国会図書館、出版社の抗議で中止していた資料の公開を一部再開へ
国立国会図書館は、出版社からの抗議を受けてネット公開を一時停止していた資料について、一部のネット公開を再開すると発表した。
国立国会図書館は1月7日、出版社からの抗議を受けてネット公開を一時停止していた資料について、一部のネット公開を再開すると発表した。資料は著作権保護期間が満了しており、同館によるネット公開に法的問題はないとする一方で、出版社の事情に配慮し、一部資料は公開中止を継続する。
公開を中止していたのは、仏教の経典「大正新脩大蔵経」(1923年〜1934年、大正一切経刊行会、全88巻)と、「南伝大蔵経」(1935年〜1941年、大蔵出版、全70巻)。それぞれ著作権保護期間は満了しているが、日本出版者協議会と大蔵出版から昨年6月、「現在も商業刊行中であり、公開中止を求める」旨の申し出があった。
国会図書館は昨年7月から検討会議を設置してこの件について議論。両資料とも著作権保護期間は終了しており、同館がネット公開することについて法的問題はないと結論した。「大正新脩大蔵経」については、大蔵出版が復刻版を刊行してから投資回収に必要な十分な期間が経過しているなどとし、ネット公開を再開することにした。
一方、「南伝大蔵経」は、2001年〜04年に大蔵出版によるオンデマンド版の提供が始まっており、「投資コスト回収に一定の考慮をすべき期間内である可能性がある」ことを考慮。「当館からの提供が、南伝大蔵経という基本資料の出版事業の維持に直接の影響を与える可能性を否定できない」とし、ネット公開の中止を続けることにした。
ヒアリングした有識者の多くから「商業出版に対する何らかの考慮の必要性」について言及があったとして、今後も検討を続けるとしている。南伝大蔵経については、今後の検討などを踏まえ一定期間後に改めて見直す。
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