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「漫画版YouTubeを」――読者が漫画ファイルをアップ、作者の許可得て無料公開 Jコミ「絶版マンガ図書館」で海賊版を撃滅へ(2/2 ページ)

「Jコミ」が「絶版マンガ図書館」に改名。ユーザーが持っている絶版漫画の電子書籍ファイルを、作者の許諾を得て無料配信する新サービスを始め、ラインアップの拡充と海賊版の撲滅につなげる。漫画のセリフ検索機能も導入し、利便性・収益性を強化する。[update]

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 いったん電子化されても、あまり売れずに電子書籍ストアから消えてしまったり、ストアが閉店してしまうリスクもある。「絶版マンガ図書館」は、出版社による電子化という“日の目”を見なかった絶版漫画を網羅的に電子化し、日本の漫画のアーカイブとしての役割も果たしたいという。

 「これから電子書籍サイトは統廃合が進むが、絶版漫画図書館はほかのサイトと品ぞろえがまったく違う。統廃合で残った大手電子書籍サイトと、絶版マンガ図書館の2つだけで全作品がフォローできる時代が来るのではないか。日本の漫画の100%保存の一翼を担いたい」

 広告付き・無料の電子版から収益が得られるかは、作品の知名度と古さによるという。おおむね発表から5年以内の作品は有料配信の方が収益が大きく、10年以上だとほとんどの場合、Jコミの広告収益モデルの方が高収益という。

 「電子書籍ストアからの売り上げが年1000円を切っているタイトルはJコミに入れたほうがいい。年に1万円以上もうかっているなら出版社との関係を重視し、出版社経由で有料配信を続けたほうがいい」と赤松さんはアドバイスする。

絶版漫画を自動翻訳、海外配信も

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吹き出しの中のテキストを自動で抜き出す技術の実演

 絶版マンガ図書館に掲載した作品はセリフ検索に対応させる予定だ。漫画をスキャンしたファイルから、吹き出し内のテキストを抜き出す技術を、東京大学工学部の相澤研究室と共同で開発した。

 「テキストは広告とよく結びつく」と赤松さんは指摘する。テキストは動画と異なり、関連する広告とのマッチングが容易だ。セリフをテキスト化することで漫画の内容にマッチした広告が配信でき、収益性を高められるとみている。セリフは英語などに自動翻訳し、海外配信も行う計画だ。

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JコミのビューワーはFlashではなくJavaScriptで書かれており、一般のWebサイトに掲載されるバナーやレクタングル広告、AdSenseをそのまま掲載できるという

 ソフトバンクグループのSBイノベンチャーと提携し、Jコミ収録の漫画300冊以上が無料で読めるiPhoneアプリ「ハートコミックス」を今秋から提供。これまでリーチできていなかったライト層へのJコミ漫画の浸透を狙う。

収益化を強化 「図書館」維持・発展へ

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作品のPDFや作者直筆のハガキなどが数量限定で購入できる「JコミFANディング」は作家にもファンにも人気という。闘病中の作家の応援企画なども実施。「才能がある人がつぶれていくのが許せない。わたしが倒れたときにどうするんだというのもあって、どんどんやっていきたいと思っている」(赤松さん)

 「Jコミ」という名称はサービス内容が分かりづらく、「ジャンプ漫画しか載っていないのか」など誤解を招いたこともあり、よりダイレクトにサービス内容を表現する「絶版マンガ図書館」という名称に変更する。

 これまで、広告収入など収益はほぼ100%が作者に還元される仕組みで、同社は利益を得ていなかった。「私がリッチなので、マネタイズは結構どうでもよかったんですが」と赤松さんは笑いつつ、漫画の“図書館”を目指すに当たってマネタイズを加速し、サービスの維持・発展につなげる。

 赤松さんは「漫画家なので、広告に興味がなかった」が、新たに広告営業スタッフを雇うなどしてコミック内に挿入する広告の収益性を強化。絶版漫画のKindle化やオンデマンド印刷サービスで一定の手数料を徴収したり、漫画家エージェント事業など人脈を生かしたビジネスを検討し、収益化を加速させる。

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