸念はそれほど高まっていないと語っている。
「だが、フランスでは状況は全く異なる。フランスは海外企業の受け入れに非常に慎重だ。フランスでは“自国で開発されたのではない技術”に否定的な傾向が強い。ただし、最近ではそれも変わりつつある。とにかく、できる限り、地元の技術を使おうとする文化があるのは確かだ。だが、ドイツはまた事情が異なる。今のところ、ドイツはGoogleに対して非常に友好的で、ドイツでの売り上げは順調に増加している」と同氏。
おそらくプライバシーに関する評価が低いことを受けてだろうが、Googleは先月、プライバシー担当法務責任者のピーター・フライシャー氏をフランスのストラスブールに送り、アジア太平洋経済協力会議(APEC)のプライバシーポリシーの支持を表明している。
ブラッドショー氏などのアナリストはこの動きを高く評価している。ただし同氏は、「プライバシーに関しては、Googleは周囲の動きに対応するのではなく、先頭に立って取り組みをリードする必要がある」とも指摘している。
「欧州連合からの要請に先んじて行動することで、Googleは競合他社に不意打ちを食わせることができるだろう」とブラッドショー氏。
だが何千人ものプログラマーを採用することが、市場での同社のポジショニングにどう役立てられるかについては、ブラッドショー氏もオスターマン氏もよく分かっていない。
「欧州に雇用を拡大することが、この問題に直接どう影響することになるのかは分からない。ただし、Googleが欧州で地盤を確立し、人材を十分に雇うようになれば、Googleに対して法的措置を講じるのは難しくなるだろう。欧州での雇用を脅かすことになるからだ」とオスターマン氏。
またオスターマン氏は、Googleの欧州での採用拡大に関連してもう1つ、米国で外国の国民を採用することに伴う問題を指摘している。Microsoftは最近、ソフトウェア開発者の就労ビザの取得が難しいとの理由から、カナダのバンクーバーに設計センターを開設しているが、同氏によると、GoogleもMicrosoftのこうした動きに倣うつもりかもしれないという。
「欧州に採用を拡大すれば、ソフトウェア開発の人材確保が容易になり、開発を遅らせずに済むだろう。Googleには、メールのほか各種のアプリケーションやサービスなど、まだやりかけのことがたくさんある」とオスターマン氏。
Googleにまだやりかけのことが多いというのは決して大げさな話ではなく、おそらく、同社が欧州進出を検討する数々の理由のなかでも最大の要因といえるだろう。
現在Googleは携帯電話OSを開発中とも報じられており、もし同社がGoogleブランドの携帯電話の販売で既存の無線通信事業者と競争するつもりであるのなら、同社が欧州での地盤強化を望むのも当然だ。一般に、欧州の携帯電話ユーザーは新しい無線サービスの利用に積極的とされている。
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