金星探査機「あかつき」と宇宙ヨット実証機「IKAROS」を見てきた
打ち上げを控えた金星探査機「あかつき」と宇宙ヨット「IKAROS」をJAXA・相模原キャンパスで見てきた。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は5月、金星探査機「あかつき」と宇宙ヨットの実証機「IKAROS」(イカロス)を打ち上げる。JAXA相模原キャンパスで打ち上げを待つ2機が3月12日、報道機関に公開された。
あかつきは、金星の大気の動きを調査する世界初の金星気象衛星。金星周回軌道に投入し、約2年かけて金星の大気の動きや雲の形成過程などを観測する。地球と比較することで、地球環境や気象の研究に役立てることも狙いだ。
打ち上げ予定日は5月18日。種子島宇宙センターからH-IIAロケット17号機で打ち上げる。当初予定していたM-Vロケットより打ち上げ能力が高いため、イカロスなど5つの小型副衛星も相乗りすることになった。
イカロスは、光を反射する薄い膜「ソーラーセイル」を張り、太陽光(光子)を受けて進む“宇宙ヨット”だ。SFでは「太陽風」による宇宙ヨットがおなじみだったが、実際には太陽風(陽子)は光による圧力の1%に満たない力にしかならないのだという。イカロスは、太陽光さえあれば燃料なしでも航行できること証明するため、宇宙に帆を掲げて半年かけて金星に近づく計画だ。
本体は1.6(直径)×0.8(高さ)メートルの缶詰のような形。これに一辺14メートルの正方形の帆を本体に巻き付けた形で打ち上げ、回転する本体の遠心力で帆を展開する。帆は厚さ7.5μメートルの膜。放射線に強いというポリイミド樹脂にアルミを蒸着させたものだ。
膜面には薄膜太陽電池も搭載する。ソーラーセイルに太陽電池発電を組み合わせるのは日本独自のコンセプトだという。将来は高性能イオンエンジンを搭載、発電した電力で動かし、セイルとエンジンの2つの方法で推進力を得る“ハイブリッド推進”を目指す。
今回は、帆だけで宇宙空間を進めることと薄膜太陽電池で発電ができることを実証するために打ち上げる。
この2機は今、JAXAの相模原キャンパス・飛翔体環境試験棟にある。専用のつなぎを着て帽子とマスクをかぶり、左右から風が吹き出すクリーンルームを通って部屋に入ると、2機は台に乗り、並べて置かれていた。
あかつきの表面には、太陽の熱を防ぎ、衛星内部の熱を逃がす金色のシートが張られていた。JAXAが募集し、初音ミクのイラストなどが話題になったあかつきに乗せて宇宙へ送るメッセージを印刷したアルミボードは外されている。種子島宇宙センターに運ばれてから取り付けるという。
イカロスは2枚の円板に挟まれた本体に膜が巻き付けられた姿で、大きな糸巻きのようだ。片側の円形パネルには太陽電池を搭載し、測定機器や通信用の電力をまかなう。
パネルの下にはカメラを5台搭載し、膜が開く様子などを記録する。そのうち1台は膜を開くタイミングで機体から外れ、離れながらイカロスが開く様子や全体像を撮影する。
現在は2機ともに最終調整中。3月中には種子島宇宙センターに運ばれる予定だ。JAXAは打ち上げを前に、ミッションの解説やユーザーから寄せられた応援メッセージを掲載する特設サイトをオープン。打ち上げまでの残り日数をバナーでカウントダウンしている。
イカロスもあかつきと同じく宇宙に飛ばすメッセージを募集中。団体からの応募のみ3月22日まで受け付けている。
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