年内1000万ユーザー獲得へ 「実名×クローズド」に賭けるDeNA「comm」の勝算(2/2 ページ)
DeNAの無料通話無料通話・メッセージアプリ「comm」が、開発陣も驚くペースで成長している。目標は大幅に前倒し、年内1000万ユーザーを目指す。
「テストマーケティングのつもり」がユーザー急増
アプリを公開したのは10月23日。「テストマーケティングのつもりで、ユーザーの声を聞きながら徐々に品質改善する予定だった」が、出してすぐ、App Store無料総合ランキング4位にランクイン。「これは行けるかもしれない」とMobageからの誘導も行い、初日に無料総合1位を獲得。Google Playでも10月31日に1位となった。
当初は来年中ごろまでに1000万ユーザーを目指す計画だったが大幅に前倒し、年内1000万ユーザーに目標を再設定。急遽テレビCMを投入するなどプロモーションも前倒しで行い、ユーザー拡大を加速している。現在のユーザー数は非公開だが、すでに100万を突破。10〜20代の若年層を中心に幅広く利用されており、ほとんどが日本のユーザーという。
1人でスタートしたcommの企画・開発は、リリース直前に40人のチームになり、翌週には70人に増員。社内からも大きな期待が寄せられているという。「DeNAはMobageの会社と見られがちだが、経営理念は『世界を切り拓く永久ベンチャー』。新しく分かりやすい価値を生み出せそうだと、社内でも応援してもらっている」と、山敷さんは話す。
規約は「拡大解釈できる内容で申し訳ない」
リリース直後から大きな注目を浴びる裏で、批判も巻き起こった。commの規約に、ユーザー同士のやりとりの内容を同社が利用したり、第三者に提供するように文面上受け取れる条項があったことが公開当日、ネットユーザーに指摘され、翌日同社は、規約の文言を修正した。
「commを健全なサービスとして成長させるため、幅広い許諾を与えてもらうような書き方にしていたが、拡大解釈が可能な内容になっていた。誤解を与えてしまって申し訳ない」と山敷さん。プライバシー管理について説明するWebページも公開し、説明に力を入れている。
commの利用規約には「真実でないもの」や「異性交際を求めるもの」をcomm内のやりとりで禁止するという文言もあり、「commで嘘をついたり冗談も言えないのでは」「commで告白できないのでは」といった声もある。同社の説明では、「真実でないもの」を規制したのは偽名や詐称防止のため、異性交際を求めるものを禁止したのは、異性との出会いを目的とした、いわゆる“出会い系”としての使われ方を警戒したためという。ただ、「ユーザーの意見が集まれば、規約は実態と合わせて変えたい」(山敷さん)としている。
見知らぬcommユーザー同士が出会えるとうたうアプリも第三者によって複数開発されてGoogle Playで公開されており、“出会い系”として使われる懸念は捨てきれない。山敷さんは、「具体的には言えないが、既に対策を進めている」(山敷さん)と説明する。
売りの通話品質については、「ほかのサービスと変わらない」という声もある。継続してチューニングを行い、品質を高めていく方針だ。
収益化は「現段階では考えていない」
comm単体での収益化は、現段階では考えていないが、将来は、Mobageやビッダーズといった自社サービスとの連携によるマネタイズを視野に入れる。最終目標は、「国民全員、老若男女誰もに使ってもらえるクローズドコミュニケーションのインフラになること」。今後はスマートフォン以外へのデバイス対応も進めていくほか、世界中での普及を目指し、海外でのプロモーションも行っていく方針だ。
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