腐女子論から「ゼロ年代のモテ技術」まで――「アフタヌーン新書」創刊
「漫画の現場から発想した新書があってもいいじゃない」――講談社の月刊誌「アフタヌーン」が新書を創刊する。
新書市場には2000年前後から新規参入が相次ぎ、新書バブルは崩壊寸前ともいわれている。そんな中、講談社の月刊漫画誌「アフタヌーン」編集部が4月10日、新たな新書レーベル「アフタヌーン新書」を創刊する。
「新書市場のマーケティング? まったくしていません!」「統一した編集方針もありません!」――アフタヌーン編集部の井上威朗さんは、そう力強く言い切る。
第1弾のタイトルを見てみると――カリスマナンパ師直伝のモテテクニックを伝授する「ヤリチン専門学校 〜ゼロ年代のモテ技術〜」(尾谷幸憲著)、腐女子の恋愛傾向を明かす「なぜ、腐女子は男尊女卑なのか? オタクの恋愛とセックス事情」(腐女子シンジケート著)、現代批評「がっかり力」(本田透著)、Webサイト「僕の見た秩序。」をまとめた「僕秩プレミアム!」(ヨシナガ著)と、中身はてんでバラバラだ。
売れる本をマーケティングしたり、統一した編集方針を打ち出すのではなく、「面白いと思ったものを出す」のがアフタヌーン流という。
アフタヌーンは1986年、「モーニング」の兄弟誌として創刊。「作家が面白いと思うものに、編集者がどこまで付き合えるか」をテーマに新しいものを追い求め、モーニングにはできないジャンルに挑戦してきた結果、「ああっ女神さまっ」「寄生獣」などヒット作を連発。漫画雑誌不況とされる中、発行部数12万部を堅持し、好調を維持している。
アフタヌーン新書は、アフタヌーンの実験的精神を新書に拡大。講談社の「現代新書」や「+α新書」の編集部では「すぐに没になる」ような、時流に乗った内容や、読みやすい軽い内容、Webサイトをまとめたものなど新分野に挑戦する。
「これまで、活字の本と漫画は別物という考え方があったと思うが、漫画やアニメの現場から発想した本があってもいいのでは。漫画の次に読む新書、というポジションを確立し、現代新書やプラスα新書につなげていければ」
4月に発売する4冊のうち3冊は、2006年に創刊し、08年に休刊したオタク雑誌「メカビ」(メカと美少女)に登場していた筆者のものだ。メカビの編集に参加していた井上さんと、編集長だった松下友一さんがアフタヌーン編集部に異動してきたことで、企画が実現した。
アフタヌーンの人脈を生かし、漫画やアニメの現場からの声も発信する。6月には「ああっ女神さまっ」などで知られる漫画家の藤島康介さんが漫画の手法を明かす新書を発売する予定。あかほりさとるさんが栄光と転落の軌跡を語り尽くすという「オタク成金」も5月に予定している。「漫画評論などで語られる言説にはうそも多い。現場の声を伝えていきたい」
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