STAP論文不正、小保方氏らの処分検討 野依理事長、論文取り下げ勧告へ 再現実験に1年
STAP細胞論文に関する調査結果を受け、理研の野依理事長らが会見。「改めてお詫びします」などと謝罪した。
理化学研究所の小保方晴子・研究ユニットリーダーなどが英科学誌「Nature」に発表した「STAP細胞」の論文に関する調査で、ねつ造・改ざんに当たる不正があったと認定されたことを受け、理化学研究所の野依良治理事長らが4月1日午後に都内で会見を開いた。野依理事長は「誠に遺憾。科学社会の信頼性を損なう自体を引き起こしたことに対して改めてお詫びします」などと謝罪した。
小保方氏や理研所属の共同研究者らの処分については、懲戒委員会を設置して検討する。野依理事長は「場合によっては私を含む役員の責任も、しかるべき段階で厳正に対処しないといけないと思っている」と、自らの処分についても言及した。
外部有識者から成る「改革委員会」を設置し、第三者の視点から体制を検証してもらった上で、野依理事長を本部長とする「改革推進本部」(仮称)を設置して再発防止策を実施していく。また、理研内部でSTAP現象の再現実験を行い、外部の研究者の検証実験にも協力する。
小保方氏は調査結果に「とても承服できない」と不服申し立てを行う意向。不服申し立てを受けた場合は再度調査を行った後、研究不正が確定した段階で野依理事長から論文の取り下げを勧告する。
若手リーダー抜擢あだに 「規範作りたい」と野依理事長
調査委の報告では、小保方氏の研究ノートは3年間で2冊しかないなどずさんなデータ管理が浮き彫りになっており、小保方氏をユニットリーダーとして採用したプロセスにも疑念が集まっている。小保方氏が所属する理研発生・再生科学総合研究センター(理研CDB)の竹市雅俊センター長によると、小保方氏は公募で採用。研究計画の提出とプレゼンなどを通じ、「非常に優れた若手研究者」と評価していたという。
理研CDBはこれまでにも、20代の若手研究者をユニットリーダーとして抜擢し、成果をあげてきた。「CDBには27歳や29歳のユニットリーダーがおり、大きく成長して有名大教授になった人もいる。若い人には大きな可能性があり、経験のなさはメンター制度などで補える。世界で成功している研究所は多様性が高い。カルチャーを勉強して規範を作りたい」(野依理事長)
今回の問題は、抜擢した若手研究者の倫理観・経験の不足と、サポートすべき研究者の指導力不足が原因と判断。外部有識者から成る「改革委員会」を設置し、データの取得・管理から成果の発表までのプロセスを再点検した上で、野依氏を本部長とする改革推進本部で再発防止に取り組んでいく。
再現実験に1年 外部研究者への講習も
野依理事長主導のもと、STAP現象の再現実験も行う。理研CDB特別顧問の相澤慎一氏を実験総括責任者、論文の共著者で理研CDBプロジェクトリーダーの丹羽仁史氏を研究実施責任者として、4月1日から約1年にかけて検証する。開始4カ月をめどに中間報告、実験終了をもって最終報告を実施。理研外部からの研究者の問い合わせにも真摯に対応するほか、手技講習の実施も検討する。
また、共同研究者で小保方氏の指導に当たった理研CDB副センター長の笹井芳樹氏もコメントを発表。疑惑発覚以降、笹井氏のもとに寄せられていた質問のうち主だったものについてはまとめて回答・解説することを検討しているという。
小保方氏、調査委の報告に「当惑」
会見では、「多数の疑惑が指摘されている中、調査委員会が調べた疑念は6点のみで、疑惑の全体像や不正の動機などは明らかになっていない。理研内部の人が委員長を務める委員会ではなく、外部の委員による第三者委員会で改めて調査すべきでは」との指摘が記者から相次ぎ、野依理事長は「是非そうしたい」と応じた。
調査委の最終報告書は、川合眞紀研究担当理事が小保方氏に直接会って説明し、手渡したとう。小保方氏は弁護士を同伴しており、報告書の内容に「だいぶ当惑していた」という。今後は懲戒委員会から小保方氏への聞き取り調査が行われるほか、動機を含めた全容解明に向け、理研からも「できる限り話を聞いていきたい」(川合氏)とした。
小保方氏の心身の状態については「研究発表後から、今までにない環境で心身ともに疲れ切っている」(同氏)状態で、理研にも出勤していないという。本人による会見は、調査委員会による調査中の段階では理研が禁じていたが、調査が終わった現段階では禁止していない。「本人が是非会見したいならば、理研としては、安全性を確保した上で協力する」(同氏)
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