バーチャルリアリティ(VR)や3D関連製品を集めた展示会「3D&バーチャルリアリティ展」(東京ビッグサイト、6月23〜25日)では、視野角140度のウェアラブルディスプレイを使って、高層ビルに昇る感覚を味わえる展示や、カードを使って対戦ゲームを楽しめる展示など、VRや拡張現実(AR)を体験できるデモが出展されている。
高層ビルの恐怖を味えるクレッセントブース
画像処理ソフトの輸入などを行うクレッセント(東京都中央区)のブースでは、エレベーターを使って高層ビルに登り、高層階から野外に伸びた細い板の先にいる犬を助ける、というVR体験ができる。
ブースにはいすが1つと、飛び込み台のような板が置かれている。いすの後ろから伸びた板は地面に直接置かれており、板の端にはマーカーの付いた犬の人形がある。
VR体験者は、頭をすっぽりと覆うウェアラブルディスプレイをかぶり、マーカーを手足に付けて仮想現実を体験する。手足に付けたマーカーをブースの上部に設置された8つのカメラで検知。実際の動きを仮想空間に反映する。
ヘッドマウントディスプレイの視野角は水平140度、垂直90度で、左右に2つ付いたディスプレイの解像度は左右ともにフルHD(1920×1080ピクセル)だ。「高所恐怖症の人などは、高層ビルの迫力にひざが震えるケースもあるなど強い没入観を実現できる」としている。
記者も体験してみる。ウェアラブルディスプレイをかぶると、そこはエレベーターの中。3Dアニメ風の映像はそこまでリアルではないが、エレベーターが登り始めると、不思議と上昇する感覚を味わった。
エレベーターが目的階につき、ドアが開くと足元には別の高層ビルの屋上が複数見える。高い。エレベーターのドアからは1本の飛び込み台のような板が伸びており、その先に犬がいた。
記者のミッションは犬を助けることだが、どうにも足を踏み出せない。高さが怖い。踏み出したもののバランスが取れずに体がグラグラと揺れる。一歩踏み出せば手に取れる位置まで来たが、下に落ちそうで怖くなり、最後の一歩が踏み出せずにしゃがんで手を伸ばし、犬をつかんだ。
新しく建造するマンションの内装や新しい車のデザインなどをユーザーに見せ、フィードバックを得るといった用途を想定して開発したという。「モックなどを用意する必要がなく、早い段階でユーザーにデザインを確認してもらえる。その分、ユーザーのフィードバックを製品に生かしやすくなる」という。
「手に発汗センサーを付けて恐怖度を測る、といった心理学の研究などにも使われている」という。
カード対戦のARゲームに、髪の毛を切る感覚を味わえる「Air-Hair」
ARコンテンツの開発・輸入を行うNTI(東京都千代田区)は、カードを使って対戦できるARゲームを展示していた。Webカメラに向けてキャラクターカードをかざすと、かざしたカードに描かれたキャラクターが登場。カードを動かすことでほかのキャラクターと対戦できる。
白黒のマーカーがなくてもカードをトラッキングできるマーカーレストラッキング技術を採用。1度画像を認識すれば、カードを追尾する機能も搭載し、画像が3分の2程度隠れてもキャラクターを表示し続けるという。
東京工業大学のロボット技術研究会は、人の髪の毛を切る感覚を味わえる「Air-Hair」というシステムを展示していた。
鏡を模したディスプレイの前に、髪の生えていないマネキンが置かれている。ロングヘアなどいくつかの髪型から1つ選ぶと画面に映るマネキンの髪型が変化。専用のはさみをマネキンの頭に近づけて切るように動かすと、ディスプレイに映るマネキンの髪が切れ、髪の毛を切ったような感触が手に伝わる。
マネキンの上部にWiiリモコンを2つ設置。はさみに付けたLEDをセンサをリモコンで捕捉し、位置を特定する。髪を切った感触は、はさみの支点についたモーターで再現する。
VR技術を使った学生向けコンテスト用に制作した。「物を切る感覚は快感なのではないかという話になり、普段自分で切ることの少ない髪の毛をモチーフにした。子どもの職業体験などにも使えると思う」としている。
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