「Google+AOL」は「Microsoft+Yahoo!」に対抗できるか
AOLの広告資産とGoogleとの関係を考えればあり得る話だが、専門家からは反対する意見も。
446億ドルを掛けたMicrosoftの米Yahoo!買収が実現した場合、インターネット業界の注目は、検索最大手Googleの反応に注がれるだろう。
この状況でGoogleがライバルMicrosoftからの挑戦を受けて立つつもりなら、AOLは最善の選択かもしれない。Googleは既に10億ドルで同社の5%を取得し、検索・広告関連の提携で素晴らしいシナジー効果を出している。
GoogleはAOLのために200億ドルを費やすことになるが、Googleには簡単に払える額であり、Yahoo!というもっと多くの技術資産を持つ企業に対してMicrosoftが払う額の半分以下だ。
Time Warnerは2月6日、AOLのインターネット接続事業をWebポータルおよび広告事業から切り離すと発表した。これでAOLはGoogleにとって一層魅力が増したといえるかもしれない。つまり、Googleは必要としないインターネット接続事業の買い手を探す心配をせずに済むわけだ。
AOLが2007年9月17日、ネット広告市場での競争力強化を狙って発表した「Platform A」戦略は、Google、Yahoo!、Microsoftのプラットフォームに比べると未熟だ。
このプラットフォームには、動画広告プラットフォームのLightningcast、第三者配信のAdvertising.com、コンテキスト広告を手掛けるQuigo Technologies、行動ターゲティング広告大手のTacoda、携帯電話広告を専門とするThird Screen Media、グローバル広告配信会社Adtechの資産が含まれる。
Advertising.comとAdtechの広告配信技術はGoogleと重複するかもしれない。Googleが31億ドルで広告配信会社のDoubleClickを買収する計画にはゴーサインが出る見通しだ。
しかしGoogleは、携帯電話、動画、コンテキスト、行動ターゲティング広告技術に関心を示しており、Platform Aのほかの資産は十分魅力的になる。
そして最も重要なのは、Googleはテキストベース広告は独占しているかもしれないが、ディスプレイ広告のシェアはたった1%だということだ。comScoreの統計によると、ディスプレイ広告市場でAOLのシェアは5%。MicrosoftがYahoo!を買収した場合、25%のシェアを握ることになる。Googleにとってはすぐにでもシェアを獲得できるなら、たとえ合計で市場の6%にすぎないとしても、プラスになる。
AOLの広告収入は過去数四半期で減り続けており、Googleの膨大な資金と技術リソースはメリットになるだろう。
問題は――これはAOLと並んで業績不振のYahoo!にも言えることだが――AOLがGoogleの求婚を受け入れるかどうかだ。
GoogleもAOLもこの質問に答えなかった。しかし業界の専門家は、業界再編の可能性に対し不安をのぞかせる。
「もしMicrosoftがYahoo!を買収すれば、Google、AOLなどを巻き込んだ新たな業界再編の引き金となる公算は大きい」。オープンソースの広告配信会社OpenAdsのCEOで、元Yahoo!幹部のジェイムズ・バイルフィールド氏はeWEEKにこう語った。
「しかし統合によって、さまざまなネットワークの中から選択する自由を欲し、OpenAdsが提供しているような柔軟性とイノベーションの道が開けることを望んでいるパブリッシャーの不安は増すばかりだ」
そのような合併話に異議を唱えるのはバイルフィールド氏だけではないが、反対理由はほかにもある。今から20年後には、ネット広告事業は知的財産で大きな差がつくだろうと話すのは、IDCのアナリスト、カーステン・ワイデ氏。Time WarnerはAOLの魅力的な広告資産を手放さない方が賢明だと指摘する。
「経験、技術、広告主との間で確立されたデジタル広告契約を持つAOLのような資産があれば、どんな企業でも膨大な利益を出せるだけの好位置に立てる」とワイデ氏は話している。
関連記事
- 特集:Microsoft、Yahoo!買収に乗り出す
- Time Warner、AOLを分離へ
Time WarnerはAOLのネットサービス事業とポータル・広告事業を分離して独立させる。(ロイター)
Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.