スマートフォン投入遅れは「戦略ミス」 KDDI小野寺社長、最後の決算会見
12月に退任予定のKDDI小野寺社長が最後の決算会見。スマートフォンの投入遅れは「戦略ミスだった」と率直に認め、今後の戦略を語った。
「本日の決算発表をもちまして、わたしの会見は終わりとなります」――12月に社長を退任し、会長に就任予定のKDDIの小野寺正社長は、10月22日に開いた4〜9月期の決算発表をこう切り出した。スマートフォンの投入遅れを「戦略ミスだったことは間違いない」と率直に認め、後任の田中孝司専務に巻き返しを託す。
4〜9月期は、売上高に当たる営業収益が前年同期比0.3%減の1兆7184億円、営業利益が1.2%減の2479億円、経常利益が3.1%減の2340億円、純利益が5.7%減の1370億円。au携帯電話で音声ARPU(加入者1人当たりの売上高)の減少を、データARPUの増収で補い切れなかったことなどが減益につながった。
スマートフォン投入遅れで「他社への流出が起きた」
同社がスマートフォンを本格的に投入したのは今年秋冬モデルから。「どういうタイミングでどう投入するかは、だいぶ前から検討していたが、力の入れ方がフィーチャーフォン(従来型携帯電話)に偏っていたため遅れた」と小野寺社長は認める。
スマートフォン戦略では、最初から“1台持ち”を強く意識。FeliCaやワンセグ、赤外線など、フィーチャーフォンなら必須の日本独自の機能を搭載した上で出すことにこだわった結果、投入が遅れたと反省。「(日本独自機能を搭載しない)グローバルモデルなら、もう少し早く出せただろうが」
その結果、「他社への流出が起き、純増シェアが悪い状況になっている。ソフトバンクが(純増シェアを)稼いでいるのは事実で、否定できない」。データARPUの伸びも小さく、「スマートフォンの影響は間違いないと思う」。
スマートフォン巻き返し、「魅力あるアプリ」で差別化
今年秋冬モデルでは、1台持ちにこだわったハイエンド端末「REGZA Phone IS04」や、グローバルモデル「SIRIUSα IS06」などAndroidスマートフォン3機種を投入。来年度は新機種の半数以上をスマートフォンにするなど、一気に巻き返しを図る構えだ。「他社への流出を止めるだけでなく、他社から奪い取りたい」
キャリア各社はこぞってスマートフォンに力を入れている。特にグローバルモデルの場合、「まったく同じような端末が他社から発売されることになり、競争力の確保が難しい状況になるだろう」とみる。そんな中、同社の差別化要素は、「魅力あるアプリ」。「魅力あるアプリを探しだし、他社に先行して入れていくことが競争力になる」
Skypeとの提携も発表。「他社のスマートフォンでSkypeを使っているユーザーもいるが、3G回線でSkypeを使うとレイテンシが悪い。回線交換で品質を高めたのは大きな競争要素」と期待する。新機種には独自のアプリ「jibe」(ジャイブ)も搭載、他社端末と差別化する。
独自のAndroidアプリマーケット「au oneマーケット」の使い勝手も追求していくほか、電子書籍端末など機能を絞った端末も投入。「通信トラフィックでの売り上げ増を大きく望むのが難しくなっている」中、コンテンツプラットフォームからの売り上げ増に期待する。
今後はさらに多様な端末がネットにつながっていくと展望。同社も携帯だけでなくタブレット型端末を投入したり、Android搭載セットトップボックスの開発も進めている。モバイルWi-Fiルータなど、各端末を多彩なネットワークに対応させる製品も展開。KDDIグループの固定・移動の通信インフラをさらに融合させ、「どこでも使える、どこでも速い」サービスを作っていきたいという。
この10年で「これほどまでに変わると思わなかった」
2000年にKDDIが発足してから10年。「この10年で、いい意味でも悪い意味でも、これほどまでに変わると思わなかった。10年間やってきて、それなりの形ができたのではないか」と小野寺社長は振り返る。
やり残したことについては、、「田中新社長が新しい視点でやってくれると思っている」とバトンを渡した。
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