Facebook、ユーザー約70万人のニュースフィードを操作した実験結果論文を発表
FacebookがSNSにおける情動感染(人の感情や気分は周囲に伝染するという心理学用語)に関する論文を発表した。この実験で同社は約70万人のユーザーを抽出し、ニュースフィードにポジティブな投稿を表示させなくするなどのアルゴリズムの操作を行った。
米Facebookが約70万人のユーザーのニュースフィードに表示する投稿を実験のために操作したことが、米国科学アカデミーの機関誌PNASで公開された論文で明らかになった。
Facebookのデータサイエンティスト、アダム・クレイマー氏ら3人によるこの論文は「ソーシャルネットワークにおける大規模情動感染に関する実験的証拠(Experimental evidence of massive-scale emotional contagion through social networks)」と題され、Facebookのニュースフィードに表示される投稿の感情がユーザーの投稿の感情に影響するかどうかを実験した結果がまとめられている。
この実験で、Facebookは68万9003人の英語を使うユーザーを抽出し、ニュースフィードのアルゴリズムを操作して、ポジティブな言葉を含む投稿の表示を減らした場合のユーザーの投稿にネガティブな言葉が増えるかどうか、その逆の場合はどうかという実験を行った。
実験の結果、Facebook上でも情動感染があることが証明されたとしている。下の画像は、ニュースフィードでポジティブなコンテンツの表示を減らされたユーザーのステータスアップデートの多くにネガティブな言葉が含まれ、ネガティブなコンテンツの表示を減らされたユーザーのステータスアップデートにはポジティブな言葉が多く含まれていたことを示す。
研究者らは、この実験はFacebookの「データの使用に関するポリシー」に準拠しているとしている。ユーザーはFacebookのアカウント作成時にポリシーを承認しており、このポリシーにはFacebookがユーザーデータを「トラブルシューティング、データ分析、テスト、調査、サービスの向上等の内部運用」の目的で使用することを認めているからだ。だが、被験者として抽出されたユーザーは、知らない間にアルゴリズムを操作され、(友達のプロフィールを見に行けば読めたとはいえ)見られるはずだった投稿を見落としていたことになる。
この論文のPNASへの掲載に当たって編集を担当したプリンストン大学心理学教授のスーザン・フィスク氏はThe Atlanticのインタビューで、法規制はないとはいえ、倫理的に心理学の実験では事前に被験者に通知するべきではないかと疑問を呈している。
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