JASRAC音楽著作権使用料、2年ぶり増収 ダウンロード配信2倍に
JASRACの音楽著作権使用料が2年ぶりの増収。ネット配信や放送からの収入が増えたが、CDや私的録音録画補償金からの収入は減っている。
JASRAC(日本音楽著作権協会)が5月14日に発表した2007年度(07年4月〜08年3月)音楽著作権使用料徴収額は、1156億7055万円(前年度比4.1%増)で、2年ぶりの増収となった。ネット配信や放送からの収入が増えたが、CDや私的録音録画補償金からの収入は減った。
ネット配信(インタラクティブ配信)からの収入は8.8%増の84億7398万円で、全使用料収入に占めるシェアは7.2%。中でも大きく伸びたのがダウンロード型で、2.2倍・31億1135万円となった。着信メロディからの収入は4割以上減った。
使用料収入のうち最大のシェア(全体の23.0%)を占める放送からの収入は、265億5915万円と4.1%増だった。
有線放送からの収入が3.6倍、64億4831万円に急増し、全体の増収に貢献した。CATV事業者との訴訟の解決に伴い、CATVから過年度使用料が入ったことが寄与した。
CDなど音楽ディスクからの収入は10.7%減の216億4598万円。私的録音補償金は22%減の3億442万円、録画補償金は20.2%減の2億460万円だった。
信託契約者数は1万4503件と、前年度より13件減った。01年以来、年間500件のペースで伸び続けていたが、初めて減少した。年度中に新規に信託契約者した数は520件あったが、契約切れの数が上回った。
「保護期間、延長しないと日本が著作権ヘイブンになる」
JASRACの都倉俊一理事は同日の定例会見で、JASRACが今取り組んでいる課題として(1)芸術と技術の共存、(2)著作権保護期間の延長、(3)戦時加算問題――を挙げ、文化を大切にする「Culture First」を改めて訴えた。
芸術と技術の関係については「デジタル技術は諸刃の剣。芸術と技術は共存しなくてはならない。優れた技術でも著作権を侵す可能性があれば、開発者は社会規範を認識した上で発展させることが大切」などとコメントした。
著作権保護期間については、「早急に、著作者の死後50年から70年に延長すべき」という立場を改めて説明。「ネット配信が進み、国境がなくなる時代。日本だけ20年のギャップが残っていると、『海外では保護期間中の楽曲が、日本でダウンロードしたら全部タダという“著作権ヘイブン”になり得る。知財立国を標榜する国として恥ずかしい」と話した。
太平洋戦争敗戦時に、連合国の著作物について、保護期間に戦争期間の10年を加算することを義務づけられた「戦時加算」については、撤廃を求めていく。海外の著作権保護団体とは撤廃で合意したといい「実際の実施は、保護期間の延長を見ながら決まる」としている。
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