著作者検索ポータル、権利者団体が開設 保護期間延長は「金の問題ではない」
著作者を検索できるポータルサイトを権利者団体が開設した。著作権保護期間延長は引き続き強く求めていく方針。「金ではなくプライドの問題」という。
日本レコード協会や日本文芸家協会など17団体で構成する「著作権問題を考える創作者団体協議会」は1月23日、権利者団体に所属する著作者を氏名で検索できるポータルサイトを開設した。7団体・計約11万人の所属団体が分かる。
検索できるのは、日本文芸家協会(3357人)、日本脚本家連盟(2250人)、日本シナリオ作家協会(789人)、日本美術家連盟(5967人)、日本写真著作権協会(8119人)、日本漫画家協会(488人)、日本音楽著作権協会(JASRAC、9万443人)に所属・登録している計11万1413人。氏名で検索すると、所属している権利者団体と、団体拠点の住所、Webサイトへのリンクなどを確認できる。
連絡先が不明な権利者について情報交換する掲示板「尋ね人Web」も設置した。アクセスにはIDとパスワード必要で、現在は協議会に参加している権利者団体のみ利用できる。権利者の個人情報が流出したり、掲示板が荒れてしまうことを防ぐための措置で、まずは半年ほどテストして実効性を確かめ、オープンな掲示板への移行を検討する。
サイトには、協議会の活動報告や、著作権保護期間延長を求める提言なども掲載した。
予算300万円、当初計画より後退
同協議会は2006年、著作権保護期間の50年から70年への延長を目的に設立し、文化庁などに働きかけてきた。ポータルサイトは「保護期間が延長されれば使用許諾が必要な作品が20年分増え、2次利用が行いにくくなる」という問題への解決策として、07年8月に開設を発表していた。
発表時は権利者の氏名や連絡先、生年月日、著作物の作品名などを網羅したデータベースにすると説明していたが、完成したポータルで検索できるのは、一部の権利者の所属団体のみにどとまった。
「07年に発表した際の計画より後退しているのでは」という指摘に対し、協議会メンバーの瀬尾太一さん(日本写真著作権協会常務理事)は「おっしゃる通り」とこれを認める。「今回はまず、こういうことができるという可能性を提案した段階」(協議会議長で、日本文芸家協会の三田誠広さん)
背景には、権利者団体によってポータルサイトへの考え方が分かれ、議論がなかなかまとまらなかったり、所属権利者のデータを整備できていない団体があったり、「音楽関連の作家は99%団体に所属しているが、文芸は100%にはほど遠い」(瀬尾さん)など権利者団体に所属していない権利者が多い――といった事情があるという。
「07年当時は楽観視していた。保護期間延長はすぐに決まり、システムの予算ももっと取れるだろうと考えていた」と三田さんは振り返る。サイト構築費用は300万円。協議会の全団体が拠出した。
瀬尾さんは「多くの権利者団体が集まり『今後は権利者自らが情報を発信して流通に乗りだそう』と確認したことは成果だった」と強調。今後は、日本経団連が中心となって構築したコンテンツ情報ポータル「ジャパン・コンテンツ・ショーケース」などほかの権利者データベースと連携して利便性を高める考えだ。
連絡先が不明な権利者の著作物を利用するための裁定制度の簡易化が文化庁などで検討されている。尋ね人Webは、簡易化した裁定制度の運用開始後、裁定制度と連携する計画だ。
保護期間延長は「プライドの問題」
著作権の保護期間の延長については、文化審議会著作権分科会の「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」で議論が行われてきたが、1月の会期末までに結論は得られなかった。
協議会は今後も、著作権保護期間の延長を訴えていく方針。三田さんは「延長しても利益が出る著作物は限られている。金銭的な利益のために保護期間の延長を求めているのではない、プライドの問題だ」と主張する。
「欧米では70年に延長されているのに日本だけ50年で切れている。アルベール・カミュやアーネスト・ヘミングウェイ、谷崎潤一郎、江戸川乱歩がもうすぐ死後50年を迎えるが、カミュやヘミングウェイの著作権保護期間はあと20年残り、谷崎や乱歩は切れる。谷崎や乱歩が、カミュやヘミングウェイに劣るとは思っていない。日本だけ保護期間が短いのは、創作者としてたいへん残念だ」
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