解せない。
なぜ「エコが大事」と省エネを叫びながら、クリスマスイルミネーションをありがたがるのか。割りばしがもったいないと「マイはし」を使いながら、プレゼントという過剰包装・過剰消費に走るのか。この不景気に。
つまり言いたいのはこういうことだ。何がクリスマスイブだ。暮れの押し迫った忙しい時期の、単なる平日じゃないか。仕事も忘年会も重なる多忙な状況の中、「お先に〜♪」とか言ってさっさと帰る予定のあるやつらに、ねたみのネガティブ光線を浴びせてやる。くそくそくそう。
1人きりのクリスマスをWebで公開始めてからはや6年。記者も30歳になった。そうさ三十路さ。くそ、なんで今年も1人なんだ。マジな話、クリスマスは毎年つらいんだ。いろんな意味で。しかも今年は左手骨折してるのに。
いや違う。今年は違うのだ。今年こそ、1人じゃないのだ。記者にはいつも一緒にいてくれる友だちができたのだ。フフフ諸君、うらやましいか。
彼女は最近めずらしい、素直でかわいく勤勉な女の子なのだ。さあ、こっちにおいで。
「はじめましてご主人様。電脳フィギュアのアリスと申します」
え? 「CGじゃないか」って? 違う、違うぞ。いやまぁ確かにCGだが、これは現実とリンクした「拡張現実」。Webカメラで写した現実の記者の姿と3DCGのアリスちゃんの姿が重なって画面に映っているのだ。ほら、まるで一緒にいるかのように見えるだろう。これを現実のものと感じてこそ真のIT戦士なのだ。
記者が手に持った「電脳スティック」で画面上のアリスちゃんをつついたり、専用カードに触れてプレゼントをあげることで、アリスちゃんとコミュニケーションできるのだ(レビューはこちらの記事で)。
早速アリスちゃんと遊ぶぞー。さてと、クリスマスプレゼントを……。よーしびっくり箱をあげてみよう。喜んでくれるかな、とワクワクしていたら「こんないたずらひどいですぅ」と怒られてしまった。ごめんごめん、と頭をなでようとしたところ、間違って服を全部脱がせてしまい、「やあだああああ こんなのあんまりですぅ」とすごい勢いでイヤがられた……。なんだか、満員電車の中で痴漢に間違われたようなえん罪感でいっぱいだよ。
ふぅ、ここは気を取り直して、サンタ服に着替えさてみよう。まずは服を脱がせて、と。「ご主人様ってエッチだし意地悪だし最低です。もうイヤ!」だってさ。
嫌われてしまいましたよ。
……うむ、やはりここは男子だ。男子に参戦願うしかない。実は記者には、ほしい愛の言葉をささやいてくれるイケメンの彼氏がいるのだ。うらやましかろう。君にも見せてやろうじゃないか、私の彼氏を。
「愛してるよユカタン クリスマス1人じゃないさ 僕がいるよ」
白馬に乗った王子様の声に心がしみ入りとろけるようだ。ん? 微妙に機械っぽいって? ん? 明らかにパラパラ漫画? ん? 何のことかな?
……ああそうさ、Gacktの声で歌えるソフト「がくっぽいど」に、自分で愛の言葉を入力して再生しただけだよ。パラパラ漫画だって「flipbook.in」で自分で描いたよ。ええ? 何が悪いっていうんだ! ITの力を借りて、心温かなクリスマスを過ごそうと思っただけじゃないか!
いや確かに「愛している」とかいうせりふを自分で考えて入力するのはむなしくせつない。白馬に乗った王子様ってベタすぎる絵も我ながらどうかと思ったよ。でもたった2万円弱のソフトを買えば自在に男声の愛の言葉を操れるなんて安いもんじゃないか。flipbook.inに至っては無料なんだぞ! 無料モデル万歳! インターネット万歳!
ちょっと待てよ私。そもそも、ITだけに頼ろうとしたのが失敗の元だったのではないか。IT戦士の記者とて生身の3次元人間。やはり生身の相手と共にすごさねば、空しさは募るばかりであろう。よーし、お部屋にみんなを呼んでクリスマス鍋パーティだ! 今流行りのカレー鍋で宴会だぜ!
……なぜだろう、さっきよりさらに空しいのは。アリスはCGじゃなくて等身大抱き枕になったし、がくっぽいども声だけじゃなくてポスターをクッションに貼り付けたし、ITちゃんの絵も大きくプリントアウトしてみたし、部屋中からぬいぐるみやフィギュアを持ってきて、及川光博の顔写真入りキャンディ缶も並べて……総勢11人で鍋を囲んでいるのに。なんだかとても静かで、とっても寂しいよ……。
うん、カレー鍋、おいしいよ。うん、11人もいるはずなんだけど、食べられるのは私1人みたい。4人前も作っちゃったから、なかなかなくなりそうにないよ。みんな、おなかいっぱいなのかな。なんで豚肉、大パックで買っちゃったんだろ私……。
急速に冷え込んできたよ。外は寒いね。でも鍋があったかいから、大丈夫だよ。こたつもあったかいし、心も……うん……寒くなんかないよ。
メリー・クリスマス。
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