「STAP現象は有望な仮説」だが――論文指導した笹井氏、不備を見抜けなかった理由は(2/2 ページ)
「STAP現象は有望だが、仮説に戻して検証し直す必要がある」――STAP論文共著者で、小保方氏に論文指導した理研の笹井氏が記者会見して説明した。
撤回には同意も「STAP現象は有望な仮説」 「ES細胞混入ではない」
Nature論文は「複数の過誤や不備で信頼性が大きく損なわれた」とし、撤回に同意している。
STAP現象は笹井氏にとって、「今でも信じられない不思議な現象」であるものの、「それを前提にしないと説明できないデータがあり、有望な反証仮説を見いだしていない」ため、「合理性の高い有望な仮説」だという立場は維持する。
論文に対する疑問にも一部、回答した。「ES細胞が混入したのでは」という疑問については、細胞のサイズが小さいこと、増殖能が低いこと、キメラマウス実験で胎盤などになれたこと――などを反証として示す。細胞の万能性を示す緑色の蛍光について、「細胞が死滅するときの自家蛍光では」という疑問もあがっているが、「死んでいない細胞から出ていることを確認しており、細胞から死細胞への自家蛍光とは別」と説明した。
第三者による再現実験が成功していない理由については、細胞へのストレスが強すぎたり弱すぎたりするケースなどを可能性として挙げ、「何が阻害・促進要因になるかまだ部分的にしか分かっていない」と説明。理研による検証実験で再現性の高いプロトコルが示されることに期待したいと述べた。
小保方氏は「非常に豊かな発想力がある」
小保方氏は研究者として、「非常に豊かな発想力があり、集中力も非常に高い」と評価。ただ「トレーニングが足りず、科学者として早いうちに身につけておくべきものを身につける機会がなかった部分が多々あると論文発表後に明らかになった」と指摘する。Nature論文執筆時に、「彼女の強いところをできるだけ伸ばすことはできた」が、「弱い部分を強化し、足元を固めることができなかった」と反省を述べた。
また、小保方氏の採用プロセスについては「通常の採用の手続きと同様、一切偏りはなかった」と主張した。
iPS山中教授には謝罪 功名心は「なかった」
1月の論文発表時、記者会見では笹井氏がSTAP細胞とiPS細胞を比較した図表を配布。STAP細胞の作成効率を、iPS細胞樹立当初の数字と比較し、STAP細胞の方が効率が良いと説明した。これを受けた報道に対して、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)所長の山中伸弥教授は反論し、その後理研は同資料を撤回した。
笹井氏は資料について、「STAP現象はiPSとは原理が違うと説明する目的で、STAP細胞の優位性を強調する意図はまったくなかった。iPS細胞の開発当初の数値を参考値として記載したが、不本意にも、STAPの方が効率がいいという話に展開した」と釈明。記載した数字は「不用意」だったとし、2月に山中教授を訪問して謝罪したという。
笹井氏は山中氏への対抗意識が強かったと見る向きもあるが、「そうしたことはない」と否定。「わたしたちやは原理や基礎研究に寄っており、山中先生は出口、応用が中心。協力しつつ棲み分けるのが健全だといつも話している。組織としても対抗意識はなく、研究費を取り合う関係でもない」と説明した。
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