“iPodっぽい”クールさも 米Amazonの電子書籍端末「Kindle」を触ってきた:Display 2008
米Amazon.comが発売し、人気で品薄になった電子書籍端末「Kindle」が、Display 2008会場に“来日”。手になじむボディや使いやすくてかっこいいUIは、iPodを思い起こさせる。
電子書籍端末といえば、日本では2003年ごろからソニーや松下電器産業などが商品化してきたが、軒並み苦戦が続いている。その一方で好調に売れているのが米Amazon.comが昨年発売した「Kindle」だ。
KindleはE Inkの電子ペーパーを採用した米国向けの電子書籍端末。9万冊以上の書籍、雑誌、新聞などを、EV-DOネットワーク経由で直接ダウンロード可能なのが特徴だ。価格は339ドルで、昨年11月に発売されると5時間半で売り切れた。その後も品薄状態が続き、「ここまでの需要は予期していなかった」とジェフ・ベゾスCEO名で謝罪文を発表したほどだ。
そんな大人気端末が、4月18日まで開かれていた「Display 2008 フラットパネルディスプレイ展」のE Inkブースに“来日”したので触ってみた。手になじんで使いやすく、細かいユーザーインタフェースや専用の箱がなかなかかっこいい。Windowsユーザーの記者が、iPodやMacintoshに初めて触ったときのような印象を受けた。
Kindleは一見、ソニーが2004年に発売した電子書籍端末「LIBRIe」に似ている。ディスプレイ部はLIBRIeとほぼ同じで、6インチ・600×800ピクセル(167ppi)のE Ink電子ペーパーを使っている。LIBRIeと同様、細かい文字やイラストも鮮明に再現でき、目もあまり疲れない。画面遷移もストレスのない速さだ。
サイズは13.46(幅)×19.05(高さ)×1.78(厚さ)センチ、重さは292グラム。A5サイズよりやや小さく、新書程度の厚さだ。左手で持つことを前提に作られているのか、左のほうが厚く、右に行くほど薄くなっていく。左側はLIBRIeよりも分厚いが、ちょうどよい厚さで手によくなじむ。
ユーザーインタフェース(UI)は直感的で使いやすい。本体の右端と左端に、「次ページに進む」「前ページに戻る」用の大きなスイッチをそれぞれ装備。右端では「次」ボタンが上、「前」ボタンが下に、左端はその逆に配置してあり、片手でも手触りだけで簡単に操作できる。
UIの細かい作り込みもニクい。ディスプレイのすぐ右側(ディスプレイとページめくりスイッチの間)には細いバーがあり、バーの中に小さな銀色のドットが見える。バーの下部にあるホイールを回すと銀色のドットが上下に動き、ディスプレイ上に表示されたメニューをホイールで選ぶことができる。メニューを選んだ後画面遷移を待つ間、黒い点が線のように伸びたりして動き、なかなかかっこいい。
記者はLIBRIeも触ったことがあるが、平べったくて手にあまりなじまず、「何となく持ちにくいなぁ」と感じていた。LIBRIeの3年後に登場したKindleは、技術や大まかなデザインはLIBRIeとそれほど変わらず、むしろLIBRIeのデザインをかなり参考にしたようにも見えるが、使いやすさや遊び心のあるUIに凝った様子がうかがえ、iPodなどApple製品を思い起こさせた。
E Inkの説明員によると、E Ink電子ペーパーを搭載した電子書籍端末が最も良く売れているのは米国。2006年に発売されたソニーの「Sony Reader」も10万台以上売れたという。韓国では、PCに接続し、朝鮮日報をダウンロードできる端末を、朝鮮日報自らが発売。欧州でもネットワークに対応した端末を最近発売したという。
日本では、電子書籍のハードは4年ほど前から販売されているが、なかなか普及しない。「取り次ぎが絡む複雑な流通体系もあり、日本の出版社などが電子書籍向けにコンテンツを開放しないせいではないか」とE Inkの説明員は話していた。
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