「利益よりもユーザーを最優先」 Tencent・QQ事業のトップに聞く:現代中国インターネットの覇者たち(2/2 ページ)
Tencentのソーシャルプラットフォーム責任者として、主にメッセージングツール「QQ」のサービス全体を統括する湯道生シニアエグゼクティブ・バイスプレジデントが事業成長のポイントを語った。
不変的な「ユーザー志向」
――直近の決算発表(2014年第1四半期)で、売上高は184億元(約2944億円)、純利益が前年同期比で60%増の64億6000万元(約1033億6000万円)と、大幅な伸び率となりました。この要因は何でしょうか。
まずは、中国のインターネット市場全体の成長が大きいです。特に、スマートフォンやタブレット端末などモバイルデバイスの需要が急速に高まっています。いまやインターネットは中国人の生活の深い部分にまで入り込んでいます。
そうした中、Tencentのビジネス領域では、スマートフォン向けゲーム事業が大きく伸びていて、売り上げ全体の大半を占めています。また、今後は、O2O(Online to Offline)や第三者決済サービス「財付通」(テンペイ)に力を入れていくことで、これらの事業を伸ばしていきます。
O2Oに関しては、すべてを自社でやるのではなく、パートナー開拓を進めていき、連携することを検討しています。Tencentにはプラットフォームやユーザーが存在するので、その上でビジネスを拡大できるようなパートナーと組む方が賢明だと考えています。また、パートナーシップは中国企業に限らず、海外企業も想定しています。
――QQは、月間のアクティブアカウント数が8億4800万人、同時オンライン数が2億人以上と、巨大なサービスです。これほどまでに成長できた理由は何ですか。
QQは、中国のインターネットがまだ発達していない1998年にスタートしました。従って、QQの発展は中国のインターネットの発展と言ってもいいでしょう。その過程において、QQの責任者は何人も入れ替わりましたが、1つだけ変わらなかったことがあります。それは、ユーザー体験を最優先にするということです。QQが成功した大きな理由は、中国のユーザーの声に耳を傾け、ユーザーの体験を大事にしてきたからです。
ユーザーニーズは常に変わり続けています。それに応じてどのようなサービスを提供するかが重要であり、そのためにはユーザーが何を求めているかを理解しなければなりません。現在のQQのユーザー数や売上高といった数字はあくまでそうした取り組みの結果に過ぎません。ただ逆に言えば、ユーザーが満足する成果を出せば数字は伸びるのです。そうした意味で、Tencentは利益よりもユーザーを志向していると言えるでしょう。
これまでQQはPCでの利用がメインでした。今後はモバイルにステージが移ります。実は、QQでは、SMS(ショートメッセージサービス)とIM(インスタントメッセージ)の連携など、10年以上前からモバイルにもサービス対応しています。創業以来、QQが大切にしてきたのは「人と人とのつながり」です。そのために、PCやモバイルなどマルチデバイスにいち早く対応し、自宅でもオフィスでも街中を歩きながらでもQQを利用できる環境を作っているのです。
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