月間売り上げ10万円だが……添削SNS「Lang-8」で世界を狙う25歳社長(2/2 ページ)
世界のユーザー同士で母語を教え合うSNS「Lang-8」は目下ビジネスモデルを模索中。1カ月の売り上げで経費の9%しかまかなえないという大赤字だが、25歳の社長は「目標は世界」と熱く語る。
土日もユーザー対応などに追われ、ほとんど休みなしだ。京都大学に通っていた学生時代から住み続けているという家賃2万4000円の愛着あるアパートには、仕事が終わってから遅くに帰って寝るだけ。自宅の1カ月の電気代が300円だった時もあるというからよっぽど忙しいのだろう。
「自分もできると勘違いして」起業 「感動だけが根拠」
喜社長は中国出身だ。4歳から日本で暮らしており、中国語をうまく話せなかっため、京大を休学して上海に留学した。現地では、中国語の日記を書き、中国人の友人に添削してもらって勉強した。最初は3行しか書けなかったが、徐々に上達し、B5ノートのページにびっしりと書けるようになったという。
「添削内容を復習すると、スっと頭に入ってくる。ただ教科書の例文を読むのとは違う」――文章の添削で語学力をつけた自分の体験から、Lang-8のアイデアを思いついた。ネットには詳しくなかったが、「mixiみたいな場所で、ユーザーが文章を添削し合えたら」と考えた。留学を終えて京大に戻った時、同級生の松本一輝さん(現・同社CTO)にサイトを構築してもらった。
そのころ、起業したいという夢も芽生え始めていた。ビジネスコンテストに参加してネットベンチャーの社長に会ううちに、「自分もやればできるんじゃないかと勘違いした」。Lang-8のビジネスモデルは「全く考えていなかった」が、「とにかくまず動いてみよう」と決心。ビジネスコンテストの賞金や貯金などからかき集めた300万円を元手にランゲートを2007年に設立した。
1人での起業は「最初は不安になるときもあったが、文章の添削で語学力がついた“感動体験”を思い出すと、これはいけるという気持ちになった。感動だけが根拠」と言い切る。
今は頼りになるパートナーもいる。Lang-8を構築した松本さんが、京大卒業後に就職した国土交通省を辞め、ランゲートのCTOとして戻ってきてくれたのだ。国土交通省を辞めたと聞いたときは「さすがにびっくりしました」と笑う。
月の売り上げ10万円でも目指すは「世界」
Lang-8の収益は、プレミアム会員の会費と、サイトに掲載したAdSense広告から得ている。ユーザーから寄付も受け付けている。だが1カ月の売り上げは10万円ほどで、経費の9%しかカバーできていない。サイト上部には、黒字化達成に必要なプレミアム会員数を掲載しており、11月18日現在ではあと1812人足りない。
現在は、個人の投資家から調達した資金を「食いつぶしている」状態。資金繰りに悩むのは「辛いけど慣れた」し、「忙しくて不安を感じている場合じゃない」
こんな状態を打破するため、まずはプレミアム機能を充実し、有料会員を増やす計画。新しいビジネスモデルも考えているという。どのような戦略か気になって聞いてみたが、今は「秘密」とはぐらかされてしまった。
喜社長の目標は、Lang-8を「世界中でスタンダートに使われるサービス」に育てることだ。オフィスは京都市にあるが、「お金がなんとかできれば」東京に進出したいと考えている。
「東京には情報が集まっているので。ただ2万4000円のアパートは東京にないだろうなぁ」
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